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肉屋のせがれ、実家の手伝いで毎朝モンスターを狩っていただけなのに、いつの間にか人類最強になっていた  作者: 犬斗
第二章

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第20話 新生活と新たな出会い

 翌日の早朝、俺は気持ちよく目を覚ました。


「よっしゃ! やるか!」


 昨日は川でずぶ濡れになったけど、すぐに風呂に入ったため体調はすこぶる万全だ。

 というか、俺は狩りを始めてから風邪を引いたことがない。

 もし風邪を引いてしまうと、狩りに行けなくなってしまうからだ。


「健康の秘訣は風呂だな。うんうん」


 さっそく庭で薪を割る。

 早朝の狩りがなくなった分、俺は薪割りで身体を動かしていた。

 もちろん薪は風呂で使うから一石二鳥だ。


「おはよう、アステル君!」

「おはようございます!」

「今日もいいかい?」

「もちろんです! 好きなだけ持っていってください!」


 近所のおじさんが薪を取りにきた。


「しかし、毎日精が出るねえ」

「朝の軽い準備運動です。はは」

「軽い……準備運動? これが?」


 おじさんが山積みされた薪を見上げていた。


「じゃあ、アステル君。いただいていくね」

「はい! どうぞ!」

「君が引っ越してきてくれて、本当に助かってるよ」

「こちらこそです! ありがとうございます!」


 薪割りを始めた頃、近所の人がうちを訪れた。

 話を聞くと薪を売ってほしいとのことだった。

 こんなもので金なんかもらえないので無料で渡していたら、近所の人たちが金を出し合い、元となる丸太を買ってきてくれるようになった。


 近所の人は薪割りの手間が省け、俺は薪割りで運動できる。

 さらに俺の分の薪までもらえるので助かっていた。


「よし、風呂に入るか」


 軽く千本ほど薪を割って、朝風呂にゆっくりと浸かる。

 そして俺はギルドへ顔を出した。


 ***


「さてさて、今日のクエストは――」

「アステルさん!」

「ん? あ、オリーフィアさん!」


 解体師のオリーフィアさんが声をかけてきた。

 今日も金髪を三つ編みにして、左肩から胸元へ下げている。

 昨日は全く気にならなかったのだが、改めて見るとめちゃくちゃ美人な女性だった。

 しかも若い。

 年齢は俺と同じくらいだろうか?


