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俺が魔王で勇者があきらめた!  作者: 結城悠
戦国編ー開幕記
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開いた口がふさがらない

氷の壁を生みだし、着実に歩みを進めていくエリス率いる一団は、あまりの出来事に言葉なく進んでいく。

彼等はエリスの実力を侮っていた。

初めに生み出した氷の壁に驚きはしたが、大きさ以外は特に驚くべき点もなく、すぐに魔力切れを起こすであろうと考えていた。

けれど、その考はあっさりと覆される事となる。

既にエリスの生み出した氷の壁は十を超えたが、彼女に疲労の色は一切ない。

エリス自身、さらに倍の数を生みだしてもまだ余裕があると考えていた。

「彼女は本当に獣魔なのか?」

「あれがヴァイスの力?そもそも、ヴァイスは世界に反する存在じゃないのか?」

「俺達は、一体何を勘違いしていたんだ?」

魔術の維持に集中しているエリスにその声は届いていなかったが、彼女の後ろに控えるファラにはその声が聴こえていた。

「こいつらにも、ようやく解って来たらしいな」

彼はすでにエリスの力を認めていた。いや、認めざるを得なかった。

毛並みの色、瞳の色、肌の色も姿形もまるで違う筈なのに、魔術を使うエリスの姿が、彼のよく知る人物とダブって見えた。

その理由は分からなかったが、彼自身、その姿に心惹かれていた。


エリスが十一枚目の壁を生みだした時、前方から押し寄せる風の波が緩やかになっていく。

その時を待っていたとばかりに、ファラが前方に躍り出る。

氷の壁の上に立ち、敵の動きを観察する。

獣魔は五感にも優れ、開けた場所であれば数キロ先の状況も把握する事が出来る。

「見えた!向かって言ったのは・・・南西だ!」

エリスに報告すると同時に、牙を鳴らし魔術を発動させる。

空に打ち上げたのは炎の魔法。初歩の初歩である、炎を飛ばすだけの簡単な物だが、威力は関係ない。

ただ遠くまで届けばいいだけだ。

「では、私達も動きましょう。予定通り私は後方の追撃に、」

「エリス、ちょっと待て」

突然かけられた声に驚いたエリスは、肩に乗るキュウに視線を移す。


討伐隊へ参加する為の旅の途中、キュウはエリスに学ばせる為、一つの課題を出した。

「今度の戦いではお前自身の力を魔族に見せる為に策を使え、戦が行われないこの世界では戦いにおける斬新な発想は受け入れられるはずだ」

現在の魔国は大きな欠点を抱えている。その一つが戦いだ。

魔物や野盗との戦いで個人の技術や集団での戦いは生まれていたが、それ以上の団体での戦いは行われていない。

そこに、戦いを有利にするための作戦、戦略を与えてやる。

感の良い者は気付くだろうが、この戦略は知っているか知らないかでその後の全ての戦いに大きな影響を与えるだろう。

そういう感の良い者はこの国では総じて権力を持っている。頭が動けば子は自然と動く物だ。

キュウがエリスに与えた情報は主に二つ。

エリスの力を魅せる為に、参加者全員と共闘する事。

圧倒的だと言う事を知らせる為に、こちら側の被害を最小限に抑える事。

よほど酷い状況にならない限りは、キュウは沈黙を保つ。

その助言通り、エリスは今までの戦いと経験を総動員して作戦を考え、戦いに挑んだ。


キュウの思惑通り、エリスの戦略は受け入れられ、拙いながらも作戦は成功に向かっていた。

今はまだ自分の出る幕ではない、そう思っていたのだが。

「敵の動きがおかしい、見聞を起動してくれ」

「えっ?わはかりました」

見聞を取り出すと、キュウが追加した機能を使って周囲の状況を調べる。

すると、前方に四つの反応が示された。

キュウはやはり、と言ったようにその画面を睨みつけていた。

「キュウさん?なにか問題があるんですか?」

「嫌な予感がする、気のせいだといいんだが・・・。エリス、魔力に余裕はあるか?」

「少しくらいなら無茶できます」

キュウが約束を自分から破る事など初めての事で、エリス自身身を引き締めた。

彼女の無茶がどの程度になるか、その時はキュウすら考えていなかった。


「魔術道具の反応が4つある、3つは大体察しはついたが、もう一つが気になってな」

「解りました、予定を変更して私が挟撃に向かいます」

短くキュウに返答を返し、今度はファラに向かって声をかける。

「なにか考えていたようだが、何か問題か?」

彼もエリスの様子がおかしい事に気付いたようで、不思議そうな顔をしている。

作戦は問題なく進んでいるし、エリスにもまだ余裕はある、他の隊も崩れた様な様子も報告もない。

「少し気になる事が出来たので、私は挟撃にいきます。すみませんが、ファラさんには追撃に回ってもらいたいのですが」

「俺は構わないが、あれだけの魔法を使った後で大丈夫なのか?」

今度は逆にエリスが驚いた、初めて顔を合わせた時からは考えられない気遣い。

ファラは何気なくいったようだが、少ししまったという顔をしてそっぽを向いた。

「心配してる訳じゃねぇよ、ちょっと、気になっただけだ」

「あはは、ありがとうございます。私は大丈夫ですので、おねがいしますね」

「ふん、無茶はほどほどにな」

なんだかんだで、この人は優しくて面倒見がいいんだな、などと思いつつ、挟撃の為にエリスは走り出した。

すでに挟撃に向かっていた隊の人々を追い抜かし、風のような速さで走る。

あれだけの魔法を使ったにもかかわらず、あれだけの速度で走るエリスに驚き、その後ろ姿を見送るファラは、驚き疲れたと言ったように苦笑いの溜息を吐くのだった。


ようやくまとまってきました。

もっと頭の回転速度を上げたい・・・。

どこかに良いモーター売ってないかな・・・。


感想御待ちしております。

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