皆でできる仕事はあるかな
昨日はお尋ね者の情報を得るために訪れたギルドだったが、もともとは仕事を紹介してくれる場所であった。そのため何か僕らにもできることはないかと探してみるのも一つの策だろうと思った。
だから次の日買い物を終えた僕らはその足でギルドを訪れた。
「本日はどのような御用でしょうか」
「仕事を探していまして、できれば大人数でできるようなものが好ましいのですが」
「大人数ですか、しかし見たところお仲間は一人の様に思われるのですが」
僕はここぞとばかりに奴隷商人の証を提示した
「これは、奴隷商人様でしたか。でしたら適したものを幾つか見繕ってまいります」
この街でも奴隷商人の権力はそれなりに大きいようで、証を見るや受付嬢は態度を変え、速足で奥に消えていった。
「お待たせしました。今ご紹介できるお仕事はこちらになります」
そう言ってかなりの量の紙束を僕らの前に置いた、どれをどう見ればいいのかわからないため、僕は適当に目についたものを取り、中を見てみる。
『鉱山での採掘作業、発掘内容次第で報酬アップ』
『農地開拓業務、主人は小屋で休憩OK』
『魔獣討伐、肉盾派遣、ノーリスクで不要な奴隷を処分して大金GET』
少し見ただけでもこういったいかにも人権も労働基準法も無視したような案件ばかりだったのですぐさまそれらを隅に追いやった。
「ご主人様、あまり我々に気を遣わずとも」
気が付けば、大量の紙を隅に追いやったせいでちょっとした山ができていたことをヴァルフはひそかに心配していた。
「いや、これは流石に無理だよ・・・あれ、これは」
そんな中僕の手元にようやく少しまともな仕事について書かれた紙が入ってきた。
『薬草の採取※強烈なにおいがします』
「これならみんなでもなんとかなりそう」
「そうですね、我々にはチセがいます。彼女の力がきっと役に立つでしょう」
説明書きによると、ここからそう遠くない場所に特殊な薬草が群生する地帯があるそうだ。しかしそれはただの薬草でなく、どうやらあたり外れがあり、あたりの薬草は、裂傷や、打撲の治療、さらには鎮痛と消毒の効果があるのだが、それ以外のものは抜いた途端強烈なにおいを発するだけのただの草であるとのことだった。
「これにします」
「承知いたしました。それではこちらに受領のサインを」
「はい」
僕は言われるとおりに契約書に名前を書いた。すると受付嬢の人は机の下から麻袋を取り出し、カウンターに置いた。
「こちらに必要なものはすべて入っておりますので、ご自由にご使用ください。ですがくれぐれも壊すことのないようにお願いします」
「はい、もちろんです」
「時々獣人のバカ力のせいで道具がぐしゃぐしゃになるなんてことがあるので、念のためです。そして万が一道具を壊した奴隷がいた場合には弁償代を体で稼いでもらいますので、あしからず」
「わかりました。くれぐれも気を付けます」
最後のほうだけやけに高圧的に念押ししてきたが、この世界に来て初めてトクシンさん以外でまともなことを言われたような気がしなくもないので、素直にうなずいておくことにした。
「それでは、私はここで商人様のご無事を願っております」
「うん、ありがとうございます」
その祈りの対象にヴァルフ達奴隷が入ってないことは気になったがいちいち気にしていてはきりがない気がした。
「しかし、何とかなったね」
「ええ、規定量を超えた薬草は報酬とは別に我々の取り分としてよいと書いてあります。余剰分は薬にして売ってみるのはいかがでしょう」
「いいね、それ、よしさっそくチセに相談しよう」
僕らは比較的楽な仕事を見つけられたとウキウキで拠点に帰ったのだが、依頼の内容を話した途端、チセはとても苦い顔をした。




