12話 代償
目が覚めると天井のレールが目に入った
周囲を見渡すとカーテンで仕切られている
私は身体を起こそうと力を入れる
「え、なにこれ!?体中痛いんだけど!」
全身に激痛が走り起き上がるどころではない
カーテンが開き女性が入ってくる
「おー起きとる起きとる、気分はどうや?」
「あの、全身が痛くて起き上がれないです…
それと、ここどこですか?」
私は涙目になりながら訴えた
「ん?なんも覚えとらんのか?ここは部隊の病棟区やで
かなり消耗しとったみたいでな、一応うちで預かったんや」
そう言ってお姉さんは私の手を取り、じっと観察した
「あちゃ~、全身筋肉痛になっとるね、こりゃ痛いわ
どうする?薬も出せんことないけど、メッチャ苦いで」
お姉さんは凄く苦そうな顔をした
「…お願いします」
苦くとも動けない今よりはいいだろう、そう思った
その数秒後、私はその選択を後悔した
出された薬は粉や錠剤、ではなく液体
コップいっぱいに入った液体は少しとろみがありスムージーに近かった
そして、なぜかポコポコと気泡が上がってきている
「これ、飲めるんですか?」
「…効果は保証するで」
そう言ってお姉さんは目をそらした
コップ一杯の重さで腕が悲鳴を上げ、プルプルと震える
深呼吸をして覚悟を決めた
目を閉じて口に一気に流し込む
最初に感じたものはヨモギのような香り
それを一瞬で塗りつぶすように苦味、渋み、酸味が押し寄せる
舌触りもどこか不快感がある
身体が呑み込むことを拒否したが吐き出すことは許されない
必死に喉奥に押し込み、私は力尽きた
目が覚めると恐る恐る体を動かしてみた
肩を回し、足も曲げてみた
さっきまでが嘘のように体中の痛みが引いている
「…ほんとに効くんだ」
私は思わずそう呟いてしまった
「うちの医局はなぁ、良薬口に苦しを地で言ってるからなぁ
苦情も入るんやが、めっちゃ効くから誰も味は気にせんのよ」
そう言ってお姉さんは苦笑いをした
「お姉さんも飲んだことあるんですね」
「医者やって人間や、体調崩す時もあるんやで
それと、うちの名前は不知火 若菜や
お姉さんなんてむず痒くてたまらんわ
ほとんど十三部隊担当みたいなもんやし
よろしく頼むで、新人ちゃん」
その時病室の扉が開き、何かが物凄い勢いで飛び込んできた
「マリちゃーん!ごめーん!
初任務で一番つらい仕事任せちゃったー!
大丈夫!?つらくない!?もう動ける?」
そう言いながら矢守さんが私のベッドに飛び込み
頭が私のお腹にぶつかる
「い、今、死にそうです…」
「いやー!マリちゃん死なないで―!」
そう言って矢守さんは私にしがみついた
「お前が!いま!マリちゃんを殺しそうになっとる!
さっさと離れんかい!」
若菜さんが矢守さんを引き剥がし、ドアの方に放り投げた
「それと!病院では静かにせいって何べん言ったらわかるんや!」
矢守さんは綺麗に着地を決めながら振り返った
「お前は猫か!」
「あ、わーちゃんじゃん、マリちゃん担当?なら安心だねー」
矢守さんは一人で納得してやっと落ち着いた
「十三は大体うち担当やろ…
なんで覚えてないねん…」
「だって私、わーちゃんに会いに来る以外、ほとんどここ来ないしー
怪我だってしないからねー」
若菜さんはため息をついた
「わかったから今日はもうかえりぃ
マリちゃんもこれなら明日には退院やから
明日改めて迎えに…」
「かしこまー、じゃ、マリちゃんまた明日ねー」
そう言って矢守さんは飛び出していった
「人の話は最後まで聞かんかい!ほんで、廊下は走るな!」
若菜さんの声が響いた
「まったくあいつは…
しっかしあの矢守が見舞いに来るなんて珍しいやん」
「今回の任務一緒でしたし、私の教育係なので来てくれたのかもしれません」
「嘘やろ!?」
若菜さんは信じられないという顔で振り向いた
「そうか、なんかあったらすぐにうちに言うんやで
今晩の夕食は少しサービスしたるから頑張りや」
若菜さんは憐れむ目で私の肩に手を置いた




