依頼内容をあらためよう
「そうかもしれない。でも僕は僕なりに頑張ってみるよ。だからリース。今すぐに僕を信じてくれなんてことは言わないよ。でも君も力を貸してほしい」
リースは少々悩んだ。それもそのはずだ。コチカやクイネはともかく僕自身はまだリースからの信頼を得ていない。それに僕は彼女にとっては目の敵である奴隷商人だ、そんなものと協力しろなんてうさん臭いにもほどがある。
「リ~ス」
「リース」
「な、なんだ二人とも」
リースの両サイドに陣取っていたコチカとクイネだったが、僕が話してい間に食器を空にしていたらしく、それを一度床に置き、代わりにリースの手を握った。
「ご主人様を信じてあげて」
「お願いなのです」
「ま、待ってくれ二人とも私はそのやらないと言ったわけでは」
コチカとクイネはふたりそろって瞳をキラキラさせながら、下方からリースを見つめた。いわゆる上目使いというやつなのだが、いったい誰がそれを教えたのか全く見当がつかない。とはいえ、僕が思っている以上に効果覿面なようで、見る見るうちにリースの額に焦燥の汗がにじんでいく。
「わ、わかった。今回は二人に免じて彼のことを信用するから、その悲しそうな瞳をやめてくれ」
「やった~」
「やったのです」
正直今回は二人がいなければこのまま話が進まなくなるところだった。なので後でたっぷりとご褒美を上げようと心に決めたところで、ひとまずは停滞していたことを進めなくてはと意識を切り替える。
「それでなんだけど、そのギルドの会長が出してきた依頼がこれなんだけど」
僕が今朝がた受け取った依頼書を出した。
「これは、イノシシの討伐でしょうか」
「そうだね。でもサイズがかなり大きいらしいんだ」
「大きいとは、どのくらいでしょうか?」
「えっと、ちょっと待ってね」
僕は改めて依頼書の詳細を確認する。ここに来るまでにある程度目を通しておいたので、どこに何が書かれているか、大体把握していた。それによると中央のイラストやや左下あたりにサイズについての記載があったはずだ。
「推定だけど、樹木よりも大きいって書いてある」
「なるほど・・・」
大きさの部分を読み上げたとたんヴァルフの表情が一気に険しくなった。だがその理由は流石に僕でも予想が付いた。確かに元の世界でもイノシシが出たという話は聞いたこともあるし、実際ニュースの映像でも見たことがある。だがその中のイノシシは四つ足状態で成人男性の半分のほどの高さだった。だが今回の狩猟対象は四つ足の状態で樹木よりも大きいと書いてある。そんな奴と闘おうというのだからそれは険しい顔にもなる。ならば断わればいいのではと思うが、あの場で断ってしまうと、悪い印象を持たれるかもしれない。だから僕は一度持ち帰ることを選んだのだ。
「私の故郷も決して文明的とは言えませんでしたので、狩猟の経験はありますが、流石にこれほどのサイズの獣を狩ったことはありません」
「だよね」
「それにこれほどの巨体となると、弓矢や槍などの通常兵器が通用するかどうか」
「うん、やっぱり何かしらの作戦が必要みたいだね」
「ええ、そうですね。まずはなんでもいいので作戦を立ててみましょう。チセ地図の用意をお願いします」
「わかりました」
チセは食器を一度置き、馬車に地図を取りに向かった。




