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第十話 美魔女のご指名

「モニカ、明日の五の鐘に、施術の予約を一件お願いできるか?」

夕方、風呂屋を訪ねてきたカイルがそう切り出した。

モニカは帳簿から顔を上げた。

「はい。どなたかご紹介いただけるんですか?」

「ああ。ヴィオラ・ベルンシュタインという方なんだが……君も名前くらいは知っているだろう?」

「……ヴィオラ・ベルンシュタイン様、ですか?」

モニカは小さく首を傾げた。

(ええと……どなたかしら?)

「ベルンシュタイン商会の会頭だよ」

「まあ。商会の会頭様なんですね」

「……まさか、本当に知らないのか?」

カイルが意外そうに目を丸くする。

「申し訳ありません。あまり詳しくなくて……」

「この町では知らない者がいないくらいの有名人なんだが」

(そんなに有名な人なの!?)

モニカは内心で驚いた。

前世でも、大企業の名前は知っていても、その経営者までは知らないことがあった。ましてや、ここは異世界だ。

知らない人がいても仕方がない。

……とはいえ、カイルの反応を見る限り、相当に有名な人物らしい。

「交易から織物、香料まで幅広く扱う大商会だ。ヴィオラ様は、その商会を一代で大きくした方でね」

「まあ、それは素晴らしいですね。お若い頃から商売を?」

「ああ。かなり苦労もされたそうだ」

「それでしたら、きっとお身体にもお疲れが溜まっていらっしゃるでしょうね」

カイルは一瞬、きょとんとした。

「……そっちが気になるのか?」

「もちろんです。大切なお客様ですから」

モニカは微笑んだ。

「それに、お忙しい方でしたら、ゆっくり休んでいただける時間も貴重でしょうし」

カイルは小さく笑った。

「なるほど。確かに君らしいな」

「ただ、少し気難しい方だ。気に入らないことは、はっきり口にされる」

「承知しました。ご期待に添えるよう、しっかり準備いたします」

モニカは帳簿を開いた。

「明日の五の鐘ですね。予約をお取りしておきます」

「ああ。よろしく頼む」

カイルを見送ったあと、モニカは帳簿に記した名前を見つめた。

ヴィオラ・ベルンシュタイン。

(大商会の会頭様かあ。どんな方なのかしら)

少し緊張する。

けれど、それ以上に楽しみだった。

(お仕事を頑張っている女性って、つい応援したくなっちゃうのよね)

明日は、しっかり腕を振るおう。

モニカはそう決めて、翌日の準備に取りかかった。

翌日、五の鐘が鳴って間もなく。

風呂屋の前に、一台の立派な馬車が止まった。

黒く磨き上げられた車体。

扉には金色の紋章。

御者が恭しく扉を開く。

そして、一人の女性が姿を現した。

艶やかな深紅の髪。

透き通るような白い肌。

切れ長の金色の瞳。

身体の曲線を美しく引き立てる、黒とワインレッドのドレス。

成熟した女性ならではの色香と、堂々たる気品。

三十代後半ほどに見えるが、その美しさは年齢というものを感じさせない。

(……うわあ)

出迎えたモニカは、思わず心の中で声を上げた。

(何、この美魔女!)


挿絵(By みてみん)


前世でも美しい女性はたくさん見てきた。

けれど、この人は別格だ。

顔立ちが整っているだけではない。

自分の魅力を知り尽くし、どう振る舞えば人の目を引くのかを熟知している。

(しかも、あの立ち姿。相当、自分を磨いてきた人ね)

