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アルファ

相変わらず世界の観察をしつつ、ダンジョンで魔物を育成していく毎日。

大きく変わったのは、ダンジョン内の魔物が日に日にその種類を増やしている事だろうか。

一種類の魔物がその数を増やすに連れて、俺が新たな魔物を生みだす。

突然変異で生まれた原種より優れた魔物を、さらに他の魔物へと創造する。

そんな事を繰り返していく事、早3ヶ月。

「ついに、動物の誕生だ!」

今まで生み出した魔物は、スライムのような液体魔物。キリギスのような昆虫魔物。イエントのような植物魔物。

突然変異も加わり、種類だけで言えば30を超えるだろう。

そこでさらに動物魔物の登場だ。

コックと呼ばれていた鶏のような魔物、繁殖力が強く、魔国では食料としても重宝されていたらしい。

短期間でここまで到達するとは思っても居なかったが、それも一重に冥界樹の力と、このダンジョンの特異性が生んだ環境のおかげだろう。


俺は魔物創造に関して、ダンジョン以外でも似たような実験を行っていた。

魔国大陸での魔物育成だ。

ダンジョンで生きていけるからと言って、大陸で同じ生活が送れるとは限らない。

規模や環境がまるで違うのだ、ダンジョンという過酷な環境下だからこそ生存能力がつちかわれている可能性も否めない。

これは魔物だけではなく、人類を創造した時にも言える事だ。

俺の目的は、箱庭的ダンジョンの作成ではなく、魔国大陸、しいては世界ピースでの世界創造なのだから。


思惑通り、とはいかなかったが、地上世界での魔物育成は順調だった。

ただ少し残念なのは、進化速度と繁殖力の低下だろうか。

冥界樹という濃密な魔力と、ダンジョンの過酷性があったからこその突然変異だったのだろう。

とは言っても、ダンジョンから供給される魔物は日に日にその数を増やし、魔国大陸は魔物の楽園となりつつあった。

何十年か、何百年か、はたまた何千年か。この大陸で俺の知らない新たな魔物が生まれる日は来るのだろうか。

その想像を巡らせながら、着実に世界を創造していく毎日。

その時の俺は、前世を生きていた頃より、勇者と戦っていた時より、充実した毎日を過ごしていた。


ダンジョン内の魔物が数百種類に増え、すでに自分でも把握できているか怪しくなってきた頃、俺は知性についての研究を始めていた。

「最も知性らしいと言えば、やはりウルフか?」

その名の通り、狼のような魔物。彼等は集団行動をとり、個々の能力よりも数段強い魔物を狩る連携を見せていた。

ダンジョンで生き残る為に自分達で考え出した狩りの技。

「だが、アントも捨てがたいか」

蟻のような昆虫魔物、彼等は女王を中心とした組織で行動する、独自の社会を築いていた。

秩序による層の掌握。29層は実質上アントの王国と化している。

「進化だけで言えばスライムなんてどうだろうか?」

一番初めに生み出したスライム。その進化は著しく、群を抜いている。

その中でも、シースリーと名づけたスライム種だが、様々な魔物の特徴を記憶し、相手の特性を理解し、もっとも苦手とする形に変化して戦う姿が見られた。

これはもう知性と呼んでいいだろうが、俺の求める知には程遠い。

どれを素として人を生みだすか。それが問題だ。


だったら全部混ぜてしまえ!

解らなければやってみるしかない。そう思った俺は、実験を開始した。

動物、昆虫、植物、液状、考えられる全ての魔物の知性をかき集め、人間の形に作り変えていく。

出来上がった人は、・・・残念ながら失敗作となった。

確かにソレは、人の姿をしていた。だが、内包する魔力を抑えきれず、暴走し始めたのだ。

魔力に耐えきれない人の身体はいとも容易く弾け飛び、その身体を変化させていく。

口は裂け牙が生える、顔は砕け上顎だけが残った、身体中の骨が異常に発達し、蜘蛛のような足が生えた、肌は鋼のように固く鋭く変貌する。

「ウジュルルルル・・・」

「これは酷い・・・、なにがいけないんだ?」

すでに人の面影は微塵もない、固有魔力が異常に高い、本物の化け物の誕生だ。

「ジュルルウゥルルルル!!」

「あー、こらこら。暴れるな」

「ルルッ!?」

たとえこの存在が俺の想像外で生まれた生き物だろうと、今の俺に敵う筈もない。

俺が止まれ、と命じるだけで、魔物は指一本動かせない。

想像を現実に創造する力。

だが、この魔物は動きを止められているにも関わらず、暴れようと必死にもがいているように見えた。

魔力の流れを見てみると、様々な魔物の魔力が複雑に絡まり合い、この魔物の体内を破壊と修復を繰り返しながら巡っている。

「すまんな、これじゃ暴れたくもなるか」

「ウルゥ・・・、ルルル」

魔力の流れをなるべく正常に戻してやる、これで身体を引き裂かれるような痛みは消えるはずだ。

唸り声を上げていた魔物は静かになり、俺の前に座り込んだ。

足は蜘蛛、身体は鎧、腕は骨が突き出ているだけ、顔の右半分は人に似ているが目が4つ、左半分は焼け爛れたよう、なんとも不気味だが、これも俺の想像が足りなかったせいだ。

