止まる手段がなかった
「とりあえず全部持ってきたが、なんだこれ!」
俺が居る場所はダイニングルーム、机の上には所狭しと並べられた良く分から無い物の数々。
「くそう、解ってはいたが、想像は意味無いな」
万能とも思える想像の力でも、どうにもならない事があった。
解析、知るという事だ。
先にも言った事があるように、知っている事は想像できても、知らない事は想像できない。
だから、今目の前にある魔術道具の使い方を想像で知る事はできないのだ。
「わからん、スイッチ・・・なんてある訳無いし、助けてエターシ!」
変わり果てた姿となって(やったのは自分だが)、ベッドの下に放置された故人の名前を叫んだところで返事は無く、虚しく腹が減るだけだった。
「あーうー、・・・から揚げ食べたい」
衣がパリッとしてて、噛んだら身体に悪そうな油がジュワっと出てくる鳥のから揚げ。
想像したらさらにお腹が空いてきた。
・・・ん?想像?
目を開けると、安物のプラスチック容器に入ったから揚げがあった。
まさか、本当に出来てしまうとは。
恐る恐る口に入れると、確かにから揚げだった。近所のスーパーで閉店ギリギリになると半額になる、あの味だ。
「うおぉ、うめぇ!なんだよ、食事の心配しなくていいじゃないか!」
その時の俺は気づいていなかった、自分が何を食べているのか。
何だった物を食べているのかを・・・。
「もしやっ、コーラも飲めるのか!?」
想像する、黒く甘い液体に弾ける炭酸が詰まったコーラを。
すると、目の前にあった虹色のフラスコが姿を変え、よく知っているペットボトルの形になった。
「・・・ん?」
そう、俺は見てしまった。
どう考えても飲んではならない液体の入ったフラスコが、コーラになる瞬間を。
そう言えば、先程まで使い方を模索していた水晶玉が見当たらない。
目の前に置いておいたはずだが、今そこには空になったプラスチック容器が・・・。
「・・・想像するな、俺」
間違っても腹の中で粉々になった水晶玉に戻るなんて悲劇にならないように無心になる。
想像の力は無から有を生み出す力ではない、あくまで想像したものを生み出すだけなのだ。
それによって現れる反動が存在する事を忘れていた。
もちろん、目の前のコーラを飲む気にもならなかった。
そういえば、前に現れた煙草、あれの元は一体・・・。
ポケットから取り出した煙草が、元はなんだったのか、今となって知る術は無く、かといって癖付いた煙草だけは止められなかった。
「禁煙しよう・・・」
言い訳のように呟いた言葉、その言葉が実行される日は来ないだろう。
謎に包まれたから揚げだけで腹が膨れる訳もなく、空腹感に悩まされる俺は、取り合えず人を探すことにした。
400キロ離れた場所に人がいるのは確かだ。
問題は移動手段、先日使った飛竜車がまず頭に浮かんだが、一つ試してみたい事もあり、とりあえずこの身一つで旅立つ事にした。
とは言っても、使い方の分からない色々な物を鞄に詰め込んでいるのだが。
生憎と魔術道具の中に魔法の鞄は存在していなかった為、小さくて持ち運べるものに限定して持っていく事にする。
「普通に想像すればいいか?」
俺の身体は羽根の様に軽く、空へ・・・。
浮いた。
「おぉ!なんという浮遊感、実に愉快だ!」
しかし、浮いているだけでは意味がない、鳥のように羽があればいいが、鳥のように羽ばたくという想像はいまいちピンとこない。
唯一人間が空を飛んだ経験があるとすれば、飛行機。
鉄の塊が空を飛べるなら、羽根のように軽い今の俺が飛べない筈が無い。
ジェットエンジンのイメージで炎を爆発させる。
もちろん風の影響が無いよう、自身に風の防壁を張る事も忘れない。完璧だ。
飛ぶ事に関して完璧だったが、当初の目的を見失いつつあった俺を止める手段は無かった。
「止まる手段が無かった」
情けない俺の第一声はそれだった。
恐ろしいスピードで世界を駆け抜けたまでは良かったが、問題はその先にあった。
目的の400キロなど数分で通り抜け、あれよあれよと言う間に巨大な木に激突。
とっさに防御の想像をしたが、勢いを殺しきれず、跳ね返った反動で落ちた先は一国のお城。
ウォレイ城など比べ物にならないほどの規模と豪華さに感嘆していると、衛兵がやってきて御縄頂戴という訳だ。
もちろん俺ならすぐにでも逃げ出す事ができたが、面白そうなので捕まったままにする事にした。
この能力がある限り、普通の人間に殺されるほど脆くはないし、直ぐに逃げる事も可能だからだ。
とりあえず状況確認だ、現在俺は縄で手を後ろで縛られ、赤い絨毯の上に跪かされている。
槍を持った衛兵が両脇に立ち、俺を監視していた。
目の前には趣味の悪い黄金の椅子、玉座だろうか。だとすればここはあのヤンキーが治める国、英雄国のはずだ。
「女王陛下並びに巫女姫様の入場である、皆の者!鬨の音を奏でよ!」
俺の脇に立つ衛兵が、入口に立つ騎士が、一様に手に持つ武器を三度鳴らす。
槍の床を叩く音、納剣の金属音、厳粛な空気と共に綺麗な女性が二人現れた。
一人は美女、ブロンドの髪にブルーの瞳、赤を基調として作られたドレスを着た彼女を、ブロードウェイのスター女優と言われても信じるだろう。
もう一人は美少女、青みがかった白い髪が腰のあたりまで流れ、飾り気のない純白のドレスが儚げな印象を際立たせる。その目は閉じられたまま、表情を視る事はできない。
その時の俺の顔はさぞや面白い事になっていただろう。
女性が美しかったから?犯罪者のような扱いなのに女王と会っているから?
そんな事はどうでもいいのだ、問題なのは二人現れたという事実だ。
「そなたが世界樹から落ちてきた者か?」
「・・・落ちて、そうか、そういう事になっているのか」
「貴様、なにをぶつぶつ言っている!女王陛下の質問に答えろ!」
「そうなりますね」
衛兵が態度がどうとか喚いているが、俺の興味は一人の少女に向かっていた。
どうしてこの子は、俺の魔力探知に引っかからないんだ?
まだ女の子と言っていい歳だろう、中学か高校くらいと考えれば、10代半ばくらいだろうか。
俺の視線に気付いたのだろうか、少女が目を開け俺を見た瞬間、その瞳に動揺が走る。
目と目が合った瞬間、気付いたのだろう。
俺もその反応を見た瞬間に感づいた。
「こいつは敵だ」
「この者は敵です」
ここから第一部2章です。
ここからは物語の承となります。
正直かなり酷い事考えてます。R指定入れてるから大丈夫とは思いますが・・・。
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