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11話 覚悟

エレベーターのある場所まで戻ってきたが

何かがおかしい

…エレベーターが動いている

私は刀の柄に手をかけた

エレベーターの扉が開く


「いっけなーい、ちこくちこくー

…って、ほんとに遅かったみたいだなぁ」


辺りを見渡しながら中から男が一人降りてきた

手にはアタッシュケースを持ち

飴玉を咥えている


「止まってください!」


私は警告をした


「あれ、お宅見ない顔だけど新人さん?

それとも、コレやった犯人さん?」


男は死体を指さしながら一歩近づいてきた


「止まってください!これ以上近づくなら切ります!」


私は少し後ずさりながら警告を続けた


「おぉ、怖い怖い

おじさんは怖がりなんだ」


男は両腕を挙げた

その拍子にアタッシュケースが開き

中からナイフがガラガラと何本も零れ落ちた(こぼれおちた)


「あらら、やっちゃった」


そう言ってナイフを拾い

一本投げてきた

間一髪でそれを躱す

ナイフは廊下の奥の方に飛んで行った


「それ、あいさつ代わり

だめだよ?相手の動きはしっかり見なきゃ」


頬がひりひりする

つたっていく感触がする


「警告はしましたから」


私は鞘から刀を抜く


「良いもの使ってるじゃない」


そう言って男は笑っている

私は男の方に一歩踏み出す


突然背中側からナイフが飛んできて

私の肩に突き刺さった

さっき躱したナイフ

なぜ後ろから!

私はとっさに後ろを振り返った

誰もいない


「だから、

相手はしっかり見なきゃダメってさっき言っただろ?」


男の方に向き直ると再びナイフが数本

私めがけて飛んできた

今度は避けずにすべて弾き落とした


「君、いい目を持ってるねぇ

勘もいい

おじさん楽しくなってきちゃうよ」


そういいながらアタッシュケースから

短剣を2本取り出した


「さぁ、日本に生まれたなら

日本人らしく切り結ぼうじゃないか」


そう言って仕掛けてくる

肩にじわじわと痛みが広がる

それに速い、けど


「…っ、矢守さん程じゃない!」


私は痛みに耐えながら全て受け流した


「……っ!?」


ふくらはぎにナイフが刺さった

また、何故

よく観察していると

男が投げたナイフは

円を描くように私に向き直り飛んでくる


「追尾、してる」


男の動きがピタリと止まり

距離をとった


「やっぱり君は良い目をしてる

初見でそこまで見抜くなんて

やっぱり、二番隊の隊員は新人でも有望だ」


「私は二番隊じゃありません!」


男は驚いた


「え!君、二番隊じゃないの!?

じゃあ隊長の指導受けてるとか?

それか親戚?」


「さっきから何なんですか!

全部貴方には関係ありません!」


男はブツブツと何か言いながら考え始めた

私は身体に刺さったナイフを引き抜いた

傷口に心臓があるみたい

私は痛みをこらえながら男に切りかかる


しかし力がうまく入らない

軽い攻撃は弾かれてしまった

…一回でも当てれば勝機はあるのに届かない

訓練と実戦の差をひしひしと感じた


届け、届け!!


そう思いながらがむしゃらに振り続けた

何度も繰り返した動作

ふと、いつもと違う感じがした


私は距離を取り

感覚に従い刀を振るった

刀身は淡く光り

斬撃は飛ぶように男へと飛んでいく


「…ッ!?」


男は突然のことに体勢を崩した

私は自分のしたことに驚いたがそんなことは言ってられない

せっかくできた隙、この隙は外せない

勢いに乗り切りかかった


「…この斬撃、偶然はありえない

君は誰にこれを教わっている?」


男は私の攻撃を受け止めていた

外した!最初で最後のチャンス


「答えない…か

しょうがない、君のことは連れ帰ることにしよう」


男の周りにナイフと瓦礫が浮き始めた


「ここからはギアを上げる」


様々なものが私めがけて襲い掛かってくる

瓦礫、ナイフ、死体

躱しても安心はできない

すべて軌道を変え、私に戻ってくる


「っあ!?」


カクンと足の力が抜けた

倒れこむ私めがけ瓦礫が降ってくる

私の左腕にコンクリートの鉄筋が刺さり

床に固定されてしまった

私はそれを引き抜こうと鉄筋を掴む


「抜いちゃだめだよ」


男は私の腕を蹴飛ばし右腕にも鉄筋を突き刺した

痛みで声が出ない


「さて、どうしよう

抵抗されても困るし、腕は切り落とすか

少しは軽くなるしこれじゃもう腕も使えないでしょ」


私の目の前に男の手が迫る

誰か、誰か助けて

ルイ!


