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ウロノカミタマ -Circulation of vampire-  作者: 次野/うずらの


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11/12

7口め



 例のお祭りの日がやってくる。



 数日前から検問所を閉め、怪しい者は徹底的に街から排除する。

 すべてはこの日のため。

 朝からお祭りムードのマグメルには、特設会場が設営され、あれよこれよといろんなものが運ばれていた。

 酒樽は言わずもがな。屋台なんかも乱立して、トトたち市場組が酒に合う料理をこしらえたのが発端だったとか。

 全面的にヒトが協力、お祭り騒ぎにするのはマグメルだけらしく、周辺からの訪問者も多いらしい。



 日が暮れ、花火が打ち上がる。

 開始の合図だが、特設会場ではすでにヒトがごった返しており、キリュウのテンションも最高潮だった。



「お嬢ちゃんも楽しんでくれ! ただし、怪しい誘いは無視するように!!」


 マスクも外れ、八重歯もなくなり、ただの屈強なヒトである彼は、景気付けの一杯をあおった。


「ぷはっー!! お嬢ちゃんもどうでい!?」

「さっそく絡むな、酔っぱらい」


 シロガネは飲むより食い気――もっと言うなら、ロイユのごはんが良かったのだが、ロイユが初めてのお祭り、ということもあって、会場にやってきていた。


「がうがうっ」

「串を外してやるから、ちょっと待つんだ」


 ネロもお祭りの空気に感化されたのか、はたまた牛串なる良いニオイが待ちきれないのか、シロガネの腰めがけて立ち上がる。


「兄さん、私これ食べていい?」

「あぁ。キリュウの奥さん曰く、あまじょっぱくてロイユちゃんにオススメ! だそうだ」


 もぐもぐと頬張り、「兄さんもひとくちっ!」と、弾ける表情にシロガネは目を細めた。

 その一方で手が止まる彼に、ネロは吠える。


「がうがう!」


 早く外して、お肉ちょうだい! と。


 けれど、ロイユも無視できないシロガネは、それを同時にやるしかなかった。

 肉を外しながら、顔だけロイユに向けて、肉を横に引く。


 口端にべったりタレをつけて、ネロに肉を与えるシロガネに、キリュウは爆笑した。



「お兄ちゃんしてるねえ!!」

「うるさい」



 そんなやりとりすら目立たないほど、会場は賑やかだ。




「さあさあ今月もやってまいりましたッッ!! 真の酒豪を決めようじゃありませんかッッ!!」



 壇上に立った男の合図で、またもうひと盛り上がり。



「我らが代表キリュウVS(ヴァアサァアス)ッッ、泣かせた女は星の数? 実は旧友だった寡黙なお兄ちゃんシロガネぇぇ!!」


「は?」と、キリュウを睨めば、本人は にやにや。


「酔うと赤ちゃんだもんなあ、シロガネ。お嬢ちゃんにそんな格好悪いとこ見せられんよな」

「はァ?」


 断れば肯定したようなもの。

 まんまと挑発に乗ってしまったシロガネは、キリュウと壇上へ上がった。


「さらにこの方、ダークホースの参戦だあ!! 旨いつまみをありがとう、その凪いだ表情は崩れることを知らない・市場の女店主トトさぁん!!」



 補足情報として、前回並みいるヴァンパイアたちを酒浸りにしたとか、してないとか。



「その2人もべろんべろんにしちまえー!!」

「頑張ってー、シロガネさぁん!」

「代表の意地を見せてやれー!!」



 各々の推しに叫ぶ中で、「さあ誰に賭ける!?」と雑踏に投げかける声も。こんなときでも金を稼ぐベルミリオだったが、彼もしっかり串焼き片手に、ひとときを謳歌していた。




     *




 ――アンタも行ってきなさいよ。

 ――俺たちは遊びに来たんじゃねぇ。

 ――そんなギラッギラな顔してると衛兵につまみ出されちゃうわよ?



 会場を囲むように設営された2階席の隅に陣取る、旗袍チャイナ風の装いに身を包んだ2人組がいた。


「やっと石ころ集めから解放されたのに。アタシも串焼き食べたーい」


 長い前髪をかきあげ、整った顔で思いっきり甘えるルキスと、常に塩対応のレインは双子の兄弟だ。といっても、生まれた瞬間が一緒なだけで、顔も性格も似てはいない。


「てめえで買ってこい」

「えー、おーねーがーいー。お兄ちゃんでしょお」

「可愛くねえんだよっ。俺より筋肉つけやがって」

「あらやだ。じゃあ、アタシがお姉ちゃんー」

「あ・に・き、な!!」

「弟の自覚してるじゃない。パシられなさいよ」

「誰がっ」

「じゃあ、可愛い可愛い弟のために買ってきなさいよ」


 お兄ちゃん? と見下せば、レインは苦虫を潰した顔して階段を下りていく。


「しっかり見てろよ」

「はぁーい☆」


 美しくもあり、たくましさも兼ね備えたルキスは、ロイユに視線を戻した。


 小さな黒豹を従え、身内を応援する彼女のそばには取り巻きがいる。

 酒に、祭りに惚けていても、そこは怠らないよう。



 ――どう近づくか。



 密かな悪意は、ゆっくりと雑踏に紛れていった。



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