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14話 月元

副隊長についていき、二番隊の場所まで案内された


「…ルイ、いる?」


私は副隊長に気づかれないように小声でルイを呼んだ


「なんだい?」


ルイがスゥッと私の前に顔を出す


「二番隊の隊長にあう間、私の手を握っててもらいたいの」


ルイは困った顔をした


「俺は触れないんだけど…」


「わかってる、手を重ねてくれているだけでいいから」


それなら、とルイは私の手に自分の手を重ねた


…準備は整った

私は副隊長に続き、建物に入った

中はうちの部隊と同じような構造になっている

副隊長は何のためらいもなく訓練場の扉を開けた


訓練場の中はまるで道場のようになっており

中では木刀を持った人たちが打ち合いをしていた


「こっちだ、ついてこい」


副隊長が私を呼び

一つの部屋の扉を開けた

中では女性が1人

木刀を持ち、構えていた


「あら、珍しい客人やね?」


「まぁな。今日は部下も連れてきたんだ」


私は頭を下げた


「あなたが噂の子やね。私、二番隊の月元 凛菜(つきもと りんな)いいます。

よろしゅうね」


そう言って月元隊長が会釈をした


「…ルイはこの人知ってる?」


私は小声でルイに尋ねた


「…知らない」


ルイはそう答えたが、触れている手から感情が流れ込んできた

焦り、怒り、言葉にならない何か。

知らないは嘘。ルイはこの人を知っている…


「あの!突然ですいませんが!

私と手合わせをお願いできないでしょうか?」


「別にええよ。ほな、これ使い」


そう言って木刀を渡してきた

私は受け取ると柄を握る

手がじわっと湿った

握り直し、私は構えた


「…よろしくお願いします」


私はいきなり距離を詰め、木刀を振り抜いた


「勢いはええね。けど、まだ狙いが甘いわ」


クルリと回るように私の攻撃は躱された


「ほな、次はこちらの番やね」


舞う様に、様々な角度から攻撃が飛んでくる


辛うじて防いだが、迂闊に近づけない


「ええ目を持ってるわ。一撃くらい入るかと思たけど、

まさか全部落とされるなんて」


月元隊長は息も上がっていない

私は大きく息を吸い込んだ

両手を打ち合わせると、心臓が大きく跳ねた

居合の構えを取るとあの時と同じ様な感覚がする

木刀を振りぬくと斬撃が月元隊長めがけて飛んで行った


「…これは!」


月元隊長も同じ構え、私と全く同じ技で相殺し、お互いに届くことはなかった


「黒木副隊長。少し、席外してほしいんやけど」


月元隊長は真剣な顔で副隊長に言った


「…わかった。あまりうちの部下を虐めるんじゃないぞ」


そう言って部屋を出ていった

ドアが閉まると月元隊長はこちらに向き直った


「さて、聞きたいことは色々あるんやけど。まず、一番に、

あんたの名前、教えてもらえるやろか?」


「望月、マリです」


「望月…」


月元隊長は考え込んだ


「なら次の質問。この剣術、誰に習ったん?独学やない、誰があんたの師匠や?」


「…その質問、月元隊長とどんな関係があるんですか?」


私が聞き返すと、月元隊長はため息をついた


「あんたの剣術、型は月元の秘伝や。

外に流れているなら月元次期当主として、突き止めなあきません。」


その目を見て、私は一瞬固まってしまった

深呼吸をして平静を装う


「言えません」


なぜこう言ったかは分からない

ただ今は、ルイのことを言ってはいけない、

そんな気がした


「あんたが誰を庇っているかはわからへん。

けど、月元を敵に回す、と言うことでかましまへんな?」


「何をされても、私は口を割りません

私の師匠なら、同じ状況の時そうするだろうから」


私は木刀を構えなおした

そんな私をじっと見て、月元隊長はまたため息をついた


「…かないまへんな。あんたも難儀な子やね。

話はおしまいや。あんたの師匠がどんなかは分かりまへんけど、

よろしゅう伝えといて」


そう言ってドアの外にいる黒木副隊長を呼び戻した


「なぁ、黒木はん。この子うちに下さいな」


月元隊長が私の肩に手を置いた


「それはうちの(れい)を説得してから言ってくれ」


「レイ?あぁ、尾藤はんの事やね。名前で呼び合うなんて随分仲がよろしいんやね?」


黒木副隊長はハッとして口を抑え、少し赤くなっている

そんな黒木副隊長を見ていた月元隊長の目線が

一瞬遠くを見つめ、眉間がキュッと酸っぱくなる


「でも、私あの方あまり好きやないんよね、

粗暴で横暴やのに妙なところで鼻が利く

まるで獣やわ、私とは合いまへん」


尾藤隊長も似たことを言っていた

そう思うと私は笑ってしまった



その日の夜、部屋にいるとルイが目の前に出てきた


「…何も、聞かないのかい?せっかくのチャンスだったのに」


「私が聞いたら答えてくれるの?」


ルイは黙ってうつむく


「なら一つだけ教えて。ルイは月元隊長と、月元とどんな関係なの?」


ルイは少し困った顔をして少し考えた後、重い口を開いた


「俺は月元の家の人間だった。でもそれが嫌で逃げ出した。

今は、それだけで許してほしい」


私はルイの手に触れる

手からルイの感情を感じる

恐怖、悲しみ

それだけで十分だった


「わかった。今はそれで許してあげる。

でもいつか、ルイのことちゃんと聞かせてよね。」


「ごめん。いつか、整理ができたら全部ちゃんと話すから」


そう言ってルイは申し訳なさそうに笑った


何故、ルイを信用出来たか少しわかった気がする

この人は私に嘘をついてない

今は、それだけで十分だった

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