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24話 晴天

「ここから入るぞ」


そう言って俺はマンホールの蓋を開けた


「…今更なんだけどー、

マリちゃんの姿でその喋り方と口調、なんか変」


「…余計なこと言ってると置いていくぞ」


俺がそう言って中に入ると矢守もすぐついてきた

下まで降りると、下水の通路を歩いていく


「ここだ」


「ここ?何もないただの壁なんだけど」


俺は心月を抜き、壁を切る

少し押すと壁は倒れ、下水じゃない通路が現れた


「やっるぅ」


「行くぞ」


通路を進むと異様な光景が続いていた

左右の壁のくぼみに一定間隔で人が入ったカプセルが置いてある

皆、目は虚ろで反応がない

なにより恐ろしいのが


「これ、中の人まだ息してるねぇ、悪趣味ぃ」


矢守が中の人を観察していった


「先を急ぐぞ」


俺が言うと矢守は頷いてついてくる

しばらくそんな光景が続くと、前に扉が見えた


「どうする?ぶち破って入る?」


「待て、探る」


俺が夜天を展開し中の様子を伺うと、中にいる

マリを机に置き、何かをしている

その光景を見た俺は、

耐えきれずにそのまま扉をぶち破り中に入った


「おや、あの時の君か。よくここまで来たじゃないか」


中にいた男はあの時の少年ではない

しかし、しゃべり方、しぐさはあの少年だった


「今日は子供じゃないんだな」


「あぁ、あの器なら捨てたよ。君たちに傷モノにされたからね

せっかく気に入ってたのに…」


そう言って男が指さした方には、

通路にいた人たちのような、虚ろな目をした少年が横たわっている


「それで?君たちは人の家まで何しに来たのかな?

あ、せっかく来たし、僕の宝石たちでも見てく?

これすごく綺麗なんだよ?」


そう言って机の上の彩とりどりの球を動かし始める

配置はちょうど天体図の様だ


「これね、相性がいい球同士を適度に近づけると綺麗に光るんだ

ほら、この間の球、いい色に光ってる」


太陽の位置にある赤い球が強く光る


「それを、マリを返せ」


俺は両手を打ち合わせ、髪が銀色に染まる

心月と晴赫を引き抜いた

俺の後ろから、銃声が聞こえる

マリの体を交わすように銃弾が男に飛んでいく


「あわわわ」


男は慌てて机の上の球をかき集め、銃弾を交わした

そこに畳みかけるように俺が切りかかる


「…切れる?」


男が俺の刀の前に赤い球を突き出した


「…チッ」


俺はいったん下がる


「ははは!取り返しに来たんだもん!

切れないよねぇ?」


男は笑っている

そして、周りを見渡した


「あーあ、こんなに壊してくれちゃって

せっかく、いろんな人から集めた魂が全部散っちゃったじゃないか」


男がため息をついた


「知ったことか、マリ以外はどうなってもいい」


男は目を丸くした


「えーひどーい!守る側の人のセリフじゃないね

あ、それもそうか、だから君は君の中にいるんだね?」


男が笑って俺を指さした


「ちょっとー、何の話か全然分かんないんだけど、っと!」


矢守がキュっと手を動かすと、壁に埋まった弾丸が飛び出し

男の肩を貫いた


「…痛ったぁ、また器乗り換えないといけないじゃないか!」


それを聞いた矢守は笑った


「大丈夫、もう君は乗り換えなんかできないよ

その前に私が殺すから」


男が舌打ちして何かを唱えだした

男の前に門が現れる


「俺が同じ手を何回も許すわけないだろう!」


晴赫で門を切り裂き退路を断つ


「お前は怪我すればすぐ逃げると思ったよ

だから常に逃げようとする瞬間を狙っていた

あの時と同じと思ったら大間違いだ」


悔しそうな顔をする男がニヤリと笑う


「こい!お前ら!」


矢守の背後から何かが飛びかかってきた

咄嗟に振り払い除けると、床に転がっていた少年だった

それに続き、通路の方からカプセルに入っていた人達が

まるでゾンビの様に押し寄せてくる


「お前ら俺の時間を稼げ!」


男はそう言い残し、マリを持って逃げ

ゾンビの大群の中に消えていった


「追え矢守!それと、これもってけ」


俺は晴赫を鞘に収め矢守に投げた


「…いいのー?」


「こいつらは1本あればいい。

それに、お前だって、刀、使えるだろ?」


矢守が笑う


「早く来ないと私があいつの首取っちゃうから」


そう言って壁を走るように男を追っていった


「…さて、聞こえてるかは知らん

お前らには悪いが、物事には優先順位がある

マリの為に、死んでくれ」


俺が心月を振ると、前衛の首が飛んだ



壁を走りながら矢守は男を追っていた


「見つけた、見逃さない、逃がさなーい」


矢守が銃を撃った


ゾンビの1人が自分の身を盾にする


「に・が・さ・な・い」


弾は直前でクンっと曲がり

足元を抜けると男の足を貫いた


「ああもうしつこい!」


男は自分の胸を貫き、球を取り出すと無傷のゾンビの口にその球を押し込んだ

ゾンビは意識を持って走り出し、さっきの男はゾンビのようになる


「なるほどねぇ」


逃げ出した前に門が現れる


「逃げたらダメ、はい残念」


矢守が門を切り裂いた


「おとなしく赤いの返してよー

そしたら見逃して、は無理だけど苦しまず死ねるよ?」


矢守が問いかける


「いやだ!これはもう僕のだ!僕のモノだ!

