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28話 おまじない

目を開けると、何も無い空間に立っていた


「ここは…?」


不思議な事にここでは、最近感じていた違和感

ずっと聞こえていた声、精神の不安定さ

全て無くなっていて少し心が軽くなった


「いらっしゃい、私」


後ろから声が聞こえた

振り返ると、あの時見た私が立っている


「あなたは、誰なの!」


私の問いに、無言で近づいてくる


「私は、私。マリ、私を、見て」


そう言って私の頬に手を添え、おでこを当ててきた

目の前に、見慣れない景色が広がる


「私も、まーぜーてー!」


私は、公園で他の子達に駆け寄った


「いーよ!じゃあみんなで鬼ごっこしよ!」


男の子がみんなにそう言った


「最初の鬼は、最後に来た君ね!」


男の子が私を指さした


「わかった!」そう言って私は数を数える

10数えて、周りを見ると遠くの方に

さっきの子たちが見えた


「いっくぞー!」


私は全速力で他の子を追いかけた

あっという間に追いつき、みんなに触る


「みんな捕まえた!」


私は笑顔でそう言うと、

他の子達はつまらなそうな顔をした


「お前変!なんで、子供なのに大人みたいに速いの!

つまんない!」


そう言われた私はショックだった

私はただ、遊びたかっただけなのに

変と言われた悔しさや、恥ずかしさで涙が浮かんだ

私は、男の子を押して、

男の子が地面に倒れた


「なにすんだよ!」


男の子が私に言う


「うるさい!お前が悪い!」


私がそう言うと、男の子が私を押してきた

私は後ろによろめき、男の子を睨む


「うわぁぁぁ!」


そこからは取っ組み合いの喧嘩だった

周りにいた子達は必死に私達を止めようと

服を、腕を引っ張ってきた


「邪魔しないで!」


止めようとする子達を引き剥がし、喧嘩は数分続いた



私が家の扉を開けると、母が玄関にいた


「それ!どうしたの!?」


服は破れ、土に汚れ、少し怪我をしている私を見て

母は驚き、声を上げた


「私は、悪くないもん!」


私がそうむくれると、母は私を抱き寄せた


「喧嘩してきたのね?誰と喧嘩したの?」


「分からない、初めて会う子だったから…

でも、男の子でも負けなかったよ!」


私が言うと母が笑った


「それは凄いけどー、女の子はお淑やかにしなきゃ」


「でも、だって!」


私の口を母が塞いだ


「お話は後で。お父さんが帰ってくる前に

お風呂に入ってらっしゃい」


母が言った


「…はーい」


私は渋々、お風呂場へと向かった

母はため息をつく


「あの子、誰に似ちゃったのかしら?」


お風呂で汚れを洗い流し、リビングに入ると

父が帰ってきており、テレビを見ていた


「お父さん、おかえりさない!」


私がそう言うと、父は笑って振り返った


「お、マリ、お母さんから聞いたぞ、

今日喧嘩したんだってな!」


そう言われ、私はビクッとした

父がちょいちょいっと手招きして私を呼び寄せる


私が近づくと父は私を抱き上げて、膝の上に乗せた


「で?何があったんだ?」


私は、父に今日の事を話した

それを聞いた父は笑って私の頭を撫でた


「男の子に勝ったのか!

やるなぁ、流石お母さんの子だよ」


「どういう事?」


私は父に尋ねた

父は私の耳元でコソコソと話をする


「お母さんな、昔はよく喧嘩してたんだよ

それもこの辺りじゃ敵なし、めっちゃ強かったんだ」


そう語る父はとても誇らしそうだった


「…旦那様?マリに何教えてるのかしら?」


母が後ろからココアを持って現れた


「いや、マリは俺達の自慢の娘だよって話だよ」


父は母に言った

母から受け取ったココアを私に渡しながら

父は話を続けた


「でもな、すぐ暴力に頼るのはいけないよ

マリの力はもっと使うべき時があるんだ」


「でも私悪くないもん!」


私がそう言うと父は少し考えた


「マリが好きな魔法少女は、力を自分の為じゃなくて

誰か他の人の為に使って戦うだろ?」


「…うん」


「魔法少女みたいな、素敵なお姉さんになるには、

力の使い方を覚えなきゃいけないね

マリは素敵なお姉さんになりたいかな?」


「なりたい!」


力強く頷く私を見て、父はまた頭を撫でてくれた


「なら、マリにいい事を教えてあげる」


話を聞いていた母が私の前に立って

自分の首を人差し指で、トントンと2回叩いた


「これは、お母さんのおまじない

誰かに怒った時とか、力を使いたい時、

辛いこととか、悲しい事があった時、

こうやって自分を抑えるの」


私は母のおまじないを真似した


「なんかよくわかんない」


私がそう言うと、2人は笑った


「いつかわかる時が来るから、

それまで大切に持っておいて」


そう言って母は私の頬にキスをした


そこで、映像が止まる


振り返ると、幼い私が立っていた


「マリ、思い出した?」


幼い私が聞いてきた


「思い出した。

人を殺したのも、約束を破ったのも、

おまじないを忘れたのも、全部、今の自分(わたし)


自分の手を見ると、真っ赤に濡れていた


「あの時見たのは、幼い私(あなた)じゃなくて、

今の私(わたし)だった

あなたは、ずっと、教えてくれてたんだね」


幼い私は、私に近づいてきて、しゃがむように言った

私が身をかがめると、

幼い私は背伸びをして私の頭を撫でた


「やっと、私を見てくれたね

大丈夫、マリはちゃんと強いよ

私は、私を、忘れて欲しくなかっただけ

大切なものを、忘れて欲しくなかっただけ」


そう言って私を抱きしめた

小さい身体で、だけど力強く、優しく

私が、恐る恐る抱きしめ返すと、少女は笑った


「これ、返すね。あなたの大切なもの

安心して、眠ってるだけだからね」


少女が白い光と黄色の光を取り出して、私の手に乗せた


「行ってらっしゃい、マリ

マリは、ずっと一緒にいるから」


少女がそう言うと、私の意識は現実へと引き戻された

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