折り紙に願いをそして急な提案を
「皆さま、夕食の支度ができました、って何をされているのですか」
「ああ、チセさんありがとうございます」
ちょうど皆が一羽おり終えたタイミングで、チセさんがやってきた。
「ああ、ちょうど僕の故郷に伝わるおまじないやろうとしていて」
「おまじない? 呪術や魔法の類でしょうか?」
「そんな物騒なものじゃなくて、ただの気持ち的な感じです」
「そうですか、ともかく夕食をお持ちしましたので、皆様でどうぞ」
そう言ってチセは自らの背後から、食事の乗った四脚の台座を持ってきた。今宵の夕食のメニューは、見たところ五穀米に近いご飯と、山菜の天ぷら、それにお吸い物と言った、質素ながらも栄養価の高いものだった。だがそれを見てザ病院飯だなと思ったが、口にしないことにした。
「食べ終えましたら、台座ごと扉の向こうに置いておいていただければ、あとで回収に参ります」
「わかりました。ありがとうございます」
「では、ごゆっくり」
チセが去り再び僕らだけになったが、食事の間は特にこれといった会話はなく、ただ黙々とものを口に運んだ。正直子供は山菜のような癖の強いものは嫌いだと思っていたが、二人は一切好き嫌いすることないだけでなく、年の割に行儀も良かった。
「どう、おいしい?」
「うん、いつもの食事より豪華なの」
「ご飯一杯~」
どうやら二人の満足度はかなり高いようで、もし食べられないものがあったらなんて考えていたことが、ばかばかしく思える
「ねぇ、ご主人様」
「なんだい」
「この鳥さんをお姉ちゃんのところに置くの?」
「そうだよ」
「喜ぶ~?」
「うん、きっと」
「そっか~」
まあ二人から知れば全く知らない文化なので、疑問に思うことは当然だが、実際どんな効果があるのかと聞かれたとき答えようがないのが、正直辛い
「コチカ、もっと作りた~い」
「ほかにも、あるのです?」
「あるけど、いいのかな?」
本来であれば別の使い方をするであろうこの紙を何枚も何枚も好き勝手に使っていいのか、正直疑問が残っていた。
「構いませんよ。私も興味ありますし」
「そうですか、ってうわっ」
なんて話をしていたらいつの間にかトクシンさんが僕の背後に立っていた。
「いや、申し訳ない。びっくりさせるつもりはなかったのですが」
「いいえ、こちらこそ大きな声を出してしまい失礼しました」
どうやらトクシンさんの突然の登場に驚いているのは僕だけのようで、コチカとクイネはきょとんとしていた。
「あちらのお二人は気が付いておられたようですね。やはり噂通り獣人の感覚は人より鋭いみたいですね」
「匂いがしたのです」
「音がした~」
「そっか・・・」
ならば教えてほしかったなんて贅沢は言えないが、それはそれとしてトクシンさんの影の薄さもそれはそれで異常だと思う。
「いや、先ほどチセからお話を聞きまして、どんなものかと見に来た次第でございます」
「そんな大したものではありませんよ」
そう言って僕が自身が折った鶴を差し出すと、トクシンさんは胸元から眼鏡を取り出し、まじまじと観察しだした。
「これはなかなか見事ですな。それをあの紙で」
「ええ、まあ」
子供のころボッチの時間をつぶすために覚えて折り紙だが、どうやらトクシンさんにも気に入られたようだ。
「失礼盗み聞きするつもりはなかったのですが、この鶴以外にもさまざまな種類があるとか」
「ええ、ならばぜひそれをチセにも教えてあげていただけませんか」
「えっ、チセさんに」
「ええ、その方がこんな老人といるよりもあの子にとっては楽しいでしょうから」
「僕は構いませんが、いいのですか」
「ええ、お連れ様の看病は私一人でもできます故」
「そうですか、わかりました」
「では、あの子には私からお伝えしておきますね」
「あ、そうだそれと」
僕は三人で折った鶴をトクシンさんに渡した
「これをヴァルフの側に置いていただいてもいいですか」
「ええ、心得ました」
トクシンさんは鶴を大事そうに抱えて部屋を後にした。




