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ダンジョンクリエイト

それから数日後、生命と呼ぶにふさわしい魔力を持った木は、枯れてしまった。

水や栄養が足りなかったのかと思い、同じように作り出したイミテイションを大量に配置し、今度こそと試したが、上手くいかなかった。

多少の誤差はあるが、一様に魔力を宿した後、枯れてしまうのだ。

その原因は土地にあった。

冥界樹の庇護下、とでも言っておこうか。冥界樹の半径数十キロは、かなり特殊な環境にあった。

現在魔力の大半は、世界樹を通してそらに、冥界樹を通して地にと、世界を循環している。

冥界樹のもとは、魔力密度が濃い。それは、命がそこでは生きられないほどに。

それこそ、異世界人の魔王や勇者なんて化け物のような固有魔力を持っていれば、ちょっと気になる程度なのだが。

何事も適切な量でなくてはならない。そう考えると、魔力は酸素と同じような物だ、人は酸素が無ければ呼吸できないが、酸素だけでは中毒になってしまう。

だとすれば答えは簡単だ。

俺は、魔力量が平均的な土地にイミテイションを持っていくことにした。


「現実は非情である、・・・なんてな」

それから一週間、イミテイションに魔力は宿らなかった。

これは完全に俺の想像力の無さが原因だ、城の地下で魔力の宿らなかった物が、普通の土地で育つわけがない。

循環する魔力の集まる冥界樹があったからこそ生まれた命。

ただの魔力では意味が無い、世界を巡る魔力の流れ、輪廻魔生。

それを理解し、この世界で新たな命が芽吹くのは、それから3カ月後の事だった。


「・・・どうしてこうなった?」

確かに俺は、この世界に来てからまともな物を食べてなかった。

今も、岩をパンに、砂をバターに、海水をミルクに変えて食べているのだ、正直慣れたくは無かった。

だから、この世界で一番に生み出すのは果物がいいと思った。

生命の始まりの木はリンゴの木だったと言われているのだ、どんな果物であろうと、世界の始まりには相応しくなるだろう。

「だからって夏蜜柑はどうなのよ?」

握り拳よりも大きな果実、完全に俺の好みで生み出してしまったが、我ながら少し困惑している。

文字通り急成長を遂げた夏蜜柑の木は、今や俺の伸長を遥かに超え、立派な大樹になっていた。

青々と生い茂る葉に、黄色の果実が見え隠れしている。

一番近くの果実をもぎ取り、皮をむき、食べる。

「固い、すっぱい、甘くない・・・。けど、懐かしい味だ」

わずかに残ったおもいでを噛み締めるように、新たな命を頂いた。


一度命が芽吹いてしまえば、後は簡単な作業だった。

0から1を生み出すのは難しい、それこそ神の所業だ。

結局俺も、なんだかんだで命が生まれた、という事実があっただけで、本当の意味で生命を創造したわけではない。

本当に、運が良かっただけなのだ。

魔国は活火山から流れる溶岩からできた不毛の大地だ、今は冥界樹を創造した影響で、ほぼ全ての火山が死んでいる。

植物を生きるには辛い土地だ、細かいところは時間に任せるとして、大きな改変だけを行う。

魔国各地を回り、大地を創造していく。

そこへ、夏蜜柑の皮を触媒に、様々な生命を誕生させていく。

草や木といった植物で、俺がよく知っている物、この世界にあったはずの物、まったく新しい物。

新生魔国は、今までとはまるで違う世界のように、鮮やかな世界となっていった。

「遠慮はするが、自重はしない!」

正直遠慮があるのかすら怪しかったが、出来上がった世界を見て回った俺は、空を飛びながら踊る不審人物と化していた。


今度こそ人類創造だとも思っていたが、湧いて出た一つの問題に困惑していた。

城の自室で探し物をしていた時の事。

「あっれ、魔物に関する文献がこの辺にあったような・・・」

汚い自室はどこに何があるかも分からない無残な姿となっていた。

今もゴーストヘルパーを使用しているが、自室の清掃は任せていない。男のさがだろうか。

「ベッドの下とかに落ちてないか・・・」

覗き込んだベッドの下には、探し物とは別の、忘れ物があった。

「なんだこ・・・、あぁ!?わすれてたぁぁぁ!?」

世界が滅亡してから2年ぶりの絶叫だった。


「でだ、これをどうするかだが」

腕を組み、目の前に置かれたモノを確認する。

特殊な仕掛けを施した木箱と、小刀。ヤンキー勇者を封印した物だ。

俺はこの小刀の危険性を嫌というほど分かっている。だが、想像した生命が後世まで封印を守れるか分からない。

いや、おそらく無理だろう。

好奇心は猫をも殺す、とはよく言ったものだ。俺でさえ、危険は百も承知だが、この小刀を見てみたい気持ちが無いわけではない。

「いっそ火口に沈めるか?」

却下だ、下手に壊そうとして封印が解けました、なんて笑えない。

「誰の手にも届かない、触れようと思わない場所」

触れられない、それ以前に、近寄らせない場所。

「だったらよく知ってるじゃん」

思い出したように立ち上がり、行動を起こす。


冥界樹想像の時、ウォレイ城はその根元に移動しておいた。

中腹に建てたままでは城も無事では済まなかっただろう。

まず城の周り、冥界樹の根によって大地が裂け、断崖絶壁の連なる大地は来るものを阻む自然の要塞となっている。

そこに一工夫、城に繋がる道は残されていた為、その道を割り、断崖へと変貌させた。

俺自身は空も飛べるから、不自由は無い。

城の地下、研究所のさらに地下にいくつもの小部屋を創っていく。

魔学の粋を凝らして生み出したギミックの数々、その小部屋の数は109におよび、最下層まで創り上げる頃には、3年の月日が流れていた。

異世界迷宮ダンジョンの完成。

目的のはずの手段が、手段の為の目的になってしまった。

「調子に乗りすぎた・・・」

後悔はしないが反省はする男の姿がここにあった。


異世界といえば、ダンジョンですよ。(偏見

いいですよね、ダンジョン。在り来りな感じが最高です。


本編でこのダンジョンが攻略される日が来るのかは謎ですが・・・。


感想お待ちしております。

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