お肉たっぷり?なイノシシ
「おい、奴隷商人」
「どうしたのリース」
「ちょっとその紙、見せてみろ」
「いいよ。はい」
リースは僕から依頼書を受け取り、内容を改める。
「おっきいいのしし~」
「お肉たくさんなのです」
「このイノシシは図体は大きいが、食べられる部分はそう多くないんだ」
「そうなのです?」
「大半は巨体を支え、大地を疾走するための筋肉と、障害物を吹き飛ばすための鎧の役割を果たすための硬質な脂肪分で構成されている。だから実際に食べることができるのは、その内側の肉だけなんだ」
「へ~、それでおいしいの~」
「ああ、わが村ではめったに取れないごちそうだ」
ごちそうと聞いた途端、コチカとクイネの目がキラキラと輝きだした。さらにはついさっきご飯を食べたばかりだというのに、もう口からよだれを垂らしている。そんな二人の口元を布で拭いながら、ヴァルフが三人の話の中に入っていった。
「リースもしかしてあなたはこの獣を狩ったことがあるのですか」
「・・・私自身は狩ったことがない。だけど・・・何度か狩ったものを食べさせてもらったことはある」
「なるほど、わかりました。ではリース無理を承知であなたにお願いします。私たちにこの獣を倒す方法を教えてはいただけませんか?」
ヴァルフは真剣なまなざしでリースに問いかける。まだ検討の段階ではあるが、僕らにはこの獣に対抗する術がない。なので可能なら以来の変更を会長に出しすべきだが、リースの母親が幽閉されている以上、悠長に時間をかけていられない。だから今こうしてヴァルフがリースの頼み込んでいるのは、他でもないリース自身のためであった。
「・・・いい。、でも私も実際の伝え聞いただけでやったことはないから、あまり期待しないでほしい」
「ええ、それでもかまいません。お願いします」
「まあ、と言ってもこれもお母さんを助けるためになるなら・・・」
「うん、絶対にリースのお母さんは僕らが助け出して見せる」
「なら、いいけど」
「皆さまお待たせしました。地図を持ってきました」
「うん、ありがとう見せて」
「えっ」
そういえばチセがいなくなっていたことをすっかり失念していた僕は、チセに先ほどあったことを説明した。
「なるほど、ではこちらをどうぞ」
事情をあっという間に呑み込み、チセはリースに地図を見せた。リースはそれをまじまじと眺め、次になにか書き込むものを要求した。ペンなどは僕は持っていなかったが、チセが山から持ってきたインクを先につけて使うタイプのペンがあったので、それをリースに貸してあげると、彼女はなれた手つきで、地図のある一点に印をつけた。
「奴に対して真面目に戦えば勝ち目はない、だから奴の身体よりも固いものに衝突させ意識を奪う。それが奴を狩る上で最も効率のいい方法だ。それにちょうどよい場所があった」
リースはペン先で先ほど丸を付けた点をつついた。
「ここに巨大な崖がある。そこにやつを衝突させて意識を奪う。あとは上から襲いかかればおそらく倒せるだろう」
「なるほど、確かに作戦としてはよくできています。しかし」
ヴァルフは崖までの道を指でなぞる。そこは地図によると障害物のない平原となっていた。
「例の崖に行くにはそこを抜けなければなりません。ですが、イノシシよりも速く走れるものは、ここにはいません」
通常サイズもイノシシの走る速さは人間のそれをはるかに超えているという。てっきり獣人の皆ならとも思ったが、この世界のイノシシは獣人よりも早いらしい。
「万が一追いつかれれば重傷は不可避です、それに崖にぶつけるにしてもそれなりに速さが付いていないと意味がありません」
「・・・そうか、やはり無理があったか」
「いいえ、あなたの協力がなければここまでたどり着けなかった。それは変えようのない事実です。確かに我々はゆっくりと時間をかけていられる状況ではありませんが、何か他の方法を考えましょう」
第一案は没になったがそれでもまだ誰も諦めてはいない。そんな仲間の頼もしさに僕も思わず身がしまるようにな思いに駆られる。
「あ、あのよろしいでしょうか」
今度はチセが手を上げた。




