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22話 月の下

帰ってくると、すでに日は沈みもうすぐ日付が変わりそうな時間だった


「逃がした、だと?」


報告の時、隊長の表情が曇る


「すいません。私の責任です」


「いえ!僕の責任なんです」


俺の言葉に反応して、亀井も頭を下げた


「いや、しょうがない。

残った戦力的に、撃退はできても討伐はできなかっただろう」


隊長はため息をついた


「思っていたより、敵は手練れの様だ

むしろ今回は、望月、亀井、遠藤はよく生き残った

下手すれば、誰か死んでいたかもしれない」


隊長がそう続けた


「あの!僕を庇って望月さんが被弾しました!

望月さんの療養を提案します!」


「何!?望月大丈夫なのか!?」


隊長が身を乗り出した


「いえ、大丈夫です。問題ありません」


「大丈夫じゃないよ!今は大丈夫でも後で何かあるかもしれない!

それに、あの子に何か取られてたでしょ!」


亀井が肩を掴んできた


「問題、ありません

それより、逃げた男の調査、私にやらせてもらえませんか?」


俺は隊長に提案する


「望月が?いや、調査は白鳥に頼もうかと思っていたのだが」


「自分がやります。今度は逃がしません」


私の目をじっと見た隊長は、頷いた


「わかった。だが始めるのは、望月の身体検査が終わってからだ

問題が無ければ、そのまま調査を開始しろ」


「了解しました。必ず見つけ出して仕留めます」


隊長がまた頷いた


「今日はゆっくり休め、全員解散だ」


隊長室を出たとき、矢守に肩を掴まれた


「どこ行くんだい?私との話がまだだよー?」


矢守が笑顔で俺に言った



訓練場のいつもの個室に連れていかれた


「話って、何ですか?」


矢守が俺に向き直った


「んー、色々聞きたいことはあるんだけどー?

とりあえず、君は誰だい?」


俺は首を傾げた


「えっと?言ってる意味が分かりません。

私は望月マリですけど…」


矢守は笑顔のまま言った


「嘘はいけないなー、あなた匂いが違うもの

マリちゃんはお日様みたいな匂い、あなたからは雨の匂いがする」


矢守の瞳が少し大きくなった


「あなたが誰かはしらないけどー、前から、時々匂いが変わってたから知ってるよ。

あなたがマリちゃんを教えてたんでしょ?

それで、亀井君が言ってた奪われたもの、あれってマリちゃんでしょ?」


矢守の洞察力に素直に驚いた


「そんな、いきなり何言ってるんですか、私は私ですって!」


取り繕う俺を見て、矢守から笑顔が消えた


「別にお前のことはどうでもいい、私はマリちゃんを取り戻したいだけ

そこはお前と利害が一致するから言ってるだけ

…だから協力しようよー」


俺は息を飲んだ

こいつ、普段は猫かぶってやがる


俺は大きく息を吐いた


「…わかった、提案を受け入れる

俺も、マリを助けたい。ただし、詮索はするな」


矢守はいつもの笑顔に戻った


「言ったでしょー、私はあなたに興味ない」


そう言って、手を差し出してきた


「それでいい。お互いの目的は一致している」


俺は矢守の手を取った


次の日、俺は医療棟に向かった


「若菜さん、いますかー?」


「おー、マリちゃんどないしたん?」


若菜が顔を出す


「実は昨日の任務で少し、一応見てもらえってことなので

診断いいですか?」


「何や大丈夫か?お姉さんに任せとき!ばっちり見たるからな!」


そう言い、俺の手を取って、じっと見始めた


「んー、そうやなぁ。見た感じ大した事はないんやけ、ど?」


若菜の動きが止まる


「なんで書き換わってるん!?え、そんなことあるんか!?