モニカはすぐに接客用の笑顔を浮かべた。

「いらっしゃいませ。ヴィオラ・ベルンシュタイン様ですね」

女性がモニカを見た。

「ええ。あなたがモニカさん?」

「はい。モニカと申します。本日はお越しいただき、ありがとうございます」

モニカは丁寧に一礼した。

ヴィオラは彼女を上から下まで眺めた。

豊かな胸元。

柔らかな笑顔。

清潔に整えられた服装。

そして、落ち着いた眼差し。

「……ずいぶん若いのね」

「恐れ入ります」

「カイルから腕のいい方がいると聞いて来たのだけれど……」

ヴィオラは風呂屋を見上げた。

「正直、少し驚いたわ」

「まだ改装の途中でして、お見苦しいところもあるかと思います」

「そうね。建物はずいぶん古いわ」

「はい。ですが、お客様に気持ちよくお過ごしいただけるよう、清掃と手入れには気を配っております」

ヴィオラは店内に視線を向けた。

磨かれた床。

整然と並んだ桶。

清潔な布。

窓から差し込む柔らかな光。

「……なるほど」

ヴィオラの口元が、わずかに緩んだ。

「古いからといって、汚いわけではないのね」

「ありがとうございます」

「ふふっ。気に入ったわ」

モニカは微笑み、奥へ案内した。

施術前の聞き取りが始まった。

「本日は、どのあたりがお疲れでしょうか?」

「肩と首ね。それから背中。最近は寝ても疲れが取れないの」

「お仕事では、長時間座っていらっしゃることが多いですか?」

「そうね。書類仕事も多いし、馬車での移動も頻繁にあるわ」

「なるほど。眠りはいかがでしょう?」

「浅いわね。夜中に何度も目が覚めるの」

モニカは頷いた。

(やっぱり。典型的な働きすぎの身体ね)

大商会の会頭。

数え切れないほどの取引を抱え、部下を率い、常に決断を求められる立場。

その重圧は、想像に難くない。

「それでは本日は、首と肩を中心に、背中から腰にかけても丁寧にほぐしていきますね」

「お任せするわ」

「途中で痛みや違和感がありましたら、遠慮なくお申し付けください」

ヴィオラは顎に指先を添え、興味深そうにモニカを眺めた。

「ずいぶん丁寧なのね」

「お客様のお身体をお預かりしますので」

「……ふうん」

ヴィオラの金色の瞳に、少しだけ興味の色が浮かんだ。

施術室。

ヴィオラが施術台にうつ伏せになる。

モニカは両手を温め、そっと背中に触れた。

(……これは)

思わず眉を上げそうになった。

肩甲骨の周囲は硬く、首から背中にかけて強い張りがある。

腰にも疲労が溜まっているようだ。

(予想以上ね。これは、かなりお疲れだわ)

モニカは呼吸に合わせて、ゆっくりと圧を加えた。

「……ん」

ヴィオラが小さく声を漏らす。

「痛みますか?」

「いいえ。ちょうどいいわ」

「ありがとうございます」

モニカの指が、肩甲骨の内側を丁寧に捉える。

強く押し込むのではない。

筋肉の走りを確かめ、緊張している部分を少しずつ緩めていく。

「……あら?」

ヴィオラの声が変わった。

「どうされました?」

「そこ。いつも重たいところだわ」

「こちらですね。肩だけでなく、背中の筋肉もかなり張っています」

「どうしてわかるの?」

「触れたときの硬さや、動き方で、ある程度はわかるんです」

モニカは微笑んだ。

「お身体は、いろいろなことを教えてくださいますから」

「……面白い言い方をするのね」

ヴィオラは小さく笑った。

しばらくすると、口数が減っていった。

最初はあれこれ質問していたのに、今では時折、気持ちよさそうな息を漏らすだけ。

モニカはその変化を感じ取り、施術のリズムを少し緩めた。


挿絵(By みてみん)


(うん。だいぶ力が抜けてきた)

「ヴィオラ様」

「……なあに?」

「このあと、少し特別な施術をしてもよろしいでしょうか?」

「特別?」

「はい。治癒術を組み合わせた施術です」

ヴィオラが顔を上げた。

「あなた、治癒術まで使えるの?」

「はい。ただ、何でも治せるわけではありません。身体が本来持っている回復する力を、少し後押しするものです」

「……面白いわね」

ヴィオラは再び顔を伏せた。

「いいわ。お願いするわ」

「ありがとうございます。では、失礼します」

モニカは静かに息を整えた。

(《コンディション》)

