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第十九話 強い女の休み方

騎士団対抗戦が終わって、数日が過ぎた。


 昼下がりの風呂屋には、湯の流れる音と、ほのかな石鹸の香りが漂っている。


「モニカさん、お客様です!」


 入口からミーナの声がした。


 帳簿を閉じて顔を上げると、二人の女性が暖簾をくぐって入ってくるところだった。


 一人は、長い金髪を美しく編み込んだ、背の高い女性。


 もう一人は、赤褐色の髪を揺らした、明るい笑顔の女性だ。


「いらっしゃいませ、アストリッド様、ロザリア様。お待ちしておりました」


「世話になる、モニカ殿」


 第二騎士団長アストリッドは、穏やかに微笑んだ。


 先日の対抗戦では、最後まで堂々たる剣技を見せた人物である。


 今日は鎧ではなく、柔らかなアイボリーの衣装に、深紅の羽織りをまとっていた。華やかな装いになっても、その立ち姿には騎士団長らしい威厳がある。


「こんにちはー! 今日はよろしくお願いします!」


 ロザリアが元気よく頭を下げる。


「こちらこそ。本日はお二人とも、まずはお風呂でゆっくりおくつろぎください。そのあと、お一人ずつ施術をいたします」


「風呂か。楽しみにしていた」


「私もです! 試合のあと、ずっと脚が重くって」


「ロザリア、お前は試合の翌日も走り回っていただろう」


「だって、じっとしてるの苦手なんですもん」


 アストリッドが呆れたように笑う。


 なるほど。元気なのはいいことだけれど、疲れをため込みやすそうな子だ。


「今日はしっかり休んでいってくださいね」


 私は二人を浴室へ案内した。


挿絵(By みてみん)

