やはり僕はおかしいんじゃないか
結局その日は依頼についての説明を受けることと最低限の買い物だけ済ませ、僕は拠点に帰った。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「ただいま」
「なにか良いものがありましたでしょうか」
「よい依頼があったかどうかは分からないけど、ギルドの会長さんと会ったよ」
「なんと、いきなりそんな大物が出てくるとはついてますね」
「うん、でもその会長さんが出した依頼がなかなか厳しそうで」
「なるほど、ではそれについては後ほど皆で話しましょう」
「わかった」
僕が買い物をしている間、ヴァルフは夕食の支度をしてくれていたようで、僕はすぐに荷をほどき、温かい夕食にありついた。だが今日はいつもと違う点が一点、これまでずっと毛布に包まり傷を癒していた、リースだったが、今やすっかり元気になり、動き回れるようになっていた。それに加えて、僕がいない間にコチカとクイネの二人との絆をさらに深めており、三人は並んで食事を受け取っていた。
「さてと、皆聞いてほしいことがあるんだけどいいかな」
僕がそう言うと皆リース以外の皆が一斉に食事の手を止めてしまったので、流石にそれは申し訳ないと思い、食べながらでいいと訂正した。
「今日、ギルドの会長に会って、仕事を依頼された・・・それで」
僕としては今日あったことをただ語っているだけで、まだ本題に入っていないのだが、今度はリースの手が止まった。
「あの男に会ったのか」
「ああ、うん」
「まだ・・・奴は生きているのか」
「うん、もしかして知ってるの?」
「あいつが、私と母さんを牢屋に入れたんだ」
「なるほど、そうなるとリースには申し訳ないですが、目標に向けて一歩前進しましたね」
「それは、どういうことだ」
「僕たちは今、君のお母さんを解放するために、この街のどこかにあるであろう奴隷売買が行われている場所を目指しているんだ」
その目的には下心は一切ない。しかしリースは僕らのことをひどく警戒したまなざしで見つめた。
「まさか貴様らも母さんを」
「いやいや違うよ。僕たちはお金が欲しいわけじゃないんだ」
実際のところリースに盗られたことで一時期は危うくなっていた僕らの懐事情だったが、皆でとった薬草を加工した薬を売ったことで、使った分のお金は取り戻しつつあった。
「では、なにが目的だ」
そう聞かれても僕はうまい言い訳が見つからなかった。きっと今のリースに対し、善意でことを進めているなんて言っても信用してもらえない。それに赤の他人がいきなりやってきて親子のことに首を突っ込んでおいてそれを善意というなんて、なんだかおこがましい気がする。だが助けたいという気持ち以外に僕らを突き動かす動機はない。ならばそれをどう伝えればいいのか、考え方をシンプルにすると途端に答えが出てきた。
「目的なんてないよ。ただそうしたいからそうしてるだけ、だからしいて言うなら僕のわがままだ。それにみんなが同意してくれてる。それだけなんだ」
「わがままだと、どうしてそんなことを願う。奴隷商人は皆卑劣でお金稼ぎやその・・・己の欲望を満たすことしか考えない、下等な生き物のはず」
「それはずいぶんな言われようだね。でもきっとそうなのかもしれない」
そう言われれば僕自身もきっとリースが考える下等な存在の一人になるのかもしれない。なんせ僕が旅をしている目的もただ自分自身も居場所が欲しいからなのだから
「それでも、僕は皆が応援してくれるから、このわがままを貫こうと思う」
「・・・お前はどこかおかしいんじゃないか」
リースは明らかに変質者を見る目で僕を見るようになったが、それでも彼女の警戒心が解けたのなら、それはそれでよしとすることにした。




