お魚大漁
僕らが籠一杯に野草を集め終わったときにはコチカとクイネは魚採りをやめ、水遊びに興じていた。
『二人ともそろそろ帰るけど・・・ああ」
すっかり全身びちゃびちゃになってしまい、全身からしずくが垂れている。このまま家の中に入れば間違いなく、湿気で木が傷んでしまう。
「帰ったら庭で火をおこしましょう。そこで暖を取りつつ、採っていただいたお魚を調理すると致しましょう」
「やった~」
「ご飯なのです」
子供たちは大はしゃぎで川から飛び出てそのまま来た道を引き返し始めた。
「私たちも急ぎましょう。このままでは見失いかねない」
「ええ」
コチカとクイネが使っていた籠は改めて僕が背負い、慌てて二人を追いかけた。
「ただいま~」
「ただいまなのです」
「おやおや、お二人ともおかえりなさい」
元気いっぱい二人をトクシンが穏やかに迎え入れた。二人はそのまま屋敷に上がろうとしたので、僕が何とか止めた。
「おや、お二人ともずいぶんと濡れていますね」
「すいません、野草採りの最中に川を見つけて」
「なるほど、それでツレヒト様の籠に大量のお魚が入っていたのですね」
「ええ」
トクシンは草履を履くと、ゆっくりとコチカとクイネの前に歩み寄った。
「お二人とも大手柄です」
「わ~い」
「やった~」
トクシンさんに頭を撫でられ、二人は嬉しそうに喉を鳴らした
「さあ、ツレヒト様も」
「はい」
トクシンさんの後、さらには僕にも撫でられるとあって、コチカとクイネの二人は目をキラキラさせながら、僕に近づいてきた。なのでそっと頭に手を置き撫でてあげた。最初はうまくできているか、不安だったがやっていくうちに二人の反応が良くなったので、しばらく続けていくと
「あれ」
「これ不思議なのです」
二人の身体が淡い光を放ち始めた。慌てて二人から離れると、その光は次第に弱くなっていき、そしてすぐに元に戻った。
「不思議~」
「でも、なんだかいい気分なのです」
「トクシンさんこれは」
「ええ、間違いないでしょう。ツレヒト様固有の魔法が発動したみたいです」
僕とトクシンさん以外なにが起こったのかまるでわかっていない様子だったが、それでもどうやら僕はコチカとクイネの二人との強いつながりを持てたらしい。
「二人とも、何か変わったところはある?」
「う~ん、よくわからないのです」
「だけど、お魚もっと採りた~い」
「わかるのです。なんだか今度はもっと採れそうな気がするのです」
「えっ?」
ヴァルフの時は超人的な身体能力と回復だったのに今回は単純な漁獲スキルの向上というなんとも地味な強化になった。もしかしなくても人によって強化される能力は異なっており、その種類によってあたり外れがあるということなのだろうか。まだデータが少ないため断定はできないが、もしそうならより多くの人と接していき能力を開花させることである意味なんでも屋のようなことができるのではないか・・・そう思ったが、そんなことができるコミュニケーション能力があるなら前世でも苦労はしていなかっただろう。
「ともかく、細かい分析は後にしましょう。それよりも体を温めないと風邪を引きますよ」
「そうでしたね」
「チセ、薪木をお願い致します。私は火打石を」
「はい師匠」
二人はテキパキと行動している最中僕も一度屋敷に入り持ってきた荷物の中からタオルを取り出し、それで二人を拭いてあげた
「さっきと違って何も起きないね」
「ピカピカしないのです」
「そうだね、二人とも寒くない?」
「大丈夫なのです」
「大丈夫~」
「そっかよかった」
一応これで体に染み込んだ水以外は取り除けたところで、チセが戻ってきた。
「皆さま、火の用意ができましたのでこちらへどうぞ」
「わかりました。それじゃあ二人とも行っておいで」
「はいなのです」
「いってきま~」
チセに連れられ体をぶるぶる震わせながら焚火に向かう二人の姿を僕は静かに見守りながら、残された籠の中の魚をどうしようかと悩むことになった。