     ◇


 浴室に入ると、ロザリアが大きく伸びをした。


「わあ……! 団長、見てください! 広いお風呂!」


「ほう。これは立派なものだな」


 木の香りが漂う浴室には、ゆったりとした湯船が設けられていた。


 窓から差し込む午後の日差しが、水面をきらきらと輝かせている。


 身体を洗おうと腰を下ろしたアストリッドに、ロザリアが嬉しそうに声をかけた。


「団長! 背中、流しますよー!」


「ん? いや、自分で洗えるぞ」


「いいじゃないですか! 今日はゆっくり休みに来たんですから!」


「お前は相変わらず世話好きだな」


「へへっ。じゃあ、失礼しまーす!」


 ロザリアは布に石鹸を泡立てると、アストリッドの背中を優しく洗い始めた。


「……団長の背中って、やっぱりすごいですね」


「何がだ?」


「筋肉ですよ! 特に肩から背中にかけて。鎧を着てると分かりにくいですけど、こんなに鍛えられてるんですね」


「長年剣を振っていれば、自然とこうなる」


「いやいや、普通はここまでなりませんって!」


 ロザリアは感心しながら、背中を丁寧に洗っていく。


「それにしても、団長って全然疲れた顔しませんよね。あんな試合のあとでも、普通に稽古してましたし」


「疲れないわけではないぞ」


「えっ、そうなんですか?」


「当たり前だ。私だって人間だからな」


 アストリッドは肩越しに振り返り、苦笑した。


「むしろ、最近は疲れが抜けるまでに少し時間がかかるようになった」


「そうだったんですね……」


「だから、今日はモニカ殿の施術を楽しみにしている」


「ふふっ。じゃあ、しっかりほぐしてもらわないとですね!」


「ああ。お前もだぞ、ロザリア」


「私はまだまだ元気ですよ!」


「試合の翌日、脚が重いとぼやいていたのは誰だったかな?」


「うっ……それは、その……」


「はははっ!」


 アストリッドの笑い声が、浴室に響いた。


「はい、団長! 背中、終わりました!」


「ありがとう。では、今度は私がお前の背中を流そう」


「ええっ!? 団長にそんなことさせられませんよ!」


「遠慮するな。いつも世話になっているからな」


「いやいやいや! 私、団長に背中を流してもらったなんて知られたら、みんなに何を言われるか!」


「何だ、私では不満か?」


「そうじゃないですってば!」


 慌てるロザリアを見て、アストリッドが愉快そうに笑う。


 結局、ロザリアは顔を赤くしながら、アストリッドに背中を洗ってもらうことになった。


「……団長、なんだか恥ずかしいです」


「そうか? 私は昔、先輩にこうしてもらったことがあるぞ」


「そうなんですか?」


「ああ。まだ私が新人だったころにな」


「団長にも新人のころがあったんですねえ」


「お前は私を何だと思っているんだ」


「あははっ!」


 二人の笑い声が、また浴室に響いた。


 騎士団長と部下。


 普段は厳しい訓練を共にする二人も、ここでは気心の知れた女性同士だった。


挿絵(By みてみん)

     ◇


「ああ……これは、いいな」


 湯船に肩まで浸かったアストリッドが、ゆっくりと息を吐いた。


 温かな湯が身体を包み、窓から差し込む午後の日差しが水面を金色に染めている。


「団長、すっごく気持ちいいですね!」


 隣のロザリアは、満面の笑みで両手を伸ばした。


「こんなところがあったなんて、もっと早く来ればよかった!」


「まったくだ」


 アストリッドは湯船の縁に腕を預け、天井を見上げた。


 鎧を脱いで湯に浸かっている姿は、試合場で見せた威厳とは少し違う。


 それでも、背筋の伸びた姿勢や落ち着いた物腰には、長年の鍛錬が染みついている。


「団長って、お風呂でも姿勢がいいですよね」


「そうか?」


「はい。私なんか、もう溶けそうです」


「お前は少し溶けたほうがいいかもしれんな」


「あははっ、ひどーい!」


 二人の笑い声が、浴室に柔らかく響いた。


 やがてロザリアが、ふと思い出したように口を開く。


「そういえば団長。クラウディアさん、本当にすごかったですね」


「ああ」


 アストリッドの表情が、少しだけ真剣になった。


「……見事だった」


 先日の対抗戦。


 第一騎士団と第二騎士団の勝負は、三勝二敗で第一騎士団の勝利に終わった。


 その勝敗を決定づけた一戦が、クラウディアとアストリッドの対決だった。


「あの動き、私、初めて見ました」


「昔のあいつは、ああいう剣を使っていたんだ」


「昔の?」


「ああ。無理に力で押すのではなく、相手の動きを見極め、速さで勝機をつかむ。あれがクラウディア本来の剣だ」


 アストリッドは湯の中で、そっと指を開いた。


「いつの間にか、私の剣を真似ようとしていたらしい」


「団長の剣に憧れる気持ちは、分かりますけどね」


「だが、あいつにはあいつの強さがある」


 その声には、悔しさよりも誇らしさがにじんでいた。


「ようやく、それを思い出したようだ」


 アストリッドは目を細め、湯気の向こうを見つめた。


 その横顔を見て、ロザリアも穏やかに微笑む。


「……団長、嬉しそうですね」


「ああ。嬉しいさ」


 アストリッドは迷わず答えた。


「長い付き合いのある者が、自分の強さを取り戻したんだ。これほど嬉しいことはない」


 その言葉には、かつての後輩を思いやる温かさがあった。


挿絵(By みてみん)


