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俺が魔王で勇者があきらめた!  作者: 結城悠
戦国編ー旅行記
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故郷麓町

旅を始めてから約3カ月、様々な寄り道をして、一行は目的の地へと辿り着いた。

「ようこそ姉者、拙者の故郷、ヤマタ麓町へ」

「ここがヌエの、想像通りです」

「妖魔領と違って山ばっかり、というか山しかないわねぇ」

ヤマタ麓町は、周囲を細く高い山に囲まれた土地で、武術の修行場としても有名である。

西南に九の山々からなる針山連峰。東北に進めばラセン山。その他、幾つもの山に囲まれた麓町。

「ん?もしやヌエイラト様?」

「オヌシは、ヒグルマだったか?」

町に住む若者の一人がヌエに話しかけてきた。ただの知り合い、という雰囲気ではないようだ。

「おぉ!やはりそうですか、一年ぶりです。さらに武に磨きをかけられたようで!」

「うむ、オヌシも精進しているようで感心した。ところで父上は?」

「師範代なら、お屋敷の道場にいらっしゃる筈です」

「そうか、礼を言う」

若者との会話を終えたヌエが振り返り、エリス達の方へと向き直る。

「もしかして、お姉って結構有名人だったりするの?」

「この町の道場の娘、ただそれだけであるな」

その時のエリス達はまだ知らない。その道場が爬魔にとってどれほどの力を持つ存在なのかを。


町の中を進み、最も大きなお屋敷の前で馬車を止めると、ヌエが門の扉を叩く。

扉に備えられたのぞき窓が開き、一人の女性が現れた。

「どなた・・・、ヌエじゃないの。帰って来ていたのね」

「今帰りました、母上」

扉が開かれると同時に現れたのは、ヌエの母。巨体のヌエを生んだとは思えぬ普通の女性だった。

「おや、そちらは?」

「紹介が遅れましたな、拙者の姉と妹です」

その紹介は色々と誤解を生むのではないだろうか?と思った時には時既に遅く、ヌエの母は驚いた顔で後ろの二人をみていた。

「ヌエに姉妹ができるなんて、お名前を伺っても?」

「エリス・フェン・ドウジです」

「トゼルプリト・ヨル・タマモノよ」

「ヌエの姉と妹ね、いいわ。とりあえずお父さんの所へ行きなさい」

トゼルを見て、エリスを見た後、一行を中へ招き入れてくれた。

何か重大な勘違いをされているようだったが、ここで問答を繰り広げるつもりもなかったので、言われるがままに道場へと足を運ぶ。


道場と言ってもそこは爬魔独特の空間。壁と屋根は石造りで、床は砂でできている。

常に形の変わる砂を足場にする事で、様々な状況に対応できる観察眼を鍛え、同時に足場の悪い場所では体力の消耗が激しく、肉体の鍛錬にも適している。

道場の中では数十人の爬魔族の男性が武器を振るい、修行に打ち込んでいた。

その中に、ヌエに勝るとも劣らぬ体躯の持ち主が一人、大きな声を上げていた。その姿を見ただけで分かる、彼がヌエの父なのだろうと。

「槍はより迅速に、より長く使うのだ!」

「「「あい!」」」

突き出すような槍の構えを断続的にに繰り返す男達は、多少のばらつきはあるものの、同じ動きを同じタイミングで繰り返す。

「すごい気迫です」

「うっへー。男臭いばしょだわ」

「父上!今帰りましたぞ!」

「おぉ!ヌエか!久しいのぅ!・・・皆休め!」

ヌエが声をかけると、万遍の笑みを向けて巨体の男が近寄って来る。

休めの声に応じてその場に居た者は各々休憩に入る。

その場に倒れ込む者、壁に寄りかかり休む者、棒立ちのまま目を閉じる者。様々だったが、その様子から修行が大変な事は伝わってきた。