奪われるくらいならいっそ…」


男が袋を掲げた


ヒュッと風切り音と共に腕と袋が落ちる


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」


「あなた、腕がトリガーなんでしょ?

腕無かったらどうするの?」


男がキッと睨んだ


「腕はいらない、捨てましょうー

足もついでに、切りましょうー

それなら次はー?

首か腰?いやいや、次は、あなたの命」


そう歌いながら矢守が手足を落としていく

もう男は声も出さない

呼吸音だけが男が生きていると言っている


部屋の方向から、足音が聞こえる


「お、来たねー。特別に一番きれいなもの

あなたに見せてあげる」



矢守は男の襟を掴んだ

袋をあさり、赤い球を取り出して俺に渡してきた


「それ、呑み込めばいいみたい。

マリちゃんが帰ってくるよ」


俺は球を呑み込む

ゆっくりと体に熱がこもっていくような感覚がする


「…マリ?」


俺が声をかけると、一瞬で体の主導権をマリに奪われた


髪が赤く染まり、キラキラと少し発光している


それを見た、男の目の色が変わる


「こ、レは、うつくシィー」


そう言った男の首を、刃が通り抜ける

男の首が胴体と離れる瞬間、男の体は激しく燃えた


「お帰りマリちゃん、気分はどう?」


矢守がマリに近づく


「離れろ矢守!」


俺は無理やりマリから腕の主導権を取り返し矢守を突き飛ばした

矢守が立っていた位置を刃が通り過ぎる


「どうしたの!?マリちゃん!」


マリが手を伸ばすと、矢守が持っていた晴赫が

マリの手元に飛んでいく

矢守が立ち上がり距離を取って構えた


「マリがおかしい!俺が精神に潜る間、耐えてくれ!」


「…無茶いうねぇ」


矢守はそう言って苦笑いをした

俺はマリの意識の奥へ潜る


暗い部屋でテレビを見るように

外を見ながらマリは立っていた


「マリ!」


俺の声にピクリと反応して振り返ったマリの顔は

こちらを完全に敵として見ている


「また誰か来た

あなたは、だれ?私の中に、入ってこないで!」


マリが両手を打ち合わせ、髪が赤く染まった


「落ち着けマリ!俺は、ルイだ!」


マリは顔をブンブンと横に振って耳を塞いだ


「知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない!

おまえのことなんて知らない!わからない!来ないで!」


そう言ってマリが殴りかかってくる


「マリ!」


マリの攻撃をいなすが、全てが致命傷になりかねない


「っ!仕方ない!」


俺は両手を打ち合わせ、髪が銀色に輝く

殴りかかってきたマリの腕をグッと掴んだ

もう片腕も掴み、手四つのような形になる


「本当に、忘れたのか?」


マリは何も言わない


「そうか、なら、少し荒っぽくなるぞ」


俺はニッと笑うとマリに頭突きをした


「悪いな!今、両手塞がってるんだ

だから直接、記憶を頭に叩き込む!」


俺は再び、マリに頭突きをする


「アアアアア!」


マリが頭を抱えて座り込む

俺はマリの頭に手を置いた


「夜の時間は終わりだ。

帰っておいで、マリ」


そう言って記憶のピースをマリに渡す

暗かった部屋が段々と明るく照らされていく


「…あれ?ルイ?」


俺は一息ついた


「どこ、ここ?私、今、任務で…

それより、ルイ!?え、なんで!?

今、触れた!?」


「細かい事は後で、今は戻ろう

早くしないと、矢守が死んじゃう」


テレビを見ると、体が矢守を追い詰めている


「え、何で!?早く戻ろう!」


俺はマリの手を取ると、精神から抜け出す

矢守の首に刃が突き立てられる寸前で、手が止まった


「すいません、矢守さん!今戻りました!」


私がそう言うと、矢守さんが力なく手を下ろした


「まったく手のかかる後輩だにゃぁー

もう少しで死んじゃうとこだったよー」


壁にもたれ掛かりながら矢守さんが笑った


「よく耐えたな、少し見直したぞ」


「君に言われてもうれしくないなー」


ルイと矢守さんのやり取りを見て、私は目を丸くした


「え、なんで話してるの!?何があったの!?」


それを見たルイが笑っている


「とりあえず帰ろう、こんなとこ、いつまでもいるような場所じゃない」


「どうかーん、早く帰ろー」


私は疑問が消えないが、矢守さんを支えながら出口へと歩き出した


「あ、そうだ、マリ」


ルイが、私の前に出て振り返った


「おかえり」


ルイは、そう言って笑う


「…よくわからないけど、ただいま?」


首をかしげながら言う私を見て、ルイはまた笑った



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