     ◇


 入浴を終えた二人には、施術室で順番に身体を休めてもらうことになった。


「では、ロザリア様から始めますね」


「はーい! お願いします!」


 ロザリアは施術台に横になり、軽く脚を伸ばした。


 私は手を温め、まず足首の動きを確かめる。


「少し動かしますね。痛みがあったら教えてください」


「はい」


 足首をゆっくり曲げ伸ばしする。


 左右で可動域を比べると、左側にわずかな硬さがあった。


 《コンディション》を意識すると、身体の状態が頭の中に浮かんでくる。


【ロザリア】


 左足関節周辺:筋緊張・中度

 左ふくらはぎ:疲労蓄積

 足底部:軽度の負担

 全身状態:概ね良好


 なるほど。


 速い踏み込みや細かな切り返しを何度も繰り返した結果、左脚に負担が集中しているみたい。


「ロザリア様、左足で強く踏み込むことが多いですか?」


「えっ、分かるんですか?」


「はい。右脚よりも、左の足首とふくらはぎが硬くなっています」


「すごい! 私、左で踏み込んで右で蹴り出す動きが多いんです!」


 やっぱり。


「では、左脚を中心にほぐしていきますね」


 私は足裏から、ゆっくりと圧をかけた。


「……あっ」


「痛いですか?」


「いえ、なんか……そこ、すごく効きます」


「少し硬くなっていますね。強さは大丈夫ですか?」


「はい! ちょうどいいです!」


 足底の緊張を確かめながら、かかとから土踏まずへ。


 続いてふくらはぎへと手を移し、筋肉の流れに沿って丁寧にほぐしていく。


「んん……気持ちいい……」


 さっきまで元気いっぱいだったロザリアの声が、だんだん小さくなる。


「いつも、ここまで頑張っているんですね」


「へへ……騎士ですから」


「頑張ることと、休むことは、どちらも大切ですよ」


「……はぁい」


 返事が、ずいぶんと素直になった。


 足首の周囲を仕上げるころには、ロザリアはすっかり力を抜いていた。


「では、もう一度足首を動かしてみてください」


 ロザリアが足を曲げ伸ばしする。


「……あれ?」


 もう一度。


 今度は少し大きく。


「軽い!」


 勢いよく顔を上げた。


「すごいです! さっきまで引っかかる感じがあったのに!」


「動かしやすくなったようですね。ただ、疲労が全部なくなったわけではありませんから、今日は激しい運動を控えてください」


「分かりました!」


 元気な返事。


 でも、この子は油断するとすぐ走り回りそうだ。


「本当に、ですよ?」


「うっ……はい!」


 思わず笑ってしまった。


挿絵(By みてみん)


