告白のような信頼の証
「ということもありますので、改めてご主人様自身で私、ヴァルフを決して裏切らない奴隷であるとご主人様が信じるのであれば、改めて私にこの槍を託してくださいませ、先ほどの様に必要だからと流れ作業の様に武器を持たせてはいけません」
「わかったよ」
今僕はヴァルフによって命を救われたのだ、ヴァルフだから大丈夫と油断していた。この先僕の元にはさらに多くの奴隷が仲間になるかもしれない。そのすべてがこれまでみたいに円滑なものであるとは限らない。もしかすると生きるために仕方なくなんてこともあるかもしれない。そしてその中から謀反を起こす者もあらわれるかもしれない。当然僕もそうならないために尽くすつもりだし、力をつけることもするつもりだ。だがそれまでは僕は彼女に守ってもらわないといけない。
「ヴァルフ、僕は非力だ。君に比べてまだできることが少ない。それでも君やみんなが幸せに暮らせるように尽くすつもりだ。だからこんな僕でよければずっとそばで見守っていてほしい。これはそのための武器だ。僕からヴァルフへの信頼の証だ」
僕はそう言いながら槍を強く握った。われながらなんて拙い。そして中二病チックな言葉選びだと思うだろう。それでもこれが精いっぱいなのだ。
「はい、謹んで受け取らせていただきます」
ヴァルフもまた僕と同じように槍の柄を強く握った。その途端どこにでもありそうな、冒険者用の槍が強く輝きだした。
「ご主人様!!これは」
「え、まさか」
まさかとは思うが、これまでヴァルフの身に何度も起こっていた発光と共に力が増すといったあの現象、それがなんの変哲もない槍にも起こったのか。だがその光は腕を通じてヴァルフの身体に広がっていき、やがて彼女の全身を包んだところですっと消えた。
「いったい何だったんだろう・・・」
「わかりません。しかし」
「しかし?」
「初めて持ったはずなのに、なぜだかこの槍が体になじむのです。まるで手足の様にそこにあって当たり前のように感じるのです」
「えっ!?」
この場で一番驚いたのはリースだった。奴隷商人という物についてそこまで詳しいわけではないが、あんな現象は初めて見た。それにリースはまだ幼いながらに感じ取ってしまった。つい数秒前までのヴァルフと今の彼女はまるで別人かの様に違う。圧倒的に強くなっている。そのことを肌で感じ取っていた。しかしツレヒトの方を見るとそんなことなどみじんも感じ取っていないような顔で、会話を続けていた。
「昔使っていたものと似ているとか」
「いえ、そんなことはありません」
「じゃあ、さっきの発光が原因なのかな」
「細かいことはわかりませんが。今なら何でもできそうな気がします」
「おおすごい」
「というわけですので。ツレヒト様」
「は、はい」
これまでとは違い、急にかしこまり、さらには膝をついて頭を下げだしたヴァルフに僕は驚きながらも背筋をピンと伸ばして彼女の前に立った。
「いただきました。この槍に誓い、より一層の働きをお約束いたします」
「うん、これからもよろしくねヴァルフ」
気が付けば彼女に向けて自然に手が伸びていた。ヴァルフはそれをつかむと、僕は彼女を引っ張り立ち上がらせた。
「うん、やっぱりこっちの方がいいかな、かしこまられるとなんだかドキドキしちゃって」
「相変わらず、ツレヒト様はお優しいのですね」
なんだか二人の間でうまく話がまとまったみたいだとリースは思ったが、どうしても一つ気になってしまったことがあるので、さんざん変な儀式に付き合わされた腹いせにそれを解消しておくことにした。
「ところでよ、さっきの奴隷商人の口上、なんだか愛の告白みたいだったな」
「「なっ」」
二人同時に噴き出す様子を見て、リースは思わず笑ってしまった。