「昨日の黒森茸(ローリュ)はありがとうございました」

「いえいえ、食べましたか?」

「はい! 黒森茸(ローリュ)のパスタにしました! とても美味しかったです〜」


 頬を両手で押さえ、恍惚の表情を浮かべるオリーフィアさん。

 黒森茸(ローリュ)の味を思い出しているようだ。

 というか、昨日は食堂でカレーを食べてたはずだけど、やっぱり帰ってパスタも食べたようだ。

 まあ解体師は重労働だし、たくさん食べたほうがいいのは間違いない。


「そうだ。私、十八歳なんです。だから普通に話してほしいなあ」

「え? 俺と同い年⁉︎」

「そうよ。ギルド初のSランクが同い年で驚いたんだから。オリーフィアって呼んで。私もアステルって呼んでいい?」

「もちろんさ。王都に来てから知り合う人はみんな年上だし、友達がいなくてちょっと寂しかったんだ。はは」

「友達……」

「改めてよろしく。オリーフィア」

「……清々しいほど鈍感なのね」

「ん? 何が?」

「なんでもない。アステルは今日もクエストへ行くの?」

「うん。特にやることもなくて暇だからさ。はは」

「暇だから……。暇でクエスト行く人初めて見たよ」

「い、いやあ、ははは……」


 クエストの頻度を落とそうと思ったのだが、やっぱり習慣というものは恐ろしいもので、狩猟に行かないと落ち着かない。

 まあ金を稼ぐことは悪いことではないので、行けるうちに行っておく。


「ねえ、アステル。狩猟クエストへ行くなら、解体師は私を指名してくれる?」

「構わないよ。じゃあ今日は狩猟へ行こうかな」

「やったね。昨日の赤斑蛇竜(ラヌトゥス)なんて、凄く解体しやすくて驚いたもん。アステルは獲物を綺麗に狩猟するんだよね」

「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ」


 実家では綺麗に狩猟しないと親父に怒られたものだ。

 あの経験が冒険者になって生きてくるとは思わなかった。

 親父に感謝だ。


 俺たちは話しながらクエストボードへ移動した。


「オリーフィアは冒険者にならないの?」

「そうね。私は狩猟より解体のほうが得意なの。実家が肉屋だからね」

「え! うちも実家は肉屋!」

「うそぉぉ!」


 まさか同い年で実家も同じ肉屋なんて、凄い偶然だ。

 お互いの家のことを話した。


「へえ、アステルは実家の手伝いで狩猟を覚えたのね」

「うん。解体もやらされたから、一通りはできるよ」

「凄いね。私は解体だけ。でもそのおかげで、この年齢でAランクの解体師になれたけどね」

「その歳でAランク解体師なんて本当に凄いよ!」


 解体師にも冒険者と同じようにランクがある。

 試験は冒険者と違い体力面ではなく、膨大なモンスターの知識と高い解体技術が必要だという。


「あの……、十八歳でSランクを取った人に言われても嬉しくないんですけど……」

「そ、それは……。はは、ははは」


 とりあえず、得意の笑って誤魔化しだ。


「オホン! さて、クエストに行こうかな」


 俺はクエストを選んで出発した。 


 ***


 今日はBランクモンスターの森牙竜(カダレクス)を狩猟した。

 中型竜類の二足歩行モンスターだ。


 オリーフィアと一緒に行ったため、行きも帰りもオリーフィアの荷獣車に乗せてもらった。

 徒歩よりは断然早いので、俺たちは夕方前にギルドへ帰還することができた。


「ね、ねえ。アステルはいつもああなの?」

「え? 何が?」

「一人で行って、罠も使わず、瞬殺しちゃうの?」

「えーと、ま、まあね。はは」

「森牙竜(カダレクス)なんて、慣れてないと上級パーティーでも苦労するっていうのに……。ソロで瞬殺って……。しかも解体前に担いで荷獣車まで運んじゃうし……」


 オリーフィアが唖然とした表情で俺を見つめていた。


「う、うちの肉屋は朝獲った肉をすぐに販売していたから、時間との勝負だったんだよ」

「そ、それにしたって……。あ、私そろそろ行かなきゃ」

「解体頑張って。今日はありがとう」

「ううん、こちらこそ。またね、アステル」


 オリーフィアは、これから森牙竜(カダレクス)を解体するそうだ。

 解体場へ向かっていった。


 俺はクエスト報酬を受け取り、ひとまず食堂へ移動した。

 夕飯を食べて帰るつもりだ。


 ◇◇◇


 二人の男女が繁華街の街道を歩いている。

 進む方向は冒険者ギルドだ。


「相手の顔は覚えているんですか?」

「はい。もちろんです」


 二人は鎧を着用しており、腰には剣を吊るしている。

 多くの冒険者は、モンスターの素材で作った装備を使用することが多い。

 だが、この二人の鎧は金属製で、同じ色、同じ形状の揃いの鎧だった。


 街行く人が二人に視線を向ける。

 子供たちは羨望の眼差しで手を振っていた。


「その人、ここにいるんですか?」

「はい。冒険者ギルドって言ってましたから」


 二人がギルドに入ると、一斉に注目を浴びた。


「お、おい、騎士団が来たぞ?」

「しかも、あの白銀の鎧は……第一師団じゃねーか」

「エリート騎士が何しに来たんだ?」


 二人の騎士は、とある冒険者を探していた。


 ◇◇◇

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― 新着の感想 ―
おお、キシの恩返し。 押しかけ女房になってくれるのかな?
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