23話 彼は誰時
何も見えない、何も感じない
だけど
何処かから、声が聞こえる
「本当に助けるかもわからない敵の言葉を聞き、俺たちを殺すのか!?」
「マリちゃんはね、1人で抱えすぎなんだよ」
「その時に君達がどうするのか、俺はそれが楽しみで堪らない」
「月元次期当主として、突き止めなあきません」
「十三部隊担当みたいなもんやし、よろしく頼むで、新人ちゃん」
「そのために僕は力を貸してあげる。君を強くしてあげる」
「私は笑ってるマリちゃんが好きだもの」
誰?どこから聞こえるの?
私は周りを見ようとした
目が開けられない、体も動かない
「あなた、泣いてるの?」
「お前なんかいらない!」
「やめて、お母さん!」
「この子のこと、よろしくお願いします」
「お父さん、お母さん、だいすき!」
「今日はどこ行くの?」
「愛。勝負はお預けやなぁ」
「優。お前だけにええ格好させへんで!」
声が鳴りやまない
段々と声は大きくなり、重なり合い、
もう何を言っているのかすらわからない
「嫌!やめて!誰なの!誰がこんなことするの!」
耳を塞ごうにも体は動かない
叫ぼうにも声が出ない
「誰か、たすけて…」
「…見つけた」
東の空がだんだんと明るくなり始めた頃
「時間ギリギリ。だけどマリ、君の声ちゃんと聞こえた」
俺は、夜天を閉じると部屋へ戻った
数時間仮眠を取った後、俺は隊長室へ向かった
「失礼します」
俺が中に入ると、尾藤が座っていた
「今日は朝早いね、何か進展あったかい?」
尾藤がコーヒーを飲みながら聞いてきた
「奴を見つけました。今夜、突入しようと思います」
それを聞いた尾藤がコーヒーを噴き出す
「見つけた!?もう!?
あれから1日しかたってないじゃないか!
どんな魔法を使ったんだい!?」
俺は少し考えた
「一度しか使えない手を使いました。今回に限り使える特別な手段
なので、今回だけ特別早いのですよ」
そう言って笑ってごまかす
「成程ね、それだけ必死って訳だ
何が望月をそんなに必死にさせるんだい?」
尾藤が笑いながら言った
「そうですね…
実は、私が奪われたものは記憶なんですよ。過去の大切な記憶
だから、私の大切なものを取り返したいし、大切なものに触れた奴を許しておけない」
尾藤はそれを聞くと、コーヒーを一気に飲み干した
「その気持ち、よくわかるぞ!
大切なものを取られた恨み、取り返したい欲望
そして罪を償わせようという思い!
全部よくわかる」
尾藤が笑った
「ならば、徹底的にやろう!
君の思いが冷めないうちに!相手が逃げないうちに!
冒涜が最小限のうちに!
…望月の感情が少し知れて私は嬉しいよ」
そう微笑みかけてくる尾藤が俺は少し恐ろしい
だが、今はそれすら利用してやる
「今回相手は一人です、なので矢守さんを貸してください
少数で手早く済ませます」
尾藤が椅子に座りなおして足を組んだ
「いいよ、矢守は君の教育係だ
元々、同伴させる気だった。だから問題はない
けど、2人で大丈夫かい?」
「いい報告ができるよう、最善を尽くします」
そう言って頭を下げると、頭をなでられた
驚いて頭を上げると目の前に尾藤が立っている
「期待してるぞ、望月」
首から背中に冷たい汗が流れる
尾藤は再び椅子に座った
そのタイミングで扉が開き黒木が書類の山を持ってやってきた
「尾藤、今日の分だ」
そう言って書類を机に置く
尾藤が悲しそうな顔でこちらを見てきた
「作戦は今夜行います。これから準備に入りますので失礼します」
そう言って振り返ることなく部屋を後にした
「許可もらえたー?」
通路の角に矢守が立っていた
「問題ない、元々同行させる予定だったらしい
すんなり許可が出た」
矢守が笑う
「ならよかったー。だめでもついていくけど
一応報告は入れとかないとねー」
「今夜向かう、準備しておけ」
「私は今からでも行けるよー?」
矢守がそう言って装備を見せてきた
「時間に変更はない、夜に向かう
確実性を上げるために
…夜は俺の時間だから」
「…ふーん、そっか」
矢守がそう言って自分の部屋の方へ歩いて行った
「もう少し待ってて、マリ」
俺もマリの部屋へ戻り、準備を始めた