「それにしても案外おとなしいな?すでに停止はとけているはずだが?」

「ルル」

「・・・まさか理解できているのか?」

「ル」

言葉か、鳴き声かは分からないが、こちらに反応を示しているという事は何らかの知性があるのかもしれない。

だとすれば俺の想像通りの姿にする為には、何かが足りない。

だがその前に・・・。


この子に名前を与えてあげなければな。

どんなおぞましい化け物であろうと、俺が生み出した魔物に変わりは無い。

俺はこの子を、始まりの存在。アルファと名づけた。

「足は・・・、動くようだが。手が無いのは不便だろう」

昆虫を使った影響だろうか、8本の足を自在に動かして歩いている。

だが、腕があった場所には骨が突き出し、原形を留めていない。

「少し痛むが、我慢しろよ」

「ル、ルシュルゥ!!」

「っ、いてぇ」

アルファの腕を使える状態にしてやろうと魔力を込めると、それに驚いたのか、俺の腕に牙を突き立てた。

ざっくりと刺さった俺の腕から血が流れる。下顎が残っていたら噛みちぎられていたかもしれない。回復できるから問題ないのだが。

だが、そこでアルファに変化が起きた。

「ルルッ・・・」

痛みを我慢するように大人しくなり、目を伏せた。

足はガチガチと床を鳴らしているが、先程のように暴れたりはしなかった。

両手を使えるようにしてやると、自分が突き立てた牙の傷跡を手でなぞり、落ち込んだようにその場から一歩下がった。

俺は腕の痛みも忘れ、一つの魔術を試してみる。

鋼のようなアルファの胸元に刻印を刻んでいく、少し熱いだろうが、アルファは大人しくその場から動かなかった。

「よし、アルファ。何か喋ってみろ」

「ウル?ワカル?」

「大成功だ、一発逆転ホームランだ!」

「ホム、ラン」

今俺が施した刻印は、念意の印という、気持ちを相手に伝える為の魔術。

今まで様々な魔物に試してきたが、反応を示したのはアルファが初めてだった。


それから俺はアルファの姿を少しづつ変え、その知性も少しづつ増やしていった。

彼女が生まれて1カ月たった頃。

創造主マスターコーヒーいれたウル」

「うん?ありがと、アル。もう日常生活の力加減は問題ないみたいだな」

そこには立派な魔物娘が存在していた。

初めは少しづつ人間に近付けていく計画だったが、アルファが今の自分を気に入っているという事で、最低限「俺の趣味」を反映させた結果がコレだ。

顔は大人びた女性で、見る者誰もが美しいと思えるような美人。長い黒髪は一本一本が細く強靭な糸で自在に動かす事ができるが、今はポニーテールにしてある。身体の鎧と、蜘蛛のような骨の足は相変わらず、腕は人のようだが、その表面は水晶のように透き通り、光っている。

これはちょっとした俺の実験でもある。


本来魔術は人が扱う為に特化した魔力の使用方法だが、魔物は俺のように直接魔力を操り魔法を発動させる事ができる。

異能ほどではないが、魔術によるロスが少ない分、魔法の速度は申し分ないが、威力に難がある。

アルファは普通の魔物と違い、固有魔力量は申し分ない、後は扱える魔力量を増やしてやればいいだけ。

魔法水晶マナクリスタルという物がある。魔力の伝導率、魔導率が人体や魔物の10倍以上という特殊な物質だ。それをアルファの腕に埋め込む事により、通常の魔物では考えられないほどの高威力の魔法を瞬時に使う事ができる。


趣味の範囲で行っている魔術道具の開発、その影響が多大に反映されていた。

こうしてこの世界にとって初めての知性を持ったアルファは、人としては規格外。魔物としては最強という、並外れた存在となっていた。

ただ本人は、

「マスターの役にたってうれしいウル」

と言っていたので、問題ないだろう。・・・きっと。


最近流行りの魔物娘モンスターっこを取り入れてみました(キリッ

すみません、完全に趣味です。

初めは化け物顔のままで行こうかと思いましたが、やっぱ女の子が良いよなってことで。


感想お待ちしております。

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