奴隷市でのルール
「以前お話した奴隷市についてなのですが」
「ええ、待ってました」
「本来であればごく一部のお客様のみに存在をお知らせし、売買や、その他娯楽を楽しんでもらうための施設でございます。のでくれぐれも他言無用に願います。加えて秘密保持のために販売のための奴隷以外の連れ込みは禁止とさせていただいております」
てっきりヴァルフを外に出したのは、奴隷に聞かせる話ではないからだと思っていたが、外部に漏らさないための処置でもあった。たしかあっちの高級レストランでも、店の質を守るために入る客を選ぶなんてこともあったが、それと似たようなことだろう。とはいえ高級レストランに失礼なので、このたとえをこれ以上深堀するのはやめておこう。
「そして、この施設では奴隷だけでなく、隷属用の道具、奴隷に持たせる武器、また・・・」
会長はソファから立ち上がると僕の真横に腰かけた。そして耳元に口を近づけると、ゆっくりとねちっこくささやいた。
「夜を盛り上げるための品々もございますよ」
おじさんの耳打ちがこれほどまでに気持ち悪いものだとは思わず、僕は思わずぶるりと身を震わせた。しかし会長はそれを違った意味でとらえたようで、さらに高く口角を上げた。
「ツレヒト様はまだお若い。本来であれば娼館などを利用すべきなのでしょうが、世界を股にかけてご活躍されるお方、一つの街に長くとどまることは出来ますまい。そうなると必然的に」
「あああ、もういいです。大丈夫です。会長さんのご厚意は十分に伝わりましたから~。あ、そうだ僕からも一つお尋ねしてもいいですか?」
これ以上この話題を続けるには僕の精神は軟弱すぎた。別に下ネタが苦手というわけではないが、何分経験がないので耐性がないのだ。
「私に答えられることなら何なりとお尋ねください」
「その市場に連れ込んではいけないのはあくまで売買目的以外の奴隷ですよね」
「ええ、そうですが」
「つまりは獣人奴隷は連れ込んではいけない。しかし人間の同行者なら連れて行っても構いませんか?」
「・・・そうですね。貴族の方の中には執事やメイドを伴う者のいるので、その点は問題ございませんが、もしかしてツレヒト様には従者がいらっしゃるのですか?」
「ええ、一応」
正直僕一人では心もとないし、一人でリースの母親を捜索するのは効率が悪い、そのために人手は多い方がいい
「ですが、一応本人に確認を取らなければいけないので、すぐにとはいきませんが、連れて行ってもよろしいでしょうか?」
「ええ、その方もさぞ優秀な方なのでしょうからぜひお連れください」
「ありがとうございます」
これで言質は取れた。あとはチセの許可を取るだけだ
「とはいえ、先ほどツレヒト様がおっしゃった通りすぐにとはいきませんでしょう。なので今日のところは依頼の報酬だけお受け取りください」
「ええ、そうさせていただきます」
「で、そのあとでよろしければなのですが、ここでなにか買い物をしていってくださいませ。ツレヒト様だけに特別で割引価格で提供させていただきます」
相手の意図としては、報酬として払ったお金をここで消費させてマイナスを極力小さくしたいのだろう。しかし今回のことでこの会長の人柄はあまり好きではないが、このギルドが提供する製品はそれなりに有用であることは僕も重々理解した。だから少しくらいなら会長の口車に乗ってしまうのも悪くはないだろう。
「ありがとうございます。もし必要なものがあったら購入させていただきます」
こうして緊張しながらも会長との報酬の受け渡しは一応何事もなく終わった。




