リースの秘密ここに至るまで
「私はあの町で暮らしている。本当なら君たちと同様に故郷に帰りたい・・・でも今はそれができないんだ」
「どうして?」
「・・・母さんが捕まってる」
「えっ」
「もともと私たちは母と私の二人同時に人さらいに遭った・・・そしてこの街に連れてこられた」
リースが語ったのはこれまで誰にも話してこなかった自らの過去、それはまるで昨日ついた胸の傷をえぐるかの如く辛く苦しい思いを伴うのだが、それでも話すと心に決めた。
「最初は二人である人間の奴隷になっていた。だが私たちが銀狼族だと知るや否や、いきなり態度を変えやがった」
「ぎんろうぞく?」
「えっと、二人は知らないんだな。私とその母は一応は狼の獣人なのだが、その中でも極めて数の少ない銀狼族というものらしい。銀狼族の特徴としてしなやかかつ日に当てるとキラキラと輝く特別な髪と青い瞳を持つと言われている。だがそんなものはしょせんただの身体の色が少し違うだけなのだが、人間たちからすれば、我々の髪や体毛には高い価値があるらしい。全く持って理解できないがな」
「へ~」
「でも確かに綺麗なのです」
コチカとクイネの興味がリースの話から、彼女の髪に移りそうになったので、リースは何とか軌道修正を図り咳払いをした。
「話を戻すぞ。そしてその価値に気が付いた。とある男によって私たち親子は買い取られ、そして軟禁生活を送ることになったんだ」
「そうなのです・・・」
「つらい」
「確かに辛いけど、大丈夫私が絶対にお母さんを取り戻して二人でこの街を出るんだ」
そのために必要なものは山ほどあるが、まずは一番手っ取り早く手に入るであろうお金を日々奔走しながら集めていたのだが、昨日はたまたまギルドの職員に見つかり、町中追い回されたその過程でかなりの深手を負ったのだが、そこにたまたま通りかかったのが、ツレヒトとヴァルフであった。
「聞いてくれて、ありがとう。少し楽になった。悪いけどもう一回寝る」
「おやすみなさいなのです」
「お休み~」
先ほどまでは何ともなかったのだが、話をしているうちにだんだんと胃の中で消化が進み、そのせいで急激に眠たくなってきた。そのためリースはシーツを全身にかぶると、そのままコチカとクイネに背を向け眠りだした。
だが本当にリースが眠ったのか半信半疑だったコチカとクイネの二人は身を乗り出して、リースの顔を覗き込んだ。しかしリースはただ目を閉じているだけで寝息は一切立っていない。なので恐る恐る頬をつつくと、わずかに眉間にしわが寄った。その後も何度か頬をつついたり、耳元でささやいてみたりとしてみたが、やはり小さいものではあるが、必ずなにかしら反応していた。
「寝ていないのです」
「ちゃんと寝なきゃダメ~」
「じゃあ、静かにしてくれ!!」
リースに怒鳴られ、流石にやりすぎたと自覚したのか、二人はすぐさまシーツから離れ、二人身を寄せながら、プルプルと震えていた。だがその後リースが寝息を立て始めたことを確かめたのち、二人は静かにどちらがツレヒト達のもとに先ほどの話をしに行くかを決めるゲームを始めた。