マリちゃん一体なにしたん!」


俺はすぐに手をひっこめた


「大丈夫なんですね、ありがとうございます

それでは、次の予定があるので失礼します!」


俺は足早に若菜のもとを去った

後ろで何か言っていたが、これ以上捕まるわけにはいかない


次に向かった先は、武器申請所


「失礼します、関さんはいらっしゃいますか?」


「関ですね、今お呼び出しします」


しばらくすると関が入ってきた


「何だ、心月の嬢ちゃんか。どうした?調整か?」


「いえ、心月は優秀ですよ。そんな心月を作ったあなたにお願いがあってきました」


「おう!なんでも言ってみろや」


関はそう言って腕を組む


「では、あなたに刀をもう一本打ってもらいたいのです」


それを聞いた関はニヤリと笑った


「…やっぱりそうか。初めて見たときから感じてたよ

いつかもう一本必要になるってな

だからもう完成している。待ってな、今持って来てやる」


しばらくして、関は一本の刀を持ってきた


鞘から抜くと、少し赤みかかった刀身がすらっと姿を現す


「こいつは晴赫(はるか)

おまえさんの為に打ってたら色が変わりやがった」


俺は言葉を失った


「…相変わらず、いい仕事しますね」


手に汗がにじんだ、口元が緩んでしまう


「こいつも何かあれば言ってくれ」


俺は2,3回軽く振る

晴赫も驚くほど、手になじむ


「問題ありません、ありがとうございます」


関を見ると、口を開けていた


「お前さん、かなり刀の振りが良くなったな

まるで熟練の剣士を見ているようだ…」


「やっぱりあなたは、腕利きの職人だ」


俺は関に礼を言うと、訓練室に向かった

中では矢守が待っている


「悪い、遅くなった」


「遅すぎー!レディを待たせるなんてなってないよ!」


矢守は頬を膨らませ、怒っている


「それが新しい武器?ふーん、でもちゃんと振れるの?」


俺は、心月と晴赫を抜き、軽く振り払った


「なるほどねー、君の本職はそっちなんだ

なら、少し試してみてもいいかなぁ?」


そう言って矢守が拳銃を取りだした


「元からそのつもりだ、俺のリハビリに付き合ってもらう」


矢守がニヤリと笑うと、撃ってきた


「相変わらず、正確な性格の悪い射撃だ」


ぐっと構え、銃弾を見極める


「月元四節 半月」


心月で銃弾を矢守の方へはじき返す


「一節 居待月」


晴赫で斬撃を飛ばす


「わーお、それ両方できるんだぁ」


銃弾は矢守の前で軌道を変え、飛んできた斬撃は上体を反らして躱す


「次はこっちから行くぞ、二節 朧月」


俺の姿が希薄になる


「消えたわけじゃないなら、私には効かないよぉ

…そこでしょ?」


矢守が俺に拳銃を向け撃ってくる


「なんでわかるかな?見えないはずなんだけど」


「私、ちょっと鼻が良いんだよねぇ」


矢守がリロードしながら言った


「なら正面から行くしかないか!」


俺は矢守との距離を縮める


「正面から抜けるの?」


矢守が追加の拳銃を抜いた


「マリちゃんの師匠なら、この距離でこの量でもなんとかなるよね?」


それはマリとの時に見せた圧倒的弾幕戦術


「…それを待ってた」


俺はすべての銃弾の軌道を床に向ける

落とされた銃弾は床に当たり、辺りにほこりが舞い始めた


「姿はみえなくてもー、匂いで…」


そういう矢守の首筋に刀の峰を当てた


「なんでー!?どうやって?」


「お前あれだけ撃てば火薬の臭いすごいだろ。そこでほこりなんかで一瞬隙を作れば

このくらいは近づけるんだよ」


そう言うと矢守は頬を膨らませた


「…ずるい、もう一回!」


「だめだ、練習は十分。後はマリを探す体力を残す」


そう言って練習場を後にした

部屋の中からは物凄い勢いで銃声が聞こえた


夜になり、俺は屋上に出た


「夜は俺の時間だったな。夜天展開」


俺の闇が夜空に広がり、空に溶ける


「薄くていい、マリの気配がつかめるギリギリまで

広く、遠くまで」


目を閉じ、意識を集中させる

ゆっくりと夜天が広がっていく

夜天の広がりと共に、夜は闇を増していった

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