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我ながら、芸の無い

目が覚めると、六畳一間のアパートで、日当たりの悪い部屋にパソコンの明かりが広がって。あぁ、今日も一日が始まってしまった。なんてつまらない独り言を呟いて。

目を開けると、そんな日常が待っていなかった。

「そっか、夢じゃないんだよな」

すっかり風通しの良くなった室内を見回し、頭の中を整理していく。

力を使い果たして眠ってしまったのだろう。

「奴は?・・・俺は?成功・・・したのか?」

辺りを見回すと、一本の小刀が転がっていた。30センチ足らずの小刀だが、この世界に存在し得ない異物。

「そうか、出来たんだな」

黒い柄に黒い鞘、刀身は一切見える事無く、一見するとただの棒にしか見えない。

それが小刀だと分かったのは、俺がそうあれと想像したからだ。


あの時俺は、この世界における死の概念を利用した。

死んだモノの魂に魔力は宿らない、死んでいるモノに魔力を伝える事は不可能に近い。

だから俺は、その不可能を利用することにした。

結果だけ簡単にいえば、力技だ。

本来であれば空間に溶けていく魔法を魔力の流れで無理やり抑えつけ、その場にあるものを魔力ごと捻じ曲げた。

おかげで魔力の消費は俺の限界を超え、魔法の成功と共に意識を失っていたという訳だ。

こうして出来上がったのは、膨大な魔力と、魔力を操る力が無ければ生み出す事の出来ない、魔力のかよわない柄と鞘いれものだった。

あとは同じように、ヤンキーの姿を刃に変え、一切の魔力を遮断する入れ物に治めた訳だ。

なぜ小刀なのかと言われれば、俺の趣味だ。としか言いようがない。


殺す手段が無いから封印するしかなかった、というのは半分本当で半分嘘だ。

不死の能力と言っても死なないだけで、想像という自由自在な能力とでは比べ物にならない力の差が存在する。

時間をかけ、ありとあらゆる手段を考え実行すれば、不死を殺す矛盾を生み出す事ができるかもしれない。

ただ一言で言うなれば、

「めんどくさ・・・」

その一点が最大にして唯一の問題であった。

そんな面倒くさい事をするくらいなら、誰にも見つからないよう、適当に隠しておけば問題無いだろう。

そんな事より、差し迫った問題がある。

「・・・俺って、王様だったよな?」

誰一人居ない城で物悲しい声で独り言を呟く魔王の姿がそこにはあった。


この城にはエターシの他に、城の雑務を任せられているメイドが数人居たはず。

明確な人数までは記憶していないが、一国の王の城だ、少なくはないはずだ。

それなのにだ、この惨状の中死体はおろか人影すら見えない。

隠れているなら安全になった事を知らせなければならないが、気配が無い。

一応確認のために探索範囲を広げてみる。

ソナーを応用した魔法で、その気になれば全世界を掌握することも可能だろうが、それはまたの機会にしておく。

一番近くの人らしい魔力反応はここから379キロ

「・・・遠い!?」

瞬間移動できる魔法でもあるのだろうか?

俺は魔道具の可能性も考慮して、城に存在する反応を調べる事にした。

城内に存在する魔力反応の中で異質なものだけを確認していく。

正確にはより明確な目的のある魔力反応と言った方が良いだろうか。

魔力反応は触覚に近い、見えない箱の中に何があるのか、というゲームを空間規模でやっている感じだ。

頭の中で世界が広がっていく感覚はなかなかに愉快。

一先ず城内で感じた魔力反応を探索する事にしよう。


と、その前に・・・。

勇者を封じてある小刀を持ち歩きたくはない。

うっかり落として封印が解かれました、なんて冗談でも笑えないだろう。

簡単に抜けないよう木箱にはめ込み、厳重に封をする。

城に俺以外が入る事は無いと思うが用心は大切だ、どこか目に付かない所に置こう。

俺が選んだ隠し場所は、・・・ベッドの下の隙間。

「我ながら、芸の無いエロ本の隠し場所みたいだな・・・」


城内の探索を始めて5分後、勇者の封印などすっかり忘れた俺の姿がそこにはあった。

今までの生活は、自室で寝る、書庫で本を読む、ダイニングルームでの食事だけだった。

城全体を見て回るなど初めての事で、多少浮足立っていたのは否めないが。

「なんだこのショボイ装飾は、変更だ!」

新たな廊下を歩く度に、気に入らない物を見つけては魔法で形を変える。

床の模様が気に入らない、柱の装飾が気に入らない、窓の位置が気に入らない。

主要部のゴシック建築を残したまま、中庭には日本風の庭園、内装には近代建築を思わせる設備の数々、その他にも想像し得る限りの装飾を施していった結果。

統一感が無いのに何故か整っている、という思いがけず愉快まんぞくな結果となった。

ほぼ丸一日をそんな事に費やした結果。

「こんなことしてる場合じゃない!」

というもっともな意見と共に腹の虫が唸った。


チート能力は如何に制限を設けるかで物語を決める物、と言うのが持論ですが。

この主人公に関して大きなマイナスとなる制限はあまり付けないようにしようかと。

そんな設定で本当に大丈夫か?俺・・・。


感想お待ちしております。


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