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恋を知って男は強くなる

見ていただきありがとうございます。

初めて出会った時、ローズは今までより明るく活発的な少女だった――――。



僕は小さい頃よくいじめられていた。いじめの原因は名前に合わないこの容姿と拾われた子供だからだ。

僕の名前。アンドレアの意味は強い男、男らしいだ。だけど僕の顔はまさに女のようだった。髪も切ってくれる人がおらずそこそこ長かったので初対面の人に女の子みたいと言われることが多かった。


そんな僕の容姿はすぐ侯爵夫人の耳に入った。侯爵夫人は持病を持っているため子供が産めない体らしい。だから僕の噂を聞いて養子にしようと思ったようだ。

丁度僕には両親はいないし生きるか死ぬかの生活だったので喜んで侯爵夫婦の養子になることにした。


それからは忙しかった。一般知識と魔法、貴族のルールの勉強を必死にした。

朝起きて朝ご飯を食べ勉強し、昼ご飯を食べ勉強し、夜ご飯を食べ勉強し寝るという生活が1年も続いた。本当に僕は頑張ったと思う。過去の自分を褒め称えたい。

養子になり1年経ってからは剣術も習うことになった。剣術を習うことは結構楽しかった。このまま筋肉もつけて男らしくなって女の子にチヤホヤされるということを想像してニヤニヤしながら日々剣術を磨いてきた。

だからバチが当たったのだ。剣術は格段に上手くなった、ただの大人に勝つぐらいは強くなっただろう。しかし、顔は未だに女顔、筋肉もまったくつかず身長も平均より低かった。大人達はまだ成長期が来ていないから仕方ないというが僕と同じ年くらいの男の子はみんな僕より頭2つ分ぐらいはでかい。

それから僕は料理長に頼んでよく牛乳を貰うことにした。


最初に牛乳を貰ってから半年が経った。未だに身長は伸びない。

僕はあるご令嬢の誕生日パーティーとやらに呼ばれた。確かローズブロンシュっていう名前だった気がする。

あと半年すれば学校に行かなければならない。そのために友達を少しでも作ったほうが良いと父様と母様が言ったから僕はしぶしぶこのパーティーに出ることにした。

パーティーは思っていたものと遥かに違っていた、どこもかしこも人、人、人……このままでは人酔いしてしまいそうだ。僕はパーティーが始まってすぐ中庭に行った。

ここではこの容姿も目立たないし、人と関わることが苦手だから終わるまでここにいよう。そう思っていたが神様は僕をひとりぼっちにしてくれなかった。


「おい! 男女(おとこおんな)! ここはお前みたいな奴が来るところじゃねえんだよ!」

「元庶民が!お前なんかゴミでもあさってろ!」

「気持ちわりいんだよ!死ね!!」


大丈夫、慣れている。そう自分に言い聞かせた。どうせあいつらは僕の容姿が可愛いからこんなこと言っているんだ、と必死に思い込ませた。でも6年と少ししか生きていないのだ、さすがの僕でも目がウルウルしてきた。

そんな時女の子が僕の前に立った。

彼女は確かこのパーティーの主人公であるローズブロンシュだ。

どうせこの子も僕の悪口を言うんだ。そう思ってたが実際は違った。


「やめなさい!女の子をいじめちゃだめでしょ!!」

「……えっ?」


耳を疑った。

今まで可愛い顔だ。とか女の子みたい。と言われたことはあるが実際に女の子に間違われたことがない。

本物の女の子に女の子って思われる……とても屈辱的だ。これほど自分の容姿を恨んだのは初めてだった。


「ロ、ローズブロンシュ様! こいつ男なんです!!」

「男のくせに女みたいで気持ち悪いでしょう? こんな男女なんかにパーティーに来る資格なんてない!!」


男達は僕を見て嘲笑った。あぁ、気持ち悪い。声も目もニタリと笑った口元も……人間をここまで気持ち悪いと思ったのは初めてだった。


「うぇっ」


吐き気がして口元を手で抑えた。気持ち悪い、気持ち悪い。早く帰りたい。目が熱い。ポロポロと出た涙は吐き気のせいか、男達のせいなのか分からない。

息がしづらい、だから息を早く沢山吸おうとしてもっと苦しくなる。あぁ、このまま過呼吸になって死ぬのかな? そんな事を考えていたら女の子がゆっくり口を開いた。まるで死刑を宣告する裁判官のようだと当時の僕は思った。


