プリモーディアル
世界をたった一人で生きて早5年。
「人は一人では生きていけないなんて、そんな事は無かったな」
それも一重に、想像の力と魔力という存在あってこそなのだが、それでも一人で生きてこれたのは、俺が一人で生きる事になんの抵抗も無かったからだろう。
「一人ぼっちに慣れ過ぎるのも問題だよな」
こうして俺は、生物の創造に取り掛かるのだった。
以前創造した猫を冥界樹の下へ持っていき、そこで魔力を与えと、予想通り猫の体内に魔力が充満し、安定せずに霧散した。
魔力が猫を死んだモノとしてとらえてしまい、安定できないのだ。
以前、エターシを生き返す事ができなかった時のように。
けれど以前とは違い、今の俺には時間がある。
この世界で5年の月日を生きて気付いた事、この肉体は俺の想像によって形作られたものであり、歳をとる事が無い。
初代魔王との戦いが影響しているのかもしれないが、詳しい事はさっぱりだ。
まず俺は、猫とは違う生き物。この世界に存在していた魔物を創造することにした。
元々この世界に猫は存在していない。似ている生き物は居たようだが。
存在し得なかった物を創造するより、存在したはずの物を創る方が何倍も楽なのだ。
それは、多種多様な植物を生み出した俺が知っている経験。
元々この世界にあったルフという、チューリップに似た花がある。それを生み出した時は、夏蜜柑一欠片で事足りたが、チューリップを生み出した時は三欠片は使った。
さらに、花弁が水晶のように輝くチューリップを生み出した時は丸々一つ分必要だった。
似ていても、性質がまるで違う物にはそれ相応の力が必要になるという事だ。
生き物を生み出すにはどれほどの力が必要なのか。
夏蜜柑を少しずつ増やしていき、どれほどの量が必要なのか検証する。
まずはスライム。青い液体状のアレだ。
半透明の液体の中に、丸い心臓のような核が存在する。
彼等の行動原理は至って単純。
種の繁栄、他の生物を体内に取り込み、核が一定以上成長したら分裂し、その数を増やしていく。
俺がスライムを一番初めに創造したのは、その構造があまりにも単純明快だったからだ。
その思惑は功を成し、この世界で俺以外の生物が誕生した瞬間だった。
「できた・・・。これくらいのサイズだったら可愛いもんだな」
掌に載るくらいのサイズ、今はこれで十分。
スライムは俺の手の上で伸びたり縮んだりを繰り返し行っている。
俺が生み出した生物なのだから、この行動にどんな意味があるのかももちろん解る。
「こやつ、生みの親を食おうとしているな・・・」
この程度の大きさなら、俺が食われる心配など無いし、その気になれば一瞬で消し炭にも出来る。
このスライムは夏蜜柑一つで生み出す事ができた、ただ、生きているというよりは、動いていると言った方が正しいのかもしれないが。
今はそれで十分。
それから、俺のスライム育成計画が始まった。
とは言っても簡単な事だ。
毎日夏蜜柑を与えるだけ、初めは一つを消化するまでに丸一日使っていたが、一週間後には一時間で一つのペースで食べていった。
夏蜜柑だけではなく、想像で生み出したパンや肉も与えてみる。
消化速度は個々に違いがあったが、基本雑食のようで、なんでも食べていった。
スライムが食べないものは鉱物や木材。一定以上の硬さがある物は食べられないようだ。
それから一カ月、ウォレイ城地下に作ったダンジョン一層はスライムの巣窟となっていた。
「なんというか、凄いなこれ・・・」
液体の這いずる音が反響し合い、実に気味が悪い。念のため二層も確認してみると、数は少ないがスライムの姿を確認する事ができた。
このペースなら、このダンジョンがスライムで満たされるのに一年もかからないだろう。
このダンジョンは下層に行くにつれて魔物に住みやすい環境になっている。魔力濃度の差とでも呼べばいいだろうか。
けれど、この世界は無情だ。
弱肉強食、より強い者がより良い場所を手に入れる。
スライム数匹を捕獲し、想像によってその姿を変えていく。
バッタに良く似た魔物、キリギス。ただし全長30センチはあろうかという巨大昆虫だ。
ダンジョン内に生息する植物や、スライムを主食とする昆虫。
ここで俺は初めて雌雄を創造した。
スライムは無性別で、分裂する事によってその数を増やすが、このキリギスは卵を生み、繁殖する。
魔物教本片手に生み出した時は、本当に上手くいくか不安だったが、案外この世界は上手くできているらしい。
まだスライムの数が少ない下層に連れていき、放してやる。
いくらスライムよりも上位種だとしても、数の差で死んでしまっては元も子もない。
20層、地下とは思えない大自然の中で、俺は想像を超える者に出会った。
「な!?あれは・・・!?」
そこに居たのは緑色のスライム。おそらくは突然変異種だろう。
通常、スライムは青く、食べたものによってその色を変える、なんてことは無い。
だが、目の前のスライムは透き通った緑色をしており、明らかに他のスライムより大きい。
周りを見回しても、同じようなスライムは存在していなかった。
スライムを生みだして1カ月と少し、短期間で急成長を遂げるスライムという種の成長速度に驚かされる。
「俺が生み出した、俺の想像を超える存在・・・か」
素晴らしい!まさかこんなにも早く出会えるとは思ってもみなかった。
俺が求める世界の姿に少しでも近づけたと、心躍る瞬間だった。
最近更新がかなりギリギリに・・・。
でも、妥協はしたくないし、ジレンマ!
今回のサブタイトルは「primordial」です。
あえてカタカナ表記なのは、まぁ、そのうち。
原初の、根源の、根本的な。などの意味があります。
世界の生命はスライムから生まれた!
微生物とスライムって似たようなものなんですよ、きっと。
感想お待ちしております。




