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イミテイション

こうなったら好きなように世界を創り上げてやる。

子供が砂でお城を造るように、俺は魔法で世界を創る。

とは言ったものの、なにから手をつけて良いものやら・・・。

この世界に残されたものは、荒れ果てた大地と、天を覆う魔力だけ。


「この世界の魔法を使う為に勉強していたのはいいが、自分の異法を疎かにしてたな」

この世界の魔法は、特定の魔力だけを操る為のもので、創造の異法のように、物に宿る魔力を好きなように扱えるわけではない。

世界を創造するには想像の力が必要不可欠。

扱えるという理由で、研究を後回しにしていたツケが回ってきたわけだ。

早速俺は想像の力で生命の想像を目論んだが、これがうまくいかない。


「そうか、動いている事と生きている事は意味合いが違うよな」

手始めに、俺が好きだった生き物、猫を創造してみたが、身体を生み出す事ができても、それを生かす事ができなかった。

死という概念を理解できなかった俺が、生という概念を理解できるはずもない。

自分の思い通りに動かす事ができたところで、それは良くできた形であって、俺の望む生命いのちではないのだ。

「いきなり意志のある生き物は難しかったか・・・」

猫は一先ず箱の中へと治め、もっと別の角度から考えてみる事にした。


続いて想像したのは植物。

様々な土地の様々な土からいくつもの植物を生み出してみた。

柔らかい針のような芝生、丸い葉の雑草、木の苗木。それらは一様に、俺の知っている植物だったが、生命力という物が感じられなかった。

魔力の宿っていないイミテイション、やはりと言うべきか・・・、そこに俺の求める生命はなかった。

「もうマジむり・・・、わけわからん!」

何日も部屋に籠ったまま、研究に没頭していたが、まるで成果を得られない。

魔術の研究をしていたころは、一つ解けるたびに使える魔法が増えていった。想像上の憧れだった魔法が使えるとなれば、どんなに嫌いな勉強であろうとやる気になれたが。

進展の無い研究ではモチベーションが上がらず、俺はついに・・・。

「いいぜ、久々に、キレちまったよ・・・」

鉢植えの中で想像した姿のまま、変わらずにあり続ける植物を、テラスから投げ捨てた。

もちろん研究は地下で行っていたのだが、わざわざ二階のテラスまで全力疾走で持っていき、勢いよく投げ捨てた。

元々土くれから生み出した物が土に戻るだけ、そのまま俺は魔法で空に飛び立った。


「・・・プライベートビーチって響きに、憧れたよな」

現在俺がいる場所は魔国東部の海岸。水平線の彼方に、空に浮かぶ大陸が茜色に染まり消えゆく。

この世界に太陽は無い、空の彼方、浮遊大陸よりさらに向こう側の星々が生み出す魔力同士が反応し合い、光を生み出している。

だからと言って昼夜が存在しないわけではない。魔力が激しく流動する時間帯は明るく、緩やかに流動する時は薄暗く。流れが変わる時間には消えかけた火のように赤く世界を染め上げる。

「こうしてちゃんと空を見る機会なんてなかったけど、幻想的だよな」

月と呼んでいいのかは謎だが、似たものが空に7つ。虹の色と同じく、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の光がうっすらと輝いている。

それぞれの星魔力が反応し合い、この世界を光で満たしているのだろう。

俺は宇宙に詳しくないが、この世界は人々の住むピースという星を中心に回っているのかもしれない。

世界が暗く染まり、青と藍の星がうっすらと空に輝く頃には、俺の身体も頭もすっかり冷えていた。

「・・・帰るか」

立ち止まったところで研究が進むわけがない、俺はこの世界を創り変えてやると、そう心に決めたのだ。止めたところで世界は変わらず、荒野と魔力しか存在しないのだから。


「前言撤回だ、立ち止まるって素晴らしい!」

住処である魔王城に戻るまで、約1時間、植物をテラスから投げ飛ばしてから約4時間。

わずかに立ち止まった時間に、俺の研究は飛躍的な進歩を遂げていた。

「どうしてこうなった!どうしてこうなった!」

かなりテンション高めな俺は新たな命の周りを小躍りしつつ、ぐるぐると回る。

魔王城に帰る途中に回収しようと立ち寄った鉢植え、大地に投げ出された植物に、僅かながら魔力が宿っていた。

イミテイションに、命が芽吹いたのだ。

持ち帰る事を止め、この場所での観察に予定を変更し、俺は命の研究を続ける。


この世界には知らない事が多すぎる・・・。

もしも地球が太陽系の中心だったらどうなるんでしょうね?

困った事に、この世界は便利な魔法によって構成されているようなので問題は無いみたいですね。


魔法に頼りきりなのは避けたいのですが・・・、不甲斐ない。

こんなことでは誰かさんに「想像力の欠如だな」なんて言われてしまいそうです。


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