6話 朝食
コンコンと扉をたたく音で目を覚ました
眠い目をこすりながらドアを開けると一人の女性が立っている
「おはよー!起きれてえらい!」
と言って女性は敬礼をした
「私は矢守 星あなたの教育担当だよ
昨日ここに運んできたのも私なんだから」
そこで改めて思い出し、私はハッとした
「すいませんでした。それでその、昨日私はどうなったのでしょう?」
身体には目立った傷はないし、痛いところもない
そういえば昨晩からそうだった
「覚えてないの?すごかったのにー」
矢守さんは驚いた顔をした
「でもそんなことより、朝ごはん食べいこー。とりあえずこれに着替えてきて」
そう言って矢守さんが着ている服と同じものを渡された
それを受け取り、着替えると鏡の前で確認した
「なかなかかわいいじゃない」
私は鏡の前で軽くポーズをとった
「そうだね、よく似合っているよ」
「……っ!?」
いきなり耳元で声がする、私は思わず耳をふさぐように庇った
「ちょっと!いきなり話しかけるのやめて!心臓が持たないから!!」
「あはは、ごめんごめん」
そう言って声は少し遠ざかり部屋の角からルイが顔を出した
「うん、よく似合ってる。かわいいよ」
「そう、ありがと」とそっけなく答えた私だが内心はドキドキだった
これまでの人生で男の子に面と向かってかわいいなど言われたことがない
その時私は気づいた
「あんた、覗いてないでしょうね?」
「勿論覗いてないよ。それに君は分かっているはずだ、俺はそんなことをしていないって」
そう言ってルイはまた姿を消したが、気配はまだある
「自由な時間ができたらまた呼んで。それまでは君の思うままに、日常を楽しむことも大切だ」
そう言って気配も消えた。
「ねえ、マリちゃーん。お姉さんもうおなかペコペコー」
矢守さんがドアを叩いた
「い、今行きます!」
ほんと調子が狂う。高鳴る鼓動を抑え私は玄関のドアを開けた
部屋から少し歩くとすぐ食堂についた
「ここが食堂!いろいろあるし、無料だから好きなの頼んだらいいよ!」
そう言い残し矢守さんは颯爽とカウンターへ走って行ってしまった
私はメニュー表を見て回り、きつねうどんを注文した
「おーいこっちこっち!」
食事を受け取ると席で矢守さんが手を振っている
「今日はこのあとねー色々見て回るから沢山歩くよ。たくさん歩くから沢山食べとかないと」
矢守さんは私のうどんを見た
「マリちゃんそれだけで足りる?」
矢守さんは、その体のどこに入るのかと思うほど山盛りの定食を頼んでいた
「大丈夫です」
私は少しひきつった笑顔でそう答えた
「そんなこと言って、ほんとは少し足りないでしょ。お姉さんは優しいので、唐揚げを一つ贈呈します」
そう言って唐揚げを一つ私の器に入れた。
「あ、ありがとうございます…」
うどんの汁の中を唐揚げが泳いでいる
「嫌なら、ちゃんと断っていいよ。矢守はそういうところあるから」
声の方を見ると眼鏡をかけた男性が立っていた
「お、なとりんおはよう」
「おはよう、矢守。ここ大丈夫?」
そう言って矢守さんの隣に座った
「改めて、僕は同じ部隊の名取 透
昨日の君を見て、どうしても話してみたくてね」
名取さんはにこりと笑った
「今は矢守が近くにいるから大丈夫だが、そうじゃないときは気を付けた方がいいよ
君はよくも悪くもこの部隊で一番注目されている」
そう言って視線を向けた先の別の隊員は目が合うと急いで目をそらしていた
「矢守さんって、そんなにすごい人なんですか?」
「え?何も聞いてないのか?」
そう言って矢守さんの方を見た
矢守さんは食べることに夢中でこちらを見ていない
「やっぱり、僕が来て正解だったみたいだ」
そう言って名取さんはため息をついた
「いいかい、矢守はこう見えてこの隊の中でも上位の成績なんだ。ほんとに。こんなだけど…」
まるでリスのように口いっぱいにご飯をほおばっている矢守さんを指さした
「安心していい。僕や矢守を含めた上位者は君に純粋に興味があるだけだから、手を出してくることはない。喧嘩を売られても昨日みたいにパーンとやっちゃってOK」
そう言いながら、名取さんの蕎麦にかかった海苔を矢守さんの器に移していた
「あと、矢守のことで何かあったら僕に言って。よく言って聞かせるから
さて、話はこれくらいにして、早く食べないと麺が伸びてしまう」
そうして三人で朝食を食べ、忙しい一日が始まった




