メンバー選抜と報酬の話
いろいろとあり騒がしくはあったものの朝食を済ませた僕らは改めて、今日やることについて話し合った。
「ひとまずご主人様は、例の大イノシシの報酬を受け取りにギルドに行く、ヴァルフさんはその護衛といったところまではよいとして、あとの面々はどうしましょうか」
「待てよ、ギルドの中に入るってんなら私も行く」
リースはすぐさま声をあげた。確かにリースがいれば内部の構造について把握するのが容易になる、とはいえ彼女を連れていけない理由に関しては本人以外全員が理解していた。
「気持ちはわかるけど、リース君は待機だ」
「どうして」
「あなたはいまだに指名手配の身です。そんなあなたがご主人様と一緒にいるところを見られてしまっては、ご主人様の信頼は一気に地に落ちます。そうなってはここまで進めてきた計画もすべて台無しになってしまいます」
「……」
「大丈夫です、かならずあなたの力が必要になる時が来ます。その時までどうかこらえてください」
焦る気持ちは分かるが、まだそこにリースの母親がいるとは限らない。リースが脱走してからしばらくたっているとのことなので、もしかすると移送されている可能性もある。助けるのならまずは確実に要救助者の居場所を把握しなければならない。
「では、リースさんには私と一緒に来てもらいましょうか。コチカちゃんとクイネちゃんにもお願いしたいことがあるんだけどいいかな」
「わかったのです」
「あいよ~」
「・・・」
リースは納得いっていないようだが、それでも仕方のないことだ。
「リース、僕の生まれ故郷には急がば回れという言葉があるんだ」
「一体それはどういう意味だ」
「急いでるときこそ、慎重に物事を進めようって意味なんだけど。これから僕たちはかなり危険なことをする。僕も含めて誰か一人がミスをすれば全員が危険な目にあう。昨日あんなことがあった手前あまり言えた義理じゃないけど、慎重に事を進める必要があるんだ」
僕の言葉の意味をしっかりとリースは噛みしめてくれたようで、彼女はそれ以上なにか言うことはなく、自身の武器の手入れを始めた。
「それではご主人様、あまりゆっくりもしていられませんし、そろそろ」
「うん、行こうかヴァルフ。それじゃあみんな行ってきます」
僕は皆に手を振り、町へと繰り出した。
今回僕らが討伐したイノシシは樹木よりも大きな体格をしていたので、当然牙もそれなりに大きい、そして重い。当初は僕が運ぶ予定だったが、両手を使っても持ち上げられなかったので、ヴァルフに背負ってもらった。それでもギルドから借りた槍と同じくらいのサイズがあるので、布で隠したとはいえ街中でそんなものを持っていると当然目立つ。だがしかしヴァルフに声をかけようという者は一人たりともいなかった。そうして僕らは意外にも支障なくギルドの建物にたどり着くことができた。
「おやおや、何やら外が騒がしいと思ったら、ツレヒト様でしたか」
「おはようございます」
「おはようございます・・・おや~どうやら昨晩はお楽しみだったようですね」
僕の様子を見て最初に言うのがそれかと思いつつも、彼の言葉の全てを否定できるわけではないので、僕は悩みつつも何とか言葉をひねり出した。
「ええ、無事にイノシシを仕留めることができたので。おかげ様でぐっすり眠れました」
「それはなんと、ということはもしかして、後ろの方が背負っているのは」
「ええ、例のイノシシの牙です」
僕はヴァルフを呼び寄せると、背中の物を取り出させた。
「まあ、ここではなんですから奥の部屋でじっくりと見せてください」
「そうですね。行こうかヴァルフ」
「はい、ご主人様」
僕の指示を受けてヴァルフは再び僕の後ろを歩き始めたのだが、なぜだかギルドの会長は歩みを止めて目を丸くしていた。