     ◇


 続いて、アストリッドの施術だ。


「お待たせいたしました」


「いや。ロザリアがずいぶん喜んでいたな」


「少しでも楽になっていただけたなら、何よりです」


 アストリッドは施術台にうつ伏せになると、ゆっくりと息を吐いた。


「では、腰の状態を確認させていただきますね」


「ああ。頼む」


 私は腰にそっと両手を添えた。


 剣を振るうために鍛え上げられた身体。


 けれど、筋肉が強いことと、疲労がないことは別の話だ。


 《コンディション》が、身体の状態を映し出す。


【アストリッド】


 腰部:筋緊張・強

 骨盤周辺:左右差あり

 臀部筋群:疲労蓄積

 股関節周囲:軽度の可動制限

 全身状態:慢性的な疲労傾向


 ……なるほど。


 これは、相当使い込んでいる。


「アストリッド様。普段、重い剣をお使いになりますか?」


「ああ。私の剣は、速さよりも一撃の重さを重視している」


「やはりそうでしたか。腰と骨盤の周囲に、かなり負担がかかっています」


「そうなのか?」


「はい。特に、身体をひねるときに働く筋肉が硬くなっています」


 私は腰の左右を比べながら、少しずつ圧を加えた。


「痛みはありませんか?」


「大丈夫だ。……むしろ、心地よい」


「では、このまま進めますね」


 腰の筋肉をゆっくりとほぐす。


 背骨のすぐ横ではなく、その両側に広がる筋肉を丁寧に。


 続いて骨盤の上縁から、臀部の外側へと手を移す。


「……ふう」


 アストリッドが長く息を吐いた。


「ずいぶんと、力が入っていたのだな」


「はい。普段から無意識に身体を固める癖があるようです」


「戦っている間は、そのほうが安定するからな」


「必要なときに力を入れるのは大切です。でも、必要のないときまで力が入り続けると、疲れが抜けにくくなります」


「なるほど……」


 私は左右の硬さを確かめながら、圧を少しずつ調整した。


 強い筋肉だからといって、力任せに押せばいいわけじゃない。


 大切なのは、相手の身体が受け入れられる強さを見極めること。


 そして、筋肉が緩むのを待つことだ。


「……モニカ殿」


「はい」


「クラウディアにも、こうして施術したのか?」


「はい。クラウディア様の場合は、肩や背中の力みが強くなっていました」


「そうか」


 少しの沈黙。


 やがてアストリッドが、静かに笑った。


「実はな。あいつが私に負け続けていた理由を、私はずっと考えていた」


 私は手を止めずに耳を傾けた。


「技量が足りないわけではない。鍛錬も怠らない。それなのに、以前のような鋭さがなくなっていた」


「……はい」


「私の剣を真似ていたと聞いたときは、少し驚いたよ」


 アストリッドは目を細めた。


「憧れてくれるのは嬉しい。だが、あいつには、私にないものがある」


「速さ、ですね」


「ああ。それも、ただ速いだけではない。相手の呼吸を読み、ほんの一瞬の隙を逃さない。あれは見事な才能だ」


 先日の試合を思い出す。


 クラウディアの動きには、無駄な力がなかった。


 だからこそ、アストリッドの強烈な一撃にも対応できたのだろう。


「強さにも、いろいろな形がありますね」


「まったくだ」


 アストリッドが小さく笑う。


「まさか、後輩として見ていた相手に、ああも鮮やかに負けるとはな」


「悔しかったですか?」


「もちろん」


 即答だった。


 私は少し驚いて、手元から視線を上げる。


 アストリッドは顔を横に向け、楽しそうに笑っていた。


「だが、それ以上に嬉しかった」


 その言葉には、少しの迷いもなかった。


「クラウディアは、自分の剣を取り戻した。私には気づかせてやれなかったことを、モニカ殿が気づかせてくれたのだな」


「私は身体の状態を整えるお手伝いをしただけです。剣を取り戻したのは、クラウディア様ご自身の力ですよ」


「ふふ。そういうことにしておこう」


 私は思わず微笑んだ。


 こういう人だから、騎士団長を任されているのだろう。


 強いだけじゃない。


 他人の成長を喜べる強さを、この人は持っている。


挿絵(By みてみん)


