対策会議と一緒に街へ
「皆本当にごめんなさい」
野営に帰ってすぐ、僕は皆に謝罪した。主人が奴隷に頭を下げることなど前代未聞だったようで、皆一様に慌てていたが、ことの経緯をすべて話すと納得してくれたようで、騒ぎは少しだけ落ち着いた。
「何はともあれ、ご主人様がご無事で何よりでございます」
「ありがとねヴァルフ」
「しかし、強盗ですか」
一応チセもトクシンさんや村の人たちからこの街については聞いたことがあったが、その中には強盗が出るなどという話はなかった。それゆえにかなり治安のいい場所だと思っていたらしい。だから僕が一人で町に行くことに彼女は唯一反対しなかったのだ。
「なにも対策をせずに街に入れば、再び狙われる可能性もなくはないですね」
「道を変えてみたらどうかな」
「しばらくはいいかもしれませんが、相手は街を知り尽くしているものです、いずれは見破られるかもしれませんし、別の輩に襲われるかもしれません」
「そうなるとやはり、護衛をつけるのが一番良いと思います」
「でも、護衛と言っても誰が」
僕らの一団で戦力となるのはヴァルフ一人だけだ。そうなると必然的に彼女について来てもらうことになりそうだが、いろいろと懸念点はある。
「私以外いないでしょう」
「でも」
「問題ありません。私ももとは軍人の端くれ、以前は後れを取りましたが、もう二度とご主人様に心配をかけることは致しません」
あの時と違い、いやそれ以上に今のヴァルフは頼もしく見える。やはり僕の力が及ぼした影響なのだろうか。いやそれ以上に生死の境をさまよったことで彼女に何か変化があったのかもしれないが、どちらにせよ今の彼女以上に信頼できる存在はいない。
「わかったよヴァルフ。それじゃあお願いするね」
「はい、お任せください」
「それでは子供たちのことは私が見ておきますね」
「お願いしますね、チセ」
「はい、承知いたしました」
というわけで翌日の買い物はヴァルフが同行してくれることになった。
そして当日僕は奴隷商人という身分を利用し、フードをかぶったヴァルフを街の中に入れた。
「ご主人様のお話通り、人がかなり多いですね。これは下手をするとはぐれてしまいかねませんね」
「うん、だから僕から離れないでね」
「心得ました」
てっきり昨日が特別なのだと思っていたのだが、どうやらこれが平常運転のようで、町は今日も多くの人でごった返していた。そんな中ではあったもののヴァルフのおかげで一切迷うこともなく、また誰にも襲われることなく買い物は順調に進んでいった。
「昨日の輩は現れませんでしたね」
「流石に二日連続でとなったら辛いからよかったよ」
「ええ。ですが我々に残されたお金はそう多くはありません」
元をたどれば僕が盗まれたせいで余計に消費してしまったため、神様からもらった路銀もかなり減少していた。チセとヴァルフの目算によると、どれだけよく見積もったとしても次の大きな町に着いた段階でお金が尽きてしまい、旅を続けられなくなるだろうとのことだった。
「ごめんね、僕がふがいないばっかりに」
「そんな、ご主人様が悪いのではございません。悪いのは例の強盗です。あ、そうだ我々でその強盗を捕まえてはどうでしょうか?」
「あー」
確かに手配書に書かれていた額は僕が盗られたものよりもはるかに高い、もしそれができたならこの先もきっと安心できるだろう。
「まあ、やるだけやってみるっていう形にしようか、無理にそれに固執してもあまりいいことはなさそうだしね」
「わかりました。ではほかの方法も検討してみましょうか」
そういえば前に詰所の人がこう言っていた。ギルドは本来は人を募り、仕事をあっせんすると言っていたような。もし可能ならみんなでもできそうな仕事を紹介してもらうのも悪くないかもしれない。
「それなんだけど、僕に一つ考えがあるんだ」
「おお、流石ご主人様。してどのようなお考えでしょうか」
一人目をキラキラさせるヴァルフに僕は昨日あった話から順に始めた。