淡い文字が視界に浮かぶ。

筋肉の緊張。

疲労の蓄積。

回復力の低下。

いくつかの状態を確認し、モニカはそっと両手を置いた。

(無理に治そうとするんじゃない。この人の身体が、回復しやすい状態になるように……)

指先に、淡い金色の光が灯った。

「……っ!」

ヴィオラが息を呑む。

柔らかな光が、モニカの手のひらから広がっていく。

眩しいほどではない。

けれど、確かに光っている。

その光に包まれた部分から、じんわりと温かさが広がった。

「……なに、これ……」

ヴィオラの声が、いつになく小さい。

「熱くありませんか?」

「いいえ……むしろ、気持ちいい……」

モニカは呼吸を整えながら、手のひらに意識を集中させた。

ふっと光が強まる。

(……あ、少し強すぎた)

慌てずに力を緩めると、光は再び柔らかな輝きに戻った。

(まだ細かな加減は難しいわね。でも、前よりはずっと安定してきた)

以前は、光を灯すだけでも神経を使っていた。

今では、落ち着いていれば、ある程度は保てる。

とはいえ、気を抜けば強さが変わってしまうし、長く使い続けるのはまだ難しい。

(焦らず、少しずつ。無理は禁物ね)

モニカは自分の手の感覚を確かめながら、施術を続けた。

治癒術は便利だが、使えば何でも解決するものではない。

だからこそ、ほぐしで筋肉の緊張を和らげ、身体の状態を整えてから使う。

前世の技術と、この世界で得た力。

二つを組み合わせた、モニカならではの施術だった。

「……はあぁ……」

ヴィオラの身体から、深い息が漏れた。

先ほどまで硬くなっていた肩が、少しずつ柔らかくなる。

モニカは光を弱め、最後に背中をゆっくりと撫でた。

「はい。お疲れさまでした」

返事がない。

「……ヴィオラ様?」

すう。

すう。

規則正しい寝息が聞こえてきた。

モニカは思わず微笑む。

(あら。眠っちゃった)