「ねぇ、パーティーに来るための資格ってなぁに?」


可愛らしい声に純粋な目はとても子供らしい。だけどその言葉は大人のような威圧があった。


「そ、それは……」


今まで威勢のよかった男達が口籠る。そんな男達をみてローズブロンシュは天使のようににこっと笑う。


「私には君たちなんかのほうが資格がないと思うよ。」


その1言で彼らは顔を青くして逃げていった。その姿は笑ってしまいそうなぐらい無様で可笑しかった。

そんなことを思っているとローズブロンシュが近寄ってきた。メルティピンク色でカールや編み込みをされた二つ結びはローズブロンシュが動くたびにふわふわと動いてうさぎみたいだ。瞳は薄い紫で夜空の星みたいにキラキラと輝いていて、小さい唇はチェリーのように赤い。

僕は初めて女の子を可愛いと思った。


「ねぇ、大丈夫?」

「え、あ、うん」


こてんと首を傾げた姿はとても可愛らしかった。それに比べて僕は初対面の女の子に女と間違われるわ泣き顔を見られるわ散々だ。


「うそ、大丈夫じゃない。だってこんなに目が赤いもの……あ!そうだ!!」


彼女は何か思いついたようにパァと笑顔になった。そして目を閉じて息を吸う。その姿はまるで絵に書いたように美しい。


「〜♪〜〜♪」


ローズブロンシュは歌を歌った。知らない曲、でも何故か懐かしい感じがした。その歌は生きてていいんだよ、と僕に言っているみたいでさっき止まった涙がまたポロポロと流れた。最悪だ、恥ずかしい。だけど涙は彼女が歌い終わっても流れ続けた。


「どうかな?あんまり人前で歌ったことないんだけど。お母様の前で歌うととても優しい顔をするの、ローズの歌は魔法みたいねって言ってくれて……ってえええ! ど、どうしたの!? もしかして歌、嫌いだった?」


違うよ、とても良い歌だったよ。そう言いたいのに言葉が出ない。彼女は僕が泣き止むまで優しく微笑んで頭を撫でてくれた。


それが僕とローズの出会いだった。


「今日は珍しくハーフアップか、可愛い」

「あれ、前髪切ってる、可愛い」

「あ、くしゃみした、可愛い……しかも見られていないか周りをキョロキョロと見て確認する姿も可愛い、天使」


双眼鏡でいつものローズ観察をしていると隣から溜息が聞こえた。


「よく飽きずに見れますね。というか傍から見ると気持ち悪いですよ、アン」


こいつは俺の唯一の友人ノアだ。銀色の髪に涼し気な水色の瞳は冷たくみられがちだが性格は紳士的で優しいと女子から人気だ。実際は腹黒でドSなのだが……


「俺は気持ち悪くない! ローズが可愛いんだから悪いんだ!!」

「はぁ、そんなに気になるなら話しかければ良いじゃないですか」

「それはダメ!照れすぎて死んじゃう」

「……そう、ですか」


少し様子がおかしい、いつもノアははいはいって聞き流すだけなのにこんなに聞いて来るって……まさか


「なっ! もしかしてお前狙ってるの!? それはダメ!!」

「え、違うんですけど……えーと、まぁそれで良いです。可愛いですしね彼女」


前からライバルが多いと思っていたが、まさかこんな近くにいるとは思わなかった。しかもたった一人の友達だ、少し、いやかなり複雑な気持ちだった。


「まぁ、そういうことですから、早くしないと彼女誰かのものになりますよ。じゃあ僕は用事があるので……」

「え、あぁ。また明日!」


今日からライバルになってしまったノアだけど、大切な友達だ。まぁ彼女を渡す気なんてさらさら無いけど

それから数ヶ月経ったある日、彼女の笑顔がふと消えた。僅かに微笑むことはあってもどれも作り笑いなのだ。それに大好きな歌も歌うことが無くなった。

それからまた2年が経って冬になった。


「またそんな所で泣いているんですか?」

「泣いてない、汗だ」


目から汗は出ませんよ、そう言ってノアは俺の横に座った。

先週彼女の婚約が決まったそうだ。相手はレオ・アレクサンドル。この国の第一王子だ。年は俺達の1つ上で剣術も魔法も勉強もできて優秀と学校でとても有名だ。


「俺、お前に言われて色々しようとした……でも出来なかった。」

「あれは政略結婚です。君が何かやっても多分無理でした。」


ノアが冷静に話す。その言葉は氷のように冷たいが優しさがあることを俺は知っている。こう見えて友達思いなのだ。


「そう、レオ様の弟であるお前が言うならそうなんだろうな」

「あんなやつ、兄なんかじゃない……」


元々冷たい声がさらに冷たさを帯び顔は醜いものを見るかのような顔をした。


「なぁ、俺女顔じゃん。この顔嫌なんだよね、今すぐ手術して顔を整形したいぐらい。でも、今この顔の使い道分かったよ」


俺は次の日ラファエルに頼んで化粧品や女物の服を沢山買ってきてもらった。

女性の特徴を覚え、男にモテる仕草を考えた。


そして3年後完璧な女の子を完成させた。

次回も楽しみにしてくださるとうれしいです!

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