指名手配犯
お金を盗られた僕はせめて少しでもできることはないかと思い、衛兵の詰め所を訪れていた。
「それはそれは災難でしたね」
「ええ、まったくです」
「ですがこの街でそのような行為を働くものは今のところ一人しかいないのですが、まさかここに来て初日に被害にあわれるとは」
僕を聴取している警備兵の人は比較的に穏やかな口調で僕に告げた。
「あの、もしよろしければなのですがこの先にあるギルドを訪れてみてはいかがでしょうか」
「ギルドですか?」
確か僕が知るギルドとは冒険者が所属し、魔物退治や薬草採取といった依頼を受けつつ、ランクを上げていくというまさに主人公が成り上がるために用意されたと言っても過言ではないような施設だ。
「本来ならギルドは近隣の住民の悩み事を解決するために、人を募る施設なのですが、お尋ね者の情報も取り扱っております。なのでもしかすると商人様を襲ったものの情報もあるかもしれません」
「わかりました。ありがとうございます」
一応もう二度と同じ轍を踏まないように今度はギルドまでの地図を書いてもらい、人のいない道は進まないように気を付けて進んでいると。それまでの葛藤が嘘のように、あっという間にギルドの前までたどり着いた。それまでは何とか人込みを避けてこられてたが、ギルドの前には出稼ぎにきたであろう労働者や、剣を背負ったいかにも冒険者風の一団など様々な人物が次々に巨大な門をくぐり、建物の中へと消えていった。最初はしり込みしていた僕もしばらく見ていると、目の前の光景に慣れてきたので、中に入ってみることにした。
中に入って最初に目にしたのはラウンジであり、そこには小さな円形状のテーブルがいくつも置かれておりそれを中心に何やら話し合いをする者たちがところどころいた。そしてその奥には巨大な一枚のテーブルを敷居で隔てた受付があり、職員とみられる女性たちがやってくるものたちを相手に事務的に対応を進めていた。見たところ整理券のようなものはない感じだが、あれでよく問題が起こることなく人を捌けているものだと感心していた。
しかしいつまでも立っているだけではいけないので、たまたま通りかかった職員に声をかけた。
「あの、すいません」
「はい、なんでしょうか」
「お尋ね者の情報があると聞いてきたのですが」
「なるほどそれでは7番窓口へどうぞ」
僕を案内してくれた職員の人がそのまま応対してくれることになり、僕は用意された椅子に腰かけた。
「それで本日は何について知りたいのでしょうか」
「実はつい先ほど路地裏で財布を奪われまして」
「それはそれは災難でございましたね」
先ほどの詰め所でも同じことを言われたが、きっと善意以外は何もないはずなので、ツッこまないことにした。
「それで犯人の特徴は」
「はい、とてもきれいな青色の瞳をしていまして」
「青色の瞳ですか」
僕の話を少し聞いただけで、紙束をめくり何かを探すとすぐに一枚の紙を僕の前に出した。
「今回あなたを襲ったのはおそらくこちらかと」
そう言って差し出された手配書を見ると、たしかに多少違いはあるものの先ほど僕を襲った犯人の顔が書かれていた。
「この子はいったい」
「もともとは外部からやってきた者らしいのですが、働き口でトラブルを起こして逃走、そしてすぐに強盗になったのです」
つまりは生きていくために犯罪に手を染めたということなのだろうが、許す許せないは置いておいても心が痛む話ではあった。
「ちなみに彼女はギルドが数多く抱えている犯罪者リストの中でも、報奨金の額は上位に位置します。ですのでもし捕まえていただけるのなら今日盗られた額以上の金額をお約束いたします」
「そうですか」
正直お金の話はともかく、もう一度襲われては本当に財政がもたないので手配書の写しだけもらって僕は皆の元へ帰った。




