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27話 扉

数日間、私は訓練場でひたすら刀を振るった

そうしている間は、何も考えずに済むから

自分の影を振り払う様に、鍛錬に打ち込む

一息つき、時計を見る


「あ!やば!」


私はサッと片付けをして、医療棟へと向かった

矢守さんの部屋に入ると、

相変わらず矢守さんは眠ったままだった


「矢守さん、いつまで寝てるんですか?」


私が尋ねても、返事は帰ってこない

窓を開けて換気をして、机にお見舞いのバナナとリンゴを置いた


「また、来ますね」


私は部屋を後にする

部屋を出ると若菜さんに会った


「矢守、起きへんな」


若菜さんは私に言った


「今までの分、ゆっくり休んでるんですよ、きっと」


私は笑顔でそう返す

若菜さんは複雑な表現をした


「マリちゃん、ええ加減話してくれてもええやろ?

日に日に、その、笑顔が…」


若菜さんは私の肩に手を置いた

自分でもわかっている

ここ数日で、笑顔は能面の様に

私の顔に張り付いていた


「若菜さん、話せるまで聞かないって、

言ったじゃないですか

大丈夫ですから、ほっといてください」


そう言って肩に置かれた手を振り払った

若菜さんは何か言いたげに、少し口を開けたが

すぐに閉じて下を向いた

そんな若菜さんを見ても、私の顔から、

笑顔は消えなかった


「今日はもう行きますね、ご機嫌よう、若菜さん」


そう言って俯く若菜さんを残して、私はその場を後にした


「ふふふんふーふ、ふふふふーふーふ、

ふーふーふふふー」


私が鼻歌を歌いながら廊下を歩いていると

前から名取さんと、宮村さんが歩いてきた


「おや、お二方お揃いで、

これから矢守さんのお見舞いですか?」


私がそう尋ねると、名取さんは歯を食いしばった


「お前、それ、いつからだ?」


宮村さんが、私に聞いてきた


「なんの事ですか?いきなり何ですか?

新手のナンパですか!?

