ショールで隠せ!必死の隠蔽工作
本日は2話更新の「2話目」です!
前のお話をまだ読まれていない方は、ぜひ1話前からお楽しみください!
これは悪い夢だ。きっとそうだ。
昨晩、別れ際にルクロから
「僕の可愛くて愛しい天使、また明日」
と熱烈に囁かれながらおでこに口づけされたせいで、彼女の脳が妙にリアルな悪夢を作り出しているに違いない。
リコナは自分の頬を、容赦なく両手でギュッとつねってみた。
痛い。涙が出るほど痛い。
そして視界は一向に切り替わらず、目が覚めた時に仰向けになるとふわっと押し返されるようだった小さな羽の感触も、今踏みしめているふわふわのカーペットの感覚も、すべての感覚が、はっきりと事実であると主張していた。
(どうしよう……。どうして人間であるはずの私の背中から、こんなファンタジーなものが生えてくるの!? 確かにルクロは毎回『天使』って言ってくれるけど、あれは恋に盲目なルクロの比喩表現でしょう? 呪い!? 誰かの嫌がらせ? それとも新種の奇病?)
昔、興味本位で読んだお城の図書館で読んだ医学書にも、こんな病気は一行も載っていなかった。
歴史や生物の知識も、この街の常識も、すべてを置き去りにした超常現象が、今まさに自分の身体で起きている。
リコナは混乱の極みに達しながらも、涙目で必死に頭を回転させ始めた。
とにかく、今はこの『異常』を家族にも、誰にも特にルクロには絶対に!見つからずに隠さなければならない。
もし見つかったら、教会に連れて行かれて不吉な存在として異端尋問されるか、あるいは珍獣として見世物にされてしまうかもしれない。
何しろ、今日はこの後、ルクロがいつものようにここにお茶会のために来る予定になっているのだ。
いつも通りに「おはよう、僕の天使」と完璧な貴公子の微笑みを浮かべる彼に、『本物の羽が生えちゃった背中』を見せるわけにはいかない。『冗談が現実になりました』なんて笑えない。
「とにかく、今日の洋服! 使用人が来る前に厚手のドレスを着て、上からショールでも羽織って、無理やり潰して隠さなきゃっ……!」
リコナは、パニックでガタガタと震える手でクローゼットへと手を伸ばした。
しかし、彼女はまだ気づいていなかった。
その翼が、かつてこの世界で『神の愛し子』と称される『天使族』の特徴であり、リコナの家系は数百年前に完全に絶滅したはずの末裔であった事実を。
そして、ショールでどれだけ必死に押し潰そうとも、感情が高ぶるたびに羽が自己主張して『パタパタ』と勝手に動いてしまうという仕様になっていることに。
なにより、それを見た婚約者が、引くどころか天を仰いで大歓喜する未来が待っていることを——。
リコナの、絶対に隠し通したい「天使隠蔽生活?」の幕が、いま最悪の形で上がろうとしていた。
本日は2話更新でした!
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次回もお楽しみに!