「ほほぅ。旅に出て何か変わったようだな。後ろの二人が関係しているのかのぅ?」

一目でヌエの変化に気付いた彼の目は本物だ。

「拙者の姉妹にございます」

「なんと!ヌエの姉妹か!これはめでたいのぅ!」

エリスとトゼルはヌエの母にしたように、同じく挨拶をする。

ヌエが認めた姉妹という事は彼にとっても家族同然という事なのだろう、ヌエと同じく豪快な性格のようだ。

「して、妹達の腕前はどれほどか?」

だがしかし、彼の目を持ってしても見抜けなかった事が一つあった。

「父上?拙者の妹はトゼル一人ですな」

「・・・今なんと?」

ヌエはさも当然と言うように、右手でエリスを示し、左手でトゼルを示しながら、

「こちらが姉者エリス殿、こっちが妹分のトゼルですな」

そう言い放った。

その答えに驚き絶句する彼の目には、白く可憐な女の子が一人映っているだけだった。


「申し遅れた、ワシはこの八叉道場の師範代である、ヤトオウド・ヨル・オロチである」

そう名乗った彼の目はずっとエリスを見ている。

少し居心地が悪いと想いつつも、エリスはじっと耐えていた。

因みに、この世界に置いての名前はそれぞれに意味を持つ。

先頭に名前、人に付けられる名。中に銘、魔力によって与えられる銘で、これは魔術道具によって判明する。最後に苗字、家族に受け継がれる物だ。

唯一生涯変わる事の無い銘は、血を分けた親子で変わる事は稀だ。

ヌエとヤトオウドの銘が同じなのも、血を分けた親子であると考えれば不思議ではないのだ。

「突然ですまないが、エリス殿。オヌシの力を見せてほしいのだが」

「えっ、わたしですか?」

「ぬ、父上。姉者の力を信じておられないのか?」

ヤトオウドの言葉にヌエが不機嫌そうな声を出す。けれど、当の本人は仕方ないとも思っている。

ヌエとエリスでは体格が違いすぎるのだ、実際の姿がそのまま強さになるとは限らないが、単純な力だけで言えばその差は歴然。

疑われても仕方ないが、自分の事でこの親子の仲が悪くなるのは避けたい。

「分かりました、わたしはどうすればいいですか?」

「姉者、よろしいので?」

「気概は良し、ワシ自ら相手をいたそう!」

その発言に、事態を見守っていた修行者達も驚きの声を上げる。

各々は、「不可能」「無理だ」「殺される」など様々だったが、一度出した言葉を戻す事はできそうになかった。

彼は立ち上がり、上半身をはだけさせると、道場の中心へ進み出る。


「ワシに一撃を入れる事ができれば認めよう!さぁ、死合おうぞ!」

そう言って仁王立ちするヤトオウドは不敵な笑みを浮かべた。

「どうしてこうなったんですかね・・・」

「姉者、父上はあれでも相当な腕です。お気を付け下され」

「暑苦しい展開だわぁ」

「一撃で終わればいいが、・・・手を抜ける相手ではなさそうだ。どうしたものか」

珍しくキュウが思い悩んでいたようだが、今はそれどころではない。

エリスにとっては命の奪い合い以外での、初めての戦闘なのだ。

「あの、武器は使ってもいいのですか?」

「死に至る物でなければ好きにすると良い」

すると、勝手知るヌエが一本の木刀を持ってきた。細く軽いが、これならば命の危険がある訳ではない。

木刀を逆手に構え、真直ぐにヤトオウドに狙いを定める。

ここに、エリスと滅族大蛇の戦いが火蓋を切った。


暑苦しい戦闘展開!


ここ最近リアルと相成ってこっちの世界が疎かになってますね・・・。(遺憾

文字数を少し抑える事になりそうですが、毎日の投稿は続けたいと思います。

如何せん遅筆ですが、ご容赦を。


感想。お待ちしてます。

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