宮村さんってそんな人なんですか?」


私は宮村さんに詰め寄る

宮村さんは舌打ちをした


「…多分、矢守を連れて帰ってきた時だ

その時に、俺が、異変に気付くべきだった…!」


そう言って名取さんは拳を握った


「そうか。望月、ちょっとこい」


宮村さんは私の手を引き、どこかへ歩き出した


「きゃー、おーそーわーれーるー

たすけてー」


私は笑いながら、そんな事を叫ぶ

そんな私に目もくれず、宮村さんは前だけを向いて歩いていく

後ろを見ると、名取さんが私の後ろに付いていた

完全に前後を挟まれ、逃がさない意志を感じる


連れてかれ、着いたのは訓練場だった

1番大きな部屋に入った所で、

宮村さんは私の手を離した


「それを抜け、全力でかかってこい」


宮村さんは私の刀を指さして言った

名取さんは宮村さんの後ろに立つ


「安心して全力で来ていいよ

むしろ、全力じゃなきゃ意味が無い

僕と宮村を、殺す気でかかってこい」


そう言って、名取さんはメガネの位置を直した

宮村さんは、無言で初めて見るガントレットを腕に着けている


「意味はよく分からないけど、そう言うなら、

お言葉に甘え、全身全霊で!」


私は、両手を打ち合わせた

心臓が大きく跳ね上がり、髪が紅く染まる

晴赫を抜き、2人に向けた


「いざ、じんじょうにー?」


私は宮村さんに斬りかかった

宮村さんは私の動きを観察し、丁寧に私の斬撃を逸らす


「…あれ?」


逸らされた私の刀は加速し、刀は床を強く叩いた

完全に無防備になった私を、宮村さんは蹴り飛ばす

私は抜いていない心月で、宮村さんの蹴りを防ぐが、

後方に押し返された


「成長してるのはお前だけじゃねぇ、舐めんな」


宮村さんは私を睨んだ


「宮村、右足だ」


名取さんがそう言うと、宮村さんは床を大きく踏み付けた

私の右足が大きく跳ね上がり、体勢を崩す

その隙に、宮村さんは距離を詰め、

インファイトが私を襲った


「ちょちょちょ!?」


私はギリギリ防ぐが、腹部と顔に一発ずつ入ってしまった


「いったーい、なぁ!!」


私は大きくなぎ払い、宮村さんを敬遠する

…やっと一息つけた

殴られた箇所がズキズキと、私の身体に残っている


「ふ、はは」


私の口から笑いが漏れだした


「アハハハハハハ!」


私はゆっくりと晴赫を左手の手首に当てる


「わたしは、望月?」


勢いよく、刀をスライドさせる

刃が私の皮膚を食い破り、傷口から赤い液体が吹き出した


「マリ、ちゃん、です!」


血が滴る手で、もう一度両手を打ち合わせた

青いベールが私を薄く包み込む

手首の傷口がみるみる塞がっていく


「治ったぁ♥」


傷口に残った血を舐める私をふたりは見ている

私はそれが嬉しくて、楽しくて、面白くて、可笑しくて

指を、手を、腕を、足を、腹を、

叩いて、刺して、切って、突いて、

治して、直して、無おして(なおして)猶して(なおして)

床に血が溜まるほど、私は自傷を繰り返す


「おい、名取、これ間に合うのか?」


みやむらがいった


「どうかじゃない、やるんだ

じゃないと、後で矢守に殺されるぞ」


なとりがいった


「…それの方が、よっぽど怖いな」


みやむらがわらっている

わらっている?わらっている!


「ワタシも、まーぜーて♥」


私は大きく刀を振り上げた

宮村は私の身体に打撃を打ち込む


「い、た、た、た、くない!」


私はそのまま刀を振り下ろした

宮村はそれを逸らし、また、地面を強く叩いてしまった


「避けないでー、ワタシを」


「名取マズイ!隊長呼べ!

このままだとそのうち押し切られる!」


一瞬でそう感じた宮村は、名取にそう指示を出し

名取は無線で隊長を呼び出す


「私が居るのに、ほかの女に浮気?いっけないんだー」


私は宮村に斬りかかる

その全てが逸らされ、躱された


「むぅ、手数がたりなーい」


私は心月を抜いた


「これで、2倍、だねぇ」


私は隙なく、斬撃の雨を降らせる

宮村はそれを払うが、額には汗が浮き

顔が険しくなる


「今、左!」


名取がそう言って、宮村は再び床を踏み付けた

私の足が再びはね上げられた


「やだぁ!逃げないで!」


私は身体を捻り、1回分多く斬撃を飛ばせた

これは間に合わない、逃げられない

逃がさない!

名取と宮村の顔がはっきりと見えた


「よーきかなー!」


声が聞こえた


「ギリギリセーフかな?」


隊長が2人の前に立っていた


「たいちょー、じゃましないでよ」


私がそう言うと、隊長は笑った


「これはこれは、随分派手にやってるじゃないか

暴れたいなら、私が相手になるよ」


「かっくいいー」


私がそう言うと、隊長は笑った


「それはそうと、マリ

頭が高いんじゃねぇか?」


私の身体がズッと重くなる


「おいおいおい、この程度でフラつくのかよ

もっと出来るだろ?やって見せろよ?なぁ!」


圧が上がり、立ってられず床にひれ伏す様に、

押し付けられる


「んー、これはー、威圧じゃなくて?重力?

ならー、何とかなーる」


フワリと青いベールが広がり、

私の身体は本来の重さまで戻る


「ざんねーん、たいちょーもその程度?」


私が笑うと、隊長も笑った


「オレの前に立っている事を自覚しろ

挨拶代わりに決まってるだろ!」


再び床に叩きつけられる

圧はどんどん上がり、骨がミシミシと軋んでいる


「マリ、オレはお前を元に戻せる

だが?それだとお前はそれまでの人間だ

だから行ってこい」


そう言って隊長は私の前に立った


「お前が自分で乗り越えてこい」


私のおでこを指先で軽く叩かれると

私の意識は糸のように切れた

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― 新着の感想 ―
とても読みやすくて面白かったです。 一話目で謎の組織によって平和な日常が一気に崩壊していく展開に、物語の冒頭から強く引き込まれました。 尾藤隊長や矢守さんをはじめ、対能力者対策部隊の隊員が生き生きと描…
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