実は同い年だった二人
濡れた服を着替えないといけないということでしばらく火にあたることはできなかったが、それもすぐに終わり僕も火のそばに呼ばれた。
「ツレヒト様お待ちしておりました」
焚火の周りに串に刺された魚が火にあぶられ油を滴らせていた。そのわきでチセが食べきれない分の魚を干物にして保存するための仕込みを行っていた。
「ご主人様、お魚焼ける~」
「うん、いい匂いだ」
「ええ、どれもこれも大物ばかりです」
「おっ魚、おっ魚♪」
コチカは猫の獣人というだけやはり魚が好物なのか、先ほどから歌いだすほどノリノリになっていた。
「お医者さん」
「何でしょうか」
「これ、おねえちゃんにも食べさせてあげたいのです」
「そうしたら元気になる~」
「それはいいですね。では焼けた物からどれか持っていきましょうか」
「一番大きいの!!」
二人が声をそろえて言うので、僕とトクシンさんは驚きながらも、二人で真剣に話し合いながら一番大きなものを選んだ。
「ツレヒト様少しよろしいでしょうか」
「はい」
「私はこの後チセと採った薬草の仕分けと簡単な調合を行いますの。子供たちはもうおなかが空いて仕方ないでしょうから、ヴァルフさんの食事を持って行っていただけませんか」
「わかりました。すいませんが子供たちをお願いします」
「お任せください」
焼きあがった魚を皿に上げ、そこに箸を添えたものをお盆に乗せて運んでいく。病室には一回しか行ったことがないので、迷うかと思ったが今回は大丈夫だったようで、すぐに病室の前にたどり着いた。
「ヴァルフ今入っても大丈夫?」
「はい、どうぞ」
「入るよ」
食事を落とさないように慎重に中に入ると、ヴァルフは布団から体を起こして待っていた。
「起きて大丈夫なの」
「はい、実を言うと今日ご主人様たちが不在の時、少しだけ外に出たんですよ」
「そうなんだ。よかった」
少しずつとは言え順調に回復に向かっていることが知れて僕は一安心した。
「して、その焼き魚は」
「コチカとクイネが採ってくれたものを焼いたんだ。二人ともお姉ちゃんには一番大きいのを持って行ってって言われて」
「なるほど、昔からあの子たちは魚とりが上手かったのですが、今日は一段と大物ですね」
ではありがたく、とヴァルフは布団から手を出し器用に身の一部を掬い取ると、口に入れた。
「これは身がふっくらとしていてとてもおいしい」
「全部食べられそう?」
「ええ、もちろんです。体を治すためには食べるのが一番ですから」
そこからヴァルフはけが人とは思えないほどの速度であっという間に魚丸々一匹を平らげた。
「ふ~久しぶりに食事をしたという感じでした」
「二人には喜んでたって伝えておくよ」
「あの子たちにはかなり心配をかけてしまいました。でもなんとか立ち直っているようでよかったです」
「うん、ヴァルフの姿を見てからは元気いっぱいだよ」
「ええ、そのようですね。そして」
ヴァルフは僕の胸の中心に手を置いた。
「ご主人様の心の傷の方はいかがですか」
ここに来てからずっと自分を責めてきた。しかしヴァルフと心を一つにしたときから、少しずつ心境に変化が起こっていた。
「・・・ずっと僕は誰の役にも立てなかった。そんな自分が嫌で仕方なかった。でも今は少しでもヴァルフの力になれたことが嬉しかったんだ」
「ええ、私もです。あなた様のような特別な力と優しいお心を持ったお方に仕えることができて。とても幸福だと今は思っております。だからそんなあなたが少しでも心を痛めなくてもいいように、もっと強くなりたいです」
「ヴァルフ」
「ともに頑張っていきましょうご主人様、あの子たちのためにも」
「うん、そうだね。そうだよね」
僕は自身の胸に置かれたヴァルフの手を包み込むように握った。その瞬間再び温かい波動が全身を巡った。
「そうだ。前から一つ気になっていたことがあるのですが。お尋ねをしてもよろしいでしょうか」
「うんいいよ」
「ズバリご主人様は成人なされているのでしょうか」
「ここではどうかわからないけど、あっちの世界では20歳が成人なので、それに準ずるなら僕は成人していない」
「やはりそうでしたか、ちなみに年はおいくつでしょうか」
「18だけど」
「なんと、同じだったのですね」
「えっヴァルフって18だったの」
「はい、そうです。しかし」
僕の驚いた顔がひどく面白かったのか、ヴァルフはギリギリのところで笑いをこらえながら、言葉を続けた。
「お互いにまだまだ若いのに大人のふりをしなければならないなんて、大変ですね」
「まったくもってその通りだね」
ある意味ヴァルフと僕だから通じ合える自虐を楽しんでいる最中、外の廊下があわただしく騒がしくなった。