「触るな!」


私の口から声が出た

男を蹴り飛ばす

当たりはしなかったが男は後退した


「まだ抵抗する?もうやめときなって」


私の意識はまだ体にある

意識にルイが割り込んでくる不思議な感覚

湧き上がる怒り

ルイの感情が流れ込んできた


「お前は何を勘違いしてるんだ?」


私の体が浮き上がる

ズブズブと激痛と共に鉄筋が抜けていく

腕から異物が抜けると男の方に体が向いた


「生きて帰れると思うな」


そういうと私の意識が体からはじき出された

とっさに自分の方を見る


「…なに、あれ!?」


さっきまであった傷はきれいに塞がり

髪と目は深紅に染まっている


「夜天、外装…」


ルイがそうつぶやくと闇が体を覆った

黒い外套のように変化した闇

隙間から見える赤い髪や目は輝き

まるで、星空の様だった


呼吸が荒い

握りしめた拳は力が入り少し震えている

ルイらしくない

いつもの余裕そうな表情は無く

その目は今にも飛び付きそうな獣のようだった


「なるほど、君もこれから本気って訳だ」


男は最初変化に驚いた様だったが

すぐに平常を取り戻した

格が違う

いや、私がまだ未熟なのだ

ここでは想定外が想定外なのだ


ルイは1度目を閉じ深呼吸をして

両手を打ち合わせる

さっきまで深紅に染まっていた髪が

みるみるルイのいつもの髪色

銀髪に変わっていく


「失礼、少し取り乱しました

改めて、

貴方の命私が貰います」


ルイはそう言って笑ったが目は笑っていない


ゾクッとした

私はあんな表情ができるのか


「おじさんにだって譲れないものがあるんだ

君を持って帰れなければ怒られてしまうからね」


そういった男の腕が飛んだ

ルイが纏った闇が尾のように揺らめく


「言ったでしょう?貴方の命私が貰います」


男は自分の落ちた腕を見つめた


「……強くなった、というより

技の質が違う?

ということは、なるほど

お前、入ってるな?」


男はルイを指さして笑った


「それなら俺もそれなりの準備をしないと勝てない

という訳で一旦出直して来るとしよう」


そう言って男は落ちた腕を拾った


「逃がすと思ってるのか!」


ルイは男に叫ぶ

髪がまた紅く染まり始めた


「逃げ切れるさ。

見たところソレ、あんまり長く持たないんだろ?

今も無茶したからもう立ってるのもやっとのはずだ」


ルイの闇が少しずつ散っていく


「そいじゃ、またいつか

()()()()()()


そう言うと男はものすごいスピードで天井を突き破り飛び立っていった


ルイは髪色が元に戻り、その場に膝を着いた


「ルイ!大丈夫!?」

私はルイに駆け寄った

私の身体なのに私が知らない事が沢山だ

……なのに何故、ルイは知っているんだ?

さっきとは違う冷たさが背筋を伝っていく

そもそも何故、私はルイを信じたんだっけ?


そんな事を考えているとルイと私が入れ替わった

ドクンと心臓が跳ね上がる

はち切れんばかりの鼓動に合わせ頭が痛い

身体もミシミシと悲鳴をあげている

そんな身体を心月を使って無理やり立たせた


足音が近づいてくる

今この状況で戦う体力は残っていない

でも、そんな事は言ってられない

まだここは戦場だ

力を振り絞り足音のする方に刀を構えた


「ちょっと待ってー!私!私だよー!」


「矢守、さん…?」


歩いてきたのは矢守さん達だった

その姿を見た瞬間、緊張の糸が途切れ

私は気を失った



倒れたマリを抱き起こしながら矢守は周りを見渡した

床に散らばるナイフ

戦闘の跡

天井に空いた穴


「まさか本当に援軍が来るなんて

後退させた筈が、望月さんには無理をさせてしまった」


名取も辺りを見ながらそう言った


「新人にしてはよくやったが、

このくらいでガス欠なんてまだまだだな」


宮村はマリを見下ろしながら言った


「…マリちゃんはよくやったよ

ここにいたヤツ、多分結構強いよぉ

トドメはさせなかったみたいだけどー

ほんとに、よくやってくれたよ」


矢守はマリの髪を撫でながら言った


「時間がない、望月さんを担いでさっさと行くぞ」


名取がそう言うと宮村がマリを肩に担いだ


「ちょっと!マリちゃん女の子なんだから

もっと持ち方あるでしょ!」


矢守が注意すると宮村は舌打ちをした


「うるせぇな!これが一番楽なんだよ!」


こうしてマリの初任務は幕を閉じた



ーとあるビル

部屋には白衣の男が1人

キーボードを叩く音だけが響く

ひと仕事終えた男は飲みかけの缶コーヒーに手を伸ばした

突然

窓を突き破り何かが飛び込んでくる


「へへへ、急患ですよセンセ」


飛び込んできた男が切れている腕を振っている


「部屋に入るならドアを使え」


「お説教は後で頼むわ、まず腕つけてくれや

血ぃ流れて死にそう」


白衣の男は目線だけを向け腕を横に振ると

男の傷口から光の糸が出て腕はピタリとくっついた


「さっすが名医様だな」


男は新しい飴玉を口にくわえた


「報告は?支部はどうした?」


「全滅、壊滅、全員アウトー」


「…どの隊が来た?」


「んっんっんー。ヒ・ミ・ツ」


飴玉をカラカラ鳴らしながら笑う


白衣の男は数秒見つめると

「そうか」

とだけ呟いた


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