7話 特訓
朝食を食べ終わり、名取さんに別れを告げると矢守さんによる施設案内が始まった
「まずはここ!ここは大浴場だよー。部屋にもお風呂ついてるけど、大体みんなこっちで入ってるかも
やっぱりみんな、部屋に帰る前に汚れは落としたいからねー」
誰もいなかったので中を少し覗いてみた
なかなか広く、ゆっくりと浸かれそうな浴場だ
次に向かったのは図書館だった
幅広くそろえられた書籍達はジャンルごと綺麗に整頓され棚に並んでいる
「ここでは他の部隊の人も来るから静かにねー、問題起こすとお説教コースだよ!」
そう言った矢守さんは少し震えていた
…多分経験があるのだろう
次は少し特別だった
中に入ると少し鉄の匂いがする
「ここは武装を作ってくれるところ。今のうちに申請してっちゃおー?
マリちゃんは得意武器は拳でいい?」
いきなり得意武器と言われても困る
「ならお姉さんからのアドバイスー
悩んでるなら、最初に武器と言われて思い浮かんだものにするといいよー
武器と認識しているものが一番馴染むからね!」
矢守さんの言葉を聞いたとき一番最初に思い浮かんだもの…
「なら、刀でお願いします」
「…副隊長とおなじだぁ」
そう言うと矢守さんは少し笑った
最後は訓練場だった
矢守さんが扉を開けて入ると視線がこちらに集中した
「ここは昨日も来たからわかってると思うけど、一応ね」
矢守さんは気にせず中に入っていった
私もそれに続く
「向こうが機材とか置いてあって―、あっちが個室になってるんだけど
マリちゃんはしばらく個室がいいかもねー。これじゃ集中できないでしょ?」
そう言って矢守さんは周りを睨みつけた
視線が散らばるのを感じる
「個室のルールは入るときに札をかけといてねー。
この部屋鍵がないから、札がないと誰かはいってきちゃうよー」
中に入ると教室ほどの広さの部屋になっている
「部屋の隅に訓練用の武器があるから好きに使って!」
そういって矢守さんは刀に似たものを引っ張り出し渡してきた
「振ってみたいでしょ?気にせず振ってみてー」
私は刀を受け取ると振り下ろしてみた
それは想像より重く、抑えきれず剣先が床を叩いた
「はじめはそんなもんだよね。私も刃物は苦手だからなー」
そう言って矢守さんは笑っている
その時チャイムが響いた
「お昼だ!お昼だよー!マリちゃん行くよ!」
「いえ、もう少しやってみたいので気にせず行ってきてください」
矢守さんは少し悩んだが、お昼の誘惑に勝てなかったようだ
「わかった、なら私が戻ってくるまでこの部屋にいてね
そのあとはマリちゃんのごはんだからね!」
扉がぱたんと閉まり部屋に静寂が広がる
「ルイ、お願い」
そういうと目の前にルイが出てきた
「おまたせ、やろうか」
私はルイに言った
「やる気はいいね、刀も。俺が少しは教えてあげられる」
一瞬意識が沈む、再び意識が浮き上がると
あの時のように私が目も前に立ち、笑っていた
「君の体はまだ成長途中だ
それでも、できることはある。まず俺が少し振って見せる
今の君の体、君の能力でできることをしっかりと見てほしい」
そう言って刀を持ち振り始めた
それを見て私は初めて知った
私の体はあんなにも軽やかに動くことを
あんなにも美しい刀の扱いができることを
一つ一つの洗練された動きは私の心をつかみ、心臓が大きく脈打っている
私は思ってしまった
こんな風に自由に動いてみたい、きれいな太刀筋を真似たい
ルイのようになりたい
「どうだった?自分を見てみて」
「私の体じゃないみたいだった。これがルイの実力なんだね」
それを聞いてルイは笑った
「何言ってるんだい、これはマリの体だ。マリの実力だ。
俺はそれを引き出しているに過ぎないんだよ。それに…」
私は元の体の戻り、目の前にルイがいた
「それに、マリはこれからもっと強くなれる。言っただろ?君はまだ成長途中なんだ」
そう言って笑ったルイを見て、また心臓がドクンと大きく鳴った
「…はやくルイみたいになりたいな」
それを聞いたルイは言った
「マリは俺みたいになっちゃいけない。マリにはマリの道があるからね
俺は君の道を照らすことしかできない。自分の道は自分で歩くんだ」
肩をすくめながらそう言ってルイは少し笑った




