ギルドの奴隷市を目指して
結局ゲームの結果コチカが勝利をおさめ、ツレヒト達に報告に向かうことになった。
「お姉ちゃんとチセ~」
「あらコチカ、どうしましたか」
「少しお話したい~」
「いいですよ。ではご主人様を呼んできます」
コチカは相変わらずのゆったりペースだが、長い間共に過ごしたヴァルフには今の彼女が重要な話をしようとしているのだと理解した。なのですぐにツレヒトを呼びに馬車に向かった。
そしてヴァルフに連れられ、ツレヒトもまたコチカのもとに集まった。
「それで、重要な話があるって聞いたけどなにかなコチカ」
「う~ん、え~とね」
コチカは尻尾と頭を左右に揺らしながら、何やら考え込んでいるようだった。ちなみにコチカのこの行動は長い話をできるだけ短い文章で伝えるために考えこんでいる時に起こることだと、ヴァルフが教えてくれた。
「あの子のお母さんが捕まってる~」
「ええっ」
明らかにコチカのテンションと、情報の深刻さがマッチしていないため、僕は思わず驚きのあまり立ち上がってしまった。
「ご主人様~リース起きちゃう~」
「ああ、ごめん」
「いいよ~」
「それで、どこにどうして捕まってるとかはわかる?」
「さらわれた~毛が特別だからって~そして男に買われた~」
「毛が特別、男に買われた?」
「なんだかギンローっていう、らしいよ~」
「銀狼族ですか」
「そうそれ~」
「銀狼族?」
どうやら僕だけがよくわかっていないようで、ヴァルフから補足の説明をしてもらい、そのおかげでリースやその一族が非常に狙われやすいものなのだということを理解した。
「もし彼女の話が本当なら、リースのお母さんはいったいどこにとらわれているのでしょうか?」
「うーん、まったく見当がつかないんだ」
僕が最初に訪れたあの大きな町には、僕が入ったもの以外に大なり小なりたくさんの奴隷市があった。だがこの街には確かに奴隷はいるもののそれを販売している箇所が見当たらない。そうなると、外部からさらわれた奴隷はどこからきてどこで販売されているのか、それが全く分からない。
「ご主人様、奴隷商人の地位を使ってギルドで情報収集はできないでしょうか?」
「できるかもしれないけど。僕たちはこの街にとってはまだまだ新参者だから、もしかしたら何も教えてもらえないかもしれないよ」
「・・・」
「確かにご主人様のおっしゃることには正しい部分もありますが、ほんの少し訂正できる部分もあるかと」
「ヴァルフそれは一体」
「我々はたしかに新参ものではありますが、先の依頼の達成の際に我々の一団には高度な技術を持った者がいることが知れ渡っています。それにギルドの中、我々のまだ見ぬ部分には、奴隷の販売市があることをギルドの職員が吐露していました。なのでそこに付け入るスキがあるかと思われます」
「なるほど、つまりはご主人様がエリート集団のボスであることを示すことができれば、その隠された奴隷市に入れるかもしれないということでしょうか?」
「ええ、おおむねその通りです」
「なるほどね、そうなるとまず必要なことはギルドからの信頼を得ることだね」
「その通りです。そしてその信頼を得る方法と言えば・・・依頼をこなすことでしょうか?」
「それもある程度難易度のあるものがよいでしょう」
だがそうなると皆が危険な目にあう可能性もある。できうる限りの準備はもちろん必要だが、最終的にどの依頼を受けるかについては僕がしっかりと見極めなくてはならない。
「そう緊張なさらなくてもよろしいですよ、ご主人様。私どもが必ず何とか致します」
改めて見渡してみると、僕の仲間は誰一人として下を向いていなかった。皆しっかりと前を向き、己のやるべきことを見据えていた。
「よし、それじゃあ皆大変だと思うけど、頑張っていこう」
「「はい」」
「あ~い」
「ではまず、第一に、コチカに今の話をかみ砕いて説明するところから始めようか」
「そうだね」
僕らの視線を一身に集めながら、コチカはいつも通りマイペースに揺れていた。




