作戦決定&依頼承諾
「穴を掘ればよいのではないでしょうか?」
「落とし穴か、しかし奴にその手は通じない。なにせ図体がでかいわりに跳躍力もそれなりにあるからな」
「いいえ、イノシシをはめるためではなく、追いつかれないようにするための避難用です」
「どういうことだ」
「つまりは追いつかれるよりも前にそのあなに飛び込んで身をかがめれば、イノシシはその上を通過して、崖に激突するのではないでしょうか」
確かにそれなら衝突は回避できるが、下手すれば踏みつぶされる可能性もあるし、掘る位置を間違えれば飛び込む前に衝突されてしまう。それこそ互いの身体能力と相手の速度をしっかりと計算したうえでやらないいけないが、それでも確かにやってみる価値はありそうな方法だ。
「しかし、掘った穴にイノシシもはまってしまったら、その時は本当に詰みですね」
「ヴァルフ、そんな怖いことを笑顔で言わないで」
言っていることは正しいのに表情が致命的に間違っている。なんでそんな笑顔で恐ろしいことを言うのか、正直理解できない。
「とはいえ、やってみる価値はありそうだ。もっと細かく作戦を詰めてみよう」
「お願いします」
そしてその晩僕らは朝日が顔を出すまで、話し合った。当然子供たちは眠気に抗えず、途中で眠ってしまったが、朝ご飯の時間になると、元気いっぱいな様子で起床した。とはいえずっと作戦会議をしていたせいで、朝ご飯の準備ができていないことを伝えると、しょんぼりと耳を垂れ下げた。
朝食を終えたのち、僕はギルドの会長の元を再び訪れた。昨日とは違い彼はフロアにはいなかったため、受付の人に頼んで取り次いでもらった。するとすぐには応対できず、30分ほど待っていてほしいとのことだったので、僕はその間ギルドの中にある雑貨店を見ていることにした。てっきりギルドの中の店だからポーションや、武器防具といった冒険用の品々が売られているものとばかり思っていたが、実際はそれらのものに加えてスコップや作業着といったものまで売っていた。そうなると冒険者用の店というよりも日本のホームセンターに近い感じだ。正直この後いろいろと買い物をしなければならないと思っていたが、もしかするとここですべて完結できるかもしれない。なんて期待を抱いていると、先ほど僕が声をかけた職員さんが再びやってきた。
「お待たせしました。会長は奥の客間でお待ちですので、ご案内いたします」
「ありがとうございます」
僕は職員さんに連れられ、職員用の扉から奥に入った。その様子を多くの人が何事かという瞳で見つめていたので、正直気恥ずかしかったが、なんだかVIP待遇を受けているような気がして、ほんの少し誇らしかった。
「いやいや、お待たせしてしまい申し訳ございませんでした」
会長は相変わらず額に大量の汗をかき、それをハンカチで拭いながら椅子に深々と腰かけていた。