そっと薄い掛け布をかけ、しばらく休んでもらうことにした。

「……ん……」

ヴィオラが目を開けたのは、それから少し経ってからだった。

見慣れない天井。

木の香り。

柔らかな布の感触。

「……あら?」

ゆっくりと身体を起こす。

首を動かす。

肩を回す。

「……え?」

もう一度、肩を回した。

「……なに、これ」

いつもなら、腕を上げるだけで重たかった肩。

それが、驚くほど軽い。

背中の張りも、ずいぶん楽になっている。

もちろん、長年の疲れがすべて消えたわけではない。

それでも、今朝までとは明らかに違った。

「お目覚めですか?」

声のする方を見ると、モニカがお茶を運んできたところだった。

「施術後ですので、少し水分を取ってくださいね」

ヴィオラは差し出されたカップを受け取った。

そして、じっとモニカを見つめる。

「……あなた」

「はい?」

「私を、眠らせたわね?」

「えっ?」

「私、人前で眠ることなんて、滅多にないのよ」

「それは……よほどお疲れだったんですね」

「違うわ」

ヴィオラはカップを置いた。

「そうじゃないの」

その金色の瞳が、楽しそうに細められる。

「あなたの腕が、想像以上だったってことよ」

モニカは嬉しそうに笑った。

「ありがとうございます!」

「しかも、あの光……。治癒術を使う人は知っているけれど、ほぐしと組み合わせるなんて、初めて見たわ」

「まだ工夫している途中なんです。もっと良くできると思っています」

「……まだ?」

ヴィオラは目を丸くした。

そして。

「ふっ……ふふふ……」

突然、笑い始めた。

「アハハハハ!」

「えっ、どうされました?」

「カイルったら! 何が『ちょっと腕のいいほぐし屋がいる』よ!」

ヴィオラは目尻に浮かんだ涙を指で拭った。

「ちょっとどころじゃないじゃない!」

「それで、おいくら?」

施術室から戻ったヴィオラが尋ねた。

モニカが料金を告げると、ヴィオラはぴたりと動きを止めた。

「……それだけ?」

「はい。本日の料金です」

「光る施術も含めて?」

「ええ。今日は最初からその内容でお受けしていますので」

ヴィオラはしばらくモニカを見つめていた。

やがて、ゆっくりと笑みを浮かべる。

「ねえ、モニカ」

「はい?」

「あなた、私のものにならない?」

「……はい?」

あまりにも唐突な言葉に、モニカは目を瞬かせた。

「私の専属になってちょうだい。報酬は今の何倍でも出すわ。住む場所も用意するし、必要なものは何でも揃えてあげる」

「専属、でございますか?」

「ええ。あなたは私の身体を癒やす。私はあなたに不自由のない暮らしを約束する。悪い話じゃないでしょう?」

ヴィオラは艶やかに微笑んだ。

まるで、気に入った宝石を買い求めるかのように。

モニカは少し考えた。

そして、にっこり笑った。

「大変光栄なお申し出です。ですが、今はこの店を育てることに力を注ぎたいと考えております」

「……あら?」

「申し訳ございません。ただ、ヴィオラ様にまたお越しいただけるのでしたら、これほど嬉しいことはありません」

ヴィオラは黙った。

モニカは続ける。

「古いところを直したり、お客様に喜んでいただけるサービスを考えたり。まだまだやりたいことがたくさんあるんです」

「……ふうん」

ヴィオラは腕を組み、面白そうに片眉を上げた。

「つまり、お金だけでは動かないってこと?」

「お金は大事ですよ。とても」

モニカは真顔で答えた。

「でも、自分で商売する楽しさも捨てられません」

一瞬の沈黙。

そしてヴィオラは、また笑った。

「アハハハ! いいわ! 実にいい!」

「えっ?」

「あなた、気に入ったわ!」

ヴィオラは立ち上がると、モニカの手を取った。

「ねえ、今度は私と商売の話をしない?」

「商売ですか?」

「ええ。あなたの腕には、それだけの価値があると思うの。でも、今のままじゃ、知っている人が少なすぎる」

「それは、まあ……始めたばかりですから」

「そうでしょうね」

ヴィオラは目を輝かせた。

「だったら、まずは私が客を連れてきてあげる」

「お客様を?」

「ええ。ただし、無条件で大勢を紹介するわけじゃないわ」

ヴィオラは指を二本立てた。

「三日後、二人。私が長年付き合っている、大切な友人よ」

「お二人ですね」

「その二人にも、今日の私と同じくらい満足してもらえたら……」

ヴィオラはモニカの顔を覗き込んだ。

「あなたに、もっと大きな仕事を紹介してあげる」

モニカの瞳が輝いた。

「本当ですか?」

「もちろん。ただし、私の紹介である以上、下手な仕事は許さないわよ?」

「ご安心ください」

モニカは胸を張った。

