25話 もう一つの空
ボロボロの矢守さんを支えながら帰ると、
外で名取さんが待っていた
「え、ちょっ!矢守ボロボロじゃないか!
これ大丈夫なのか!?」
「ちょいきびしー。
なとりん、若菜のとこまで連れてってー」
そう言って矢守さんは名取さんに背負われると
眠ってしまった
「望月さんは大丈夫かい?」
名取さんが聞いてきた
「私は大丈夫なので、
これから隊長に報告に行ってきます」
私がそう答えると、名取さんは優しく笑った
「その余裕がある喋り方、目的は達成したみたいだね
2人とも無事に帰ってきて嬉しいよ」
「あの、今日の任務行く前の私って、どんなでした?」
私が聞くと名取さんは少し考えた
「一言で言うなら、機械みたいだったな
なんか雰囲気が硬いって言うか、普段とは別人みたいな
あと、少し焦ってる感じかな?」
「そうなんですね、ありがとうございます」
お礼を言って名取さんを見送った後、
私はニヤけた顔でルイを見た
「へぇー、ふーん、私が取られて焦ってたんだ?
寂しかった?泣いちゃった?」
そう言ってルイの方を見ると、私から顔を逸らした
「んー?なんで、顔みてくれないの?
こっち向きなよー」
私はルイの顔を見ようと回り込むが、
ルイのガードは固い
ルイは深呼吸した後、私を少し睨むと
スっと姿を消した
「なにも逃げることないのに…」
私はルイの姿を思い出しながら隊長室へと向かった
ドアをノックして、中に入ると
隊長がニコニコで待っていた
「おかえりマリ、矢守はどうした?」
「矢守さんは、名取さんが医務室に連れていきました
私の怪我はそれほど酷くないので、先に報告に」
隊長は少し考えた後、また笑顔に戻った
「まぁ、矢守なら大丈夫でしょ
それより、ちゃんと取り返せたんだろうね?」
隊長が私に詰め寄る
「勿論です、見てくださいこの顔を!
正真正銘、望月マリ帰還しました!」
私はニッと笑って見せた
それを見た隊長が、少し驚いた顔をして笑った
「なんだか矢守に似てきたね。
でも、そうだな。今回の件で、望月は随分成長したみたいだし
次からは、違う仕事を任せてもいいかもしれないね
これからも、うちで!頑張ってくれよ」
そういって隊長は私の頭をわしゃわしゃと撫でた
その時ドアが開き、副隊長が入ってくる
「レイ、準備できたk…
望月、戻ってたのか」
私の顔を見て、副隊長の目線が、少し鋭くなった
「安心してください、副隊長
隊長との関係は誰にも言いませんよ♡」
そう言って私は人差し指を口に当て、シーっとやって見せた
「え、なんだいなんだい?いつの間に私達そんな関係になったんだい?」
隊長が副隊長と肩を組み、副隊長の頬を指でなぞった
「お前も乗るな!うっとうしい!
望月勘違いするな、こいつとはそんな関係じゃない!」
「そんな!私との夜は遊びだったのね」
それを聞いて、私は期待の眼差しを二人に向けた
「ただの飲みだろうが!もういい!今日は一人で行く!」
そう言って隊長を振り払い、副隊長は出ていった
「あー!待っておくれよ!望月悪いね、話はまた今度だ」
そう言って、隊長も部屋を飛び出す
部屋に残された私は、思わず笑ってしまった
次の日、私は訓練場に向かった
「ねえルイ、少し私と賭けをしない?」
私が声をかけると、ルイがスッと現れた
「賭けの、内容によるかな」
それを聞いて私は笑う
「内容は、今日中に、私が外装を展開できるかどうか
負けた方は、お願いひとつ聞いてもらえる権利!
私はできるに賭けるけど、
どうルイ、賭ける?それとも逃げる?」
それを聞くと、ルイは少し考えた
「そういうってことは…
わかった、じゃあ俺はできないに賭けるよ
じゃなきゃ、賭けは成立しないからね」
それを聞いて、私はニヤリと笑う
「今言ったからね!もう取り消しは受け付けませーん!」
そう言って、腕でバツ印を作った
それを見たルイが、あきれながら笑う
「わかったよ。なら、見せてもらおうか
新しい君の性能とやらを」
そう言って、ルイはニヤリと笑った
訓練場に着いて、私は深呼吸した
「…じゃあ行くよ」
私は、両手を強く打ち合わせた
心臓が、大きく鼓動する
髪が赤く染まり、黒いものが体を覆い始める
「ねぇルイ、私ね
なんだか、頭が妙にスッキリしてるんだ」
だから、今ならなんで私が夜天を使えなかったか、少し分かる気がする
黒いものは、まるで卵のように私の全身を覆った
「さぁ、夜明けの時間だよ!」
もう一度両手を打ち合わせると、黒い殻ははじけ飛び、周囲を照らした
私の体には、水色の薄いベールのようなものがひらひらと舞っている
「どう?ルイ、これが私の出した答え
空は、夜だけじゃないんだよ」
そう言ってルイを見ると、ルイはポカンとした表情からハッとして
「でもこれは夜天外装じゃないので、ダメでーす!」
そう言って手をクロスしてバツ印を作った
「確かに、これは夜天外装じゃないよ
でもお忘れかな?私は、外装が成功したら、って言ったよね?」
私はルイの前に立った
「これは私のオリジナル、名付けて【晴天外装】!
だから、賭けは私の勝ち!」
そう言って私はピースサインをした
ルイはたじろぎ、大きくため息をついた
「…わかった、俺の負けだ。で、マリのお願いってなに?」
ルイがそう言うと、
私は、もう一度深呼吸をしてルイに向き直った
「お願いは、私に、
ルイのことを、教えてほしいの」
そう言うと、ルイの表情が固まった
「それは、どういう意味?」
ルイが私に聞いてきた
「ルイが、私に隠してること全部
私は、ルイの事がもっと知りたいの!」
私がそう言うと、ルイは少しうつ向いた
「…少し考えさせてくれ」
そう言って、ルイは姿を消した
私の心臓は、まだ大きな音を立てて動いていた




