誰が見守るか
「ご主人様、二人とは会いましたが」
ヴァルフが鍋をかき混ぜながら、訪ねてきた。ちなみに彼女がいう二人とはコチカとクイネのことだろう
「うん、さっきね。それでなんだけど、しばらくの間リースのことを二人に任せてみようと思うんだけど、どうかな」
ヴァルフは鍋をかき混ぜていた手を止め、深く考え込んだ
「一応チセから怪我は治ったがまともに動ける状態でないことは聞いておりますが、奴隷となった私にも敵意を向けていました。一応武器は取り上げていますが、それでも危険がないとは言えない気がするのですが」
「うん、わかってる。だから僕も完全に目を話すわけではないけど、年が近いからこそ打ち解けやすいんじゃないかなって思ったんだ」
「・・・チセ、あなたはどう思いますか」
「確かにリースさんはしばらく激しい運動はできないと思います。もし無理に体を動かせば、血流が乱れ体の自由が利かなくなります。ですがそれも今日か明日までのことです。それ以降は普通に動けるようになります。なのであの子たちがそれまでにリースさんとたしかな絆をつなげることができるか、それ次第だと思います」
「・・・僕の判断は軽率だったかな」
「いいえ。理にかなっている部分はあります。ですが不安な点もあるといったところですね。ですがあの二人の純粋さは他者の心にとっては非常によい薬になると思います」
「それじゃあ」
「はい、皆様の担当医としてご主人様の判断を支持します」
「ありがとう」
トクシンさんから離れて僕らについてくるようになってから、コチカとクイネはより一層チセとかかわる時間を増やした。それは彼女たちの中になにか打算のようなものがあったからではなく、ヴァルフの治療をきっかけにして新たに知り合った年の近い子供と友達になりたかったからであった。まだまだ幼い二人には人種による違いを垣間見ない。だからこそ誰に対しても垣根なくかかわろうとする。それは危険なことでもあるが、同時に尊いことでもあった。
「わかりました。ではリースの監視はあの子たちに任せてみようと思います。ですが治療や介助には私やチセが引き続き関わります」
「いいのヴァルフ」
「ええ、ここまで言われてしまっては仕方ありませんね。それに友達は多い方がいいですので」
「ありがとう」
チセのアシストもあり、何とかヴァルフの説得に成功した僕は、彼女から本来の目的である二人分の昼食を受け取った。
「それでは、二人のことをお願い致しますね。ご主人様」
「うん、ありがとう。それでなんだけど」
チセとヴァルフ、そしてコチカとクイネにはそれぞれ役割ができた。しかしそうなると僕は・・・何も仕事がなくなってします。
「僕は何をすればいいかな」
「・・・」
「・・・」
チセとヴァルフが一瞬顔を見合わせながら、静かに考え込んだ。
「では・・・申し訳ないのですがよろしいでしょうか」
チセが恐る恐る口を開いた。
「なになに、なんでも言ってよ」
「必要なものが出たらでいいので、買い出しをお願いしたいのですが」
「うん、わかった」
こうして僕は何とか自分だけが何もしないという状況を回避した。




