第4話 【百年後の目覚め】
「あ、流れ星」
藍実は、夜空を仰ぎそう呟いた。
今日は仕事が長引き、すっかりおそくなってしまったが、人気がない夜道を歩くのはそれほど嫌いではなかった。
アトリアを逃がすことに協力する、そう宣言したあの日からもうすぐ十年は経とうとしている。
煌太はその日からこれと言った行動は起こすことなく、日々を過ごしている。まず一番は、波留の信用を取り戻すこと、そう言っていた。
まぁそれもそうか。願い主の縛りで生きている自分たちは、よりその縛りが強くなることを恐れている。縛りが強くなっては、アトリアを逃がすことのできる確率も減るだろう。
「はー……あたしがやる気満々でも、煌太がそんなんじゃ調子狂うじゃん」
自分は高校を卒業してから、今の会社に就職した。
地元から少しばかり離れた、都会と田舎の中間、不便でもなれければ便利でもない、そんな街の会社。
やはり、歳はとらないようだ。本来だったら、三十近い年齢のはずだが外見だけは高校生のまま。歳を重ねて綺麗な大人になっていく同級生を想像するたび、幼い自分の容姿が嫌いになっていく。
「あたしももう一回、高校生やり直そうかなーなんて」
ちなみに煌太は高校を卒業すると、また別の高校で高校生をやり直し……そんなことを繰り返している。ウソで固められた書類を、手際よく作成する姿を見るのにも、もう慣れた。むしろ、これからは参考にした方がいいかもしれない。
藍実はアパートの扉のカギを開け、中へ歩みを進める。いつもそうしているように、リモコンで冷房のスイッチを入れた。九月に入ったが、まだ暑い日はつづく。けれど、肌に感じる空気に僅かな秋を感じた。
照明はつけずに、出窓から空を見上げる。
夜空に広がるのは、薄い雲。その隙間からは星々が瞬いていた。
さっき見た流れ星、トリスだったりして。それか、カノかも。
そう考えた。
「んな訳ないか……」
藍実はカーテンを閉めると、ベッドにもたれ掛る。
トリスがアトリアを取り戻しにくる、そう思っていたが、まだ彼女は現れなかった。
もしかして、アトリアのことを見捨てたのだろうか、そう思い煌太に訊ねたこともあったが、彼は「トリスさんは必ずくるよ」と微笑んだだけだった。
それならば早く、その時がきてくれればいいのに。
時間がたてば経つほど、その残酷な光景の想像は膨れ上がる一方だから。
人口星の自分は、トリスへの攻撃を避けることはできないだろう。現に、初めて星の子を消滅させてからというもの、自分は躊躇いもなく星の子を消している。
波留が近くにいればよりその感情は強まるし、離れた場所にいてもその感情自体は体の奥からひしひしと感じる。
信じがたいが……星の子を消すことは楽しい。
「あたし、どーなっちゃうんだろー。まぁなるようにしかならないけど……」
バッグの中に手を入れ、スマートホンを探す。
手に取り、確認すると煌太からのメッセージが入っていた。
[ 明日の夕方、波留くんちに行くんだけど、藍実さんも一緒に行こ ]