     ◇


「……ああ、楽になった」


 施術が終わると、アストリッドはゆっくりと身体を起こした。


 無理のない範囲で腰を動かし、左右にひねってみる。


「ほう……」


 もう一度。


「先ほどより、動きが滑らかだな」


「腰まわりの緊張が少し和らいだようです。ただ、長年の負担は一度で全部なくなるものではありません。定期的に身体を休めていただくのがいいと思います」


「なるほど。確かに、剣の手入ればかりして、自分の身体の手入れは後回しにしていたな」


「身体も、大切な道具ですから」


「ははっ。その通りだ!」


 アストリッドは豪快に笑った。


 試合場で見たときとは、ずいぶん違う表情だった。


 施術室を出ると、待合室ではロザリアが温かい飲み物を手にしていた。


「団長! どうでした?」


「素晴らしかったぞ。腰が随分と軽い」


「でしょう! 私も脚がすっごく楽になりました!」


「だからといって、今日は走り回るなよ」


「分かってますって!」


 二人の会話を聞きながら、私はお茶を用意した。


「どうぞ。施術のあとは、少しゆっくりなさってください」


「ありがとう、モニカ殿」


 アストリッドは湯気の立つカップを受け取った。


 そして、一口飲んでから、ふと真面目な表情になった。


「ところで、モニカ殿。一つ相談があるのだが」


「はい。何でしょうか?」


「第二騎士団の団員たちにも、ここの施術を受けさせたい」


 私は思わず顔を上げた。


「第二騎士団の皆様に、ですか?」


「ああ。今日、実際に受けて確信した。剣の腕を磨くことも大切だが、身体を整えることも同じくらい重要だ」


 アストリッドは真剣な眼差しで続ける。


「団員の中には、痛みや疲れを抱えたまま訓練を続けている者も多い。本人は大丈夫だと言い張るが、動きに影響が出ていることもある」


「それは、気になりますね」


「だから、定期的に身体を見てもらえないだろうか」


 騎士団全体の身体のケア。


 それは、これまでの個人のお客様とは違う、まとまった依頼だ。


 私は少し考えた。


 予約の調整。


 施術時間の確保。


 複数人を受け入れるための体制。


 課題はいくつもある。


 でも、それ以上に――面白そうだ。


「ありがとうございます。ぜひ、お引き受けしたいです」


「本当か!」


「はい。ただ、一度に大勢の方をお受けすると、通常のお客様の予約にも影響が出ます。人数や日程を相談しながら、無理のない形で始めさせてください」


「もちろんだ。それで構わない」


「まずは何名かの方にお越しいただいて、身体の状態や施術に必要な時間を確認するのがいいと思います」


「うむ。では、こちらで希望者をまとめておこう」


 話が決まると、ロザリアが嬉しそうに身を乗り出した。


「団長! 私、みんなに教えてきます!」


「待て。お前が話すと、騎士団全員が明日押しかけかねん」


「えーっ、そんなことしませんよ!」


「先ほどの走り回らないという約束も、もう忘れていそうだからな」


「あっ!」


 ロザリアが口を押さえる。


 私は思わず吹き出した。


     ◇


 二人を見送ったあと、私は受付に戻って予約帳を開いた。


「モニカさん、すごいですね!」


 ミーナが隣からのぞき込む。


「今度は第二騎士団の人たちも来るんですよね?」


「そうね。まだ人数も日程も決まってないけど」


「でも、騎士団長さんが直々にお願いしてくれたんですよね。なんだかわくわくします!」


「ふふ、私もよ」


 私は新しい予約欄を指でなぞった。


 最初は、潰れかけの風呂屋だった。


 借金を返すことで精一杯で、毎日が手探りだった。


 それが今では、商人や職人、貴族、そして騎士たちまで足を運んでくれる。


 身体を整えることが、一人ひとりの暮らしや仕事を支えている。


 その実感が、少しずつ形になってきた。


「モニカ、これどうするの?」


 リリが予約帳を指さした。


「騎士さんたち、みんな来たら入りきらないよ?」


「そうね。だから、一度に来てもらうんじゃなくて、順番に予約してもらうの」


「ふうん。じゃあ、いつもよりタオルがいっぱい必要になるね」


「そうかもしれないわね」


「だったら、洗濯も増えるなあ」


 ミーナが腕を組む。


「そこは任せてください! 人数が分かれば、準備できますから」


「ありがとう、ミーナ。頼りにしてるわ」


 私は二人に微笑んだ。


 お客様が増えるなら、施術する側の体制も考えなくてはいけない。


 フィオナにも少しずつ経験を積んでもらいたいし、将来は施術師を増やすことだってできるかもしれない。


 ただ、人を増やすだけでは駄目だ。


 誰が担当しても、お客様が安心して身体を預けられる場所にしたい。


 私は予約帳の余白に、新しい一文を書き込んだ。


『第二騎士団――定期施術の相談』


 小さな風呂屋の仕事が、また一つ広がろうとしている。


 強い人ほど、自分の弱さや疲れを後回しにしてしまうことがある。


 でも、休むことは弱さじゃない。


 明日も元気に働くために、必要なことだ。


 私は帳簿を閉じ、窓から差し込む午後の光を見上げた。


 さて。


 次は、騎士団の皆さんが安心して身体を休められる仕組みを考えなくちゃ。


 やることが、また増えた。


 ――もちろん、私はそういうのが大好きだ。

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