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ウロノカミタマ -Circulation of vampire-  作者: 次野/うずらの


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24/27

14口め



 その日、集落は朝から騒がしかった。



 マモノが押し寄せ、外壁に体当たり。

 衝撃が地響きとなって、広場に会す皆の不安を煽れば、グ・ゴゴは外に。

 新鮮な血肉を求めて、壁を這い上がるマモノの注意を自身に向け、飛びかかってくるやつらの腹を引き裂いて――――シロガネとベルミリオ、ルキスとレインも加わって、少数での攻防戦が行われていた。



「きりがねえっ……!!」



 ――集落に攻め入ることはない。



 シロガネたちの予想は外れた。


 自国の、製造に欠かせない鉱物の生産領土を擲(なげう)ってでも、ロイユを連れ戻したいのか。



 ――グ・ゴゴがもっと打算的だったら。

 ――シロガネたちに隠れて、ダズリンに渡す手立てを企てていたら。

 ――過酷な労働環境で奴隷のような扱いを受けたのなら。



 すぐにでも集落から逃げたのに。



「うおおおおおおお!!」



 必死で生きる人々のため誰よりも金棒を振り回し、マモノを屠る――――そんな彼をも、オルドの人間は容赦なく凶弾の的にした。


 金棒に当たった弾痕に血液が付着する。



「あいつらバカなの!? 集落を攻撃しないかわりにロイユを連れてこいとか、交渉の余地ってもんがあるじゃない!!」

「じゃあ、お姫様人質にして撃ったら殺すって脅すか?」

「そのまえにアタシたちがお兄サマに殺られるって!」

「……キミたち、今、超絶ピンチなの分かってる?」



 荒野に立つ5人に遮るものはない。



「オルドの総督って、仙人を目の敵にしてるんだよね。仙人だけ捕らえて、俺たちは撃ち殺されちゃう?」

「地下牢で血ぃ抜かれて、一生飼い殺しだろうよ」

「大人しく白旗振った方が命は助かる……?」

「てめえがそんな腑抜けだったとはな」



 投降待ちか。

 それとも一斉射撃のためにタイミングを合わせているのか。


 なかなか撃ってこず。



 口ばかりがまわった。


 けれど、妙案は出ない。



 グ・ゴゴからの提案も、自らを犠牲にしてのものだった。



「――壁をぶっ壊してお嬢ちゃんたちと逃げな。おまえさんたちなら簡単だろう」

「注意を引くなら俺がする。アンタが率先する必要はない」



 シロガネの申し出に、彼は笑う。



「責任なんて感じなくていい。おまえさんたちが来る前から、ここは窮地だった」



 そうなった要因が偶然ではないことに、ようやく気づきもした。



「集落の連中も連れ出せとは言わん。ただ逃げ道を、やつらのためにも作ってほしい」



 マモノの包囲が薄れた今なら。

 その活路を開いたシロガネたちに、次は自分が報いる番だと、グ・ゴゴは彼らの前に立った。



「東の森へ行け。きっと助けになってくれる」



 そう道を示して。



 風が吹く。


 皆の背を押すように、強く――――踏ん張っていないと飛ばされそうな突風が、1羽の鴉を巻き込んで荒野に吹き荒れて。小石が転げ、小枝が舞い上がる中、気流に気流に乗れずにバランスを崩しながら落ちてくる。



 必死に、

 大きく羽ばたいて、


 地面すれすれで着地すれば、ネロが顕現した。



 両手をかざして再び風を――――オルドの兵を押し返す。



「無理すんなっ」

「ロイユがね!!」



 暴風にかき消されないよう、ネロは叫んだ。



「おとーさんのとこ行くって言うんだ!! そしたら攻撃されなくなるよねって!!」

「自発的に来させようって魂胆ね。あの子の良心をなんだと思ってるの」



 静かに憤るルキスに、「ぼくも!」と続く。



「自作自演(こーいうこと)するオルド(おとーさん)、だいっきらい! ロイユはわたさないもん!」



 小さな背中が逞しかった。



「ぼくにまかせて!」



 グ・ゴゴ自ら脱出を促すことで、集落の人々が散り散りにならなくて済みそうだ。


 門を開け、皆を従える。


 ロイユだけがその輪から外れ、シロガネたちの元へやってきた。



「兄さん、私っ……!!」



 シロガネは前線に立つネロの伝言を、ロイユに伝える。



「オルドに行ったらレインたちと一緒に拐(さら)いに行くからね、だそうだ」

「でもっ、それじゃネロがっ……」

「ここに置いてったりしないよ。ロイユちゃんは先に仙人と逃げるんだ」



 ブラッドコインも拾っておきたいし、と残留することに気落ちしないよう、ベルミリオもらしさ全開で。



「キミたちも! ロイユちゃん諦めてないなら、さっさと走る!」



 ネロの背を見つめていた双子にも声をかけ、東の森へと促した。



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