依頼達成の報酬とまさかの再開
翌日、納品分の薬と、チセが用意してくれた販売するための薬を持って、僕とヴァルフは再び街に入った。ここに来るとどうしても例の強盗を警戒してしまうが、販売用の薬の一部を売り払い金銭を得た後もしっかりと警戒しながら進んでいたが、結局何も起きないまま、ギルドに到着した。
「いらっしゃいませ、本日はどういった御用でしょうか」
相変わらずゲームのNPCみたいに固定されたセリフでのお出迎えだと思いつつも、僕は先日受けた依頼に関することだと告げると、前回とは別の窓口案内された。
「記録によりますと、お渡しした依頼は薬草の採取だったとか、あれは外れを引くと強烈な悪臭がするので、さぞかし大変かと思われますが、いえ奴隷商人様には無用な心配でした」
決して彼女は深くは考えていないのだろうが、まるで息をするかのように差別的な意味合いの発言が出るあたり、やはりこの世界は相当に歪んでいると再認識した。しかしもはやそれに対してただ黙って愛想よく流すことはできなかった
「僕らには優秀な仲間がいますから、幸い外れを引くことがありませんでした」
すると、受付嬢は明らかに驚いた様子で口元を手を落とした。
「そんな、あの薬草の見分けなど、ある程度の薬学の知識がないと不可能と言われているのに、そんな優秀な奴隷などどこにいたのですが、オークションに出せばかなりの高価で、あっ」
今しっかりと受付嬢の方の口からオークションという言葉が漏れ出たのを僕らは聞き逃さなかった。正直この街に来てからそういう場所をずっと見てこなかったが、この規模の街ならあるだろうと思っていた。
「オークションということはここにも人身売買ができる場所があるのですか」
「い、いえ~その~」
明らかに言ってはいけないようなことを言ってしまったようで、受付嬢から先ほどの余裕は消え、あからさまに周りを気にし始めた。
「いいえ、いいです。彼女を手放す気は全くないので」
「そうですよね~いえ、失礼しました。それでは依頼の清算をしてまいりますので、少々お待ちください」
冷や汗をハンカチで拭いながら急いで書類上の手続きを始めた
「お待たせしました。こちら今回の報酬です。それでなのですが、もしよろしければ後日で構いませんので余剰分の薬草をお持ちいただければ、私たちの方で買い取らせていただくこともできますが、いかがでしょうか」
「いえ、結構です」
「そうですか、それでは改めまして依頼達成おめでとうございます。今この場で次の依頼を受けて帰ることも可能ですがいかがでしょうか?」
「今日は疲れたのでこのまま帰ります」
「そうですか、ここを抜けて右手の道に入りしばらく降りるとおいしい酒場がありますので、よろしければ立ち寄ってみてください」
「ありがとうございます、覚えておきます」
どうやら僕の仕返しは思わぬ成果を生んだようで、うれしく思う反面、この街の不穏な一面を垣間見たような気がして少し微妙な雰囲気になったが、紹介してもらったお店が持ち帰りもできるようで、お店特性のたれがたっぷりかかった様々な種類の焼き鳥のような串料理を大量に袋詰めしてもらい、ウキウキで帰ろうとした時だった。
ほんの短い区画だが街灯が途切れ、ほのかに薄暗くなっている場所に差し掛かった時、路地の隅に赤く伸びる線のような跡があった。
「ご主人様、これは血痕のようです」
「そうみたいだね」
「どういたしますか」
「けが人がいるかもしれないから少しだけ様子を見てみよう」
「わかりました。ですが念のためです。ご主人様は私の後ろに」
「わかった」
ヴァルフが先頭に立ち跡をたどっていくと、やがてそれは一つの曲がり角まで続きそして、そこで途絶えた。
「ご主人様これは」
血痕の先にいたのは、予想通りけが人であったのだが、夜の暗がりの中でもはっきりと見えるほどにきれいな白髪を携え、そして見覚えのある透き通った青い瞳でこちらをにらみつける一人の獣人がいた。