「どなたがいらしても、精いっぱい施術します」

ヴィオラは満足そうに頷いた。

「ふふっ。頼もしいわね」

そして、いたずらっぽく付け加える。

「でも、私の予約枠はちゃんと残しておいてね?」

「もちろんです。ご希望のお日にちは?」

「……あなた、本当に商売熱心ね」

「お客様ですから」

「もう! 少しくらい特別扱いしてくれてもいいじゃない!」

「それでしたら、次回は少し長めのコースをご案内できますよ」

「そういう意味じゃないのよ!」

二人の笑い声が、風呂屋に響いた。

帰り際。

馬車の前で待っていたカイルが、ヴィオラに声をかけた。

「どうでしたか?」

ヴィオラは涼しい顔で答えた。

「最悪ね」

「……え?」

「とんでもない女を紹介してくれたものだわ」

カイルの表情が曇る。

「お気に召しませんでしたか?」

「気に入らないどころか……」

ヴィオラはカイルに顔を近づけた。

「私、あの子を専属に雇おうとしたの」

「なっ……!」

「でも、振られちゃった」

ヴィオラは肩をすくめる。

「自分のお店が大事なんですって」

カイルはほっとしたように息を吐いた。

その様子を見て、ヴィオラの唇が妖しく吊り上がる。

「……あら?」

「何でしょう?」

「あなた、ずいぶん安心した顔をするのね」

「そんなことは……」

「ふうん?」

ヴィオラはにやにやと笑った。

「カイル。あなた、あの子のこと……」

「違います!」

「まだ何も言ってないわよ?」

「……っ!」

ヴィオラは楽しそうに笑った。

「あらあら。これはますます面白くなってきたわね」

馬車に乗り込む直前、ヴィオラは振り返った。

「カイル」

「はい」

「いい子を紹介してくれて、ありがとう」

その声は、先ほどまでのからかうようなものとは少し違っていた。

「久しぶりに、心から楽しい時間だったわ」

カイルは微笑んだ。

「それなら、よかったです」

「ええ。それと……」

ヴィオラは艶やかな笑みを浮かべる。

「あの子、あなたにはもったいないわ。私がいただいてもよろしくて?」

「だから、何の話ですか!」

ヴィオラの高らかな笑い声を残して、馬車は走り去っていった。

その夜。

ベルンシュタイン商会の執務室。

ヴィオラは机に向かい、二通の手紙を書いていた。

一通を書き終え、封をする。

続いて、もう一通。

傍らに控えていた女性の秘書が、不思議そうに尋ねた。

「会頭。ずいぶんご機嫌ですね」

「あら、わかる?」

「ええ。今日はお戻りになってから、ずっと楽しそうです」

「ふふっ。いいものを見つけたのよ」

ヴィオラはペンを置いた。

「腕のいい職人?」

「ええ。とびきりのね」

「では、商会で雇われるのですか?」

「それがね、断られちゃったの」

秘書は目を丸くした。

「会頭のお誘いを?」

「そうなのよ。生意気でしょう?」

そう言いながら、ヴィオラは嬉しそうだった。

「でも、腕は確かなのですか?」

「少なくとも、私はもう一度通いたいと思ったわ」

ヴィオラは封筒を二通、秘書に差し出した。

「明日の朝、これを届けてちょうだい」

秘書は宛名を確認した。

そして、驚いたように顔を上げる。

「……このお二方に、ですか?」

「ええ」

「ですが、お二方とも大変お忙しい方ですし……」

「だからこそよ」

ヴィオラは椅子に深く腰掛けた。

「私が気に入っただけなら、ただの贔屓かもしれない。でも、あの二人まで気に入ったら……」

金色の瞳が、愉快そうに輝く。

「ふふっ。面白い商売になりそうじゃない?」

秘書は小さくため息をついた。

「会頭がそういう顔をなさるときは、いつも大変なことになりますね」

「失礼ね。いいこともたくさんあるでしょう?」

「商会にとっては、ですが」

「あら、今回はあの子にとっても、よ」

ヴィオラは窓の外を眺めた。

小さな風呂屋。

古びた建物。

そして、あの不思議な光を宿した手。

何より、自分の誘いを笑顔で断った、あの若い女。

「……モニカ、だったわね」

ヴィオラは唇に指を当てた。

「次は、どんな顔を見せてくれるのかしら」

その笑みは、まるで新しい玩具を見つけた少女のようだった。

一方、そのころ。

当のモニカは、風呂屋の帳簿を広げていた。

「三日後に二名追加……っと」

予約を書き込みながら、嬉しそうに頬を緩める。

「ふふっ。新しいお客様、楽しみだわ」

そして、ふと思い出す。

「そういえば、ヴィオラ様のお友達って、どんな方なのかしら?」

まさか、その二人との出会いが、さらに大きな仕事につながることになるとは。

このときのモニカは、まだ知らなかった。

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