何もできないならせめて祈りを
二人もまた山登りの疲れと緊張による精神的疲労が一気に来たのか、床に寝っ転がりぐったりとしていた。
「二人とも大丈夫?」
「うん」
「だいじょぶ」
「そっか」
とりあえずは大丈夫という言葉が聞けただけでも一安心という物で、僕もまた二人に習って床に寝っ転がった。とはいえ眠るにはまだ早すぎるため、すぐさまこのままではいけないと体を起こした
「今のうちに荷物をまとめておこうか」
「はいなのです」
「あい」
以外にも二人は指示に従ってくれてはいるが、まだわずかに壁があるような気がしてならない。ヴァルフには悪いが彼女が眠っている間に少しでもこの子たちと仲良くなっておくことは今後のためにも必要なことだと思う。
「おくつろぎのところ失礼いたします」
奥のふすまが開き、おかっぱ頭の女の子が姿を現した。
「遠路はるばるようこそお越しくださいました。私はトクシン先生の弟子のチセと申します。皆様のお世話を担当させていただきます」
「これは、ご丁寧にどうも、ツレヒトです」
まるで旅館を思わせるような土下座での丁寧なあいさつに相手は年下と分かっていながらも、思わず相手の所作を真似て挨拶を返した。しかし子供たちは目の前で起こっていることの意味を理解できていないため、きょとんとしていた。
「それではまずお荷物を・・・どうやらすでにまとめてくださっているみたいですね。それではお布団の位置からご説明いたします」
チセに案内され、壁の押し入れを開けると確かにそこには布団が数組入っていた。おそらく何個かあるそれのほぼすべてに布団が入っているようだが、ヴァルフは病室で寝泊まりするため、三組しか布団はいらないため、ほとんど開けずじまいになった。
「それではいったんご説明は以上になりますので、またお食事の際にお呼びに上がります」
「あ、待ってください」
「何でしょうか」
「ヴァルフと・・・患者と面会はできますか?」
彼女のけががどこまで深刻なのか素人にはわからないが、模試可能なら改めて面と向かって命がけで戦ってくれたことのお礼を言いたいと僕は思っていたし、子供たちも彼女の顔を見れば少しは安心できるはずだ。
「処置は施しましたが、今もまだ意識は戻っておりません。それゆえに今すぐに面会はできませんが。彼女の体調が安定し次第、面会できるよう、取り計らいます」
「何から何までありがとうございます」
「いえ、これもお役目ですので。では失礼します」
僕らの前に来たチセという女の子は年の割に言動も行動も無駄なくどこか大人びているという印象を持った。その分あの時何もできなかった僕が余計に情けなく思えてしまう。
「お姉ちゃんとは会えないの」
コチカが僕の裾を引っ張りながら訪ねてきた。
「今はまだ寝ている見たいだから、起きたら会えるかもって」
「そう・・・なのです」
「うん、ヴァルフならきっと大丈夫だから。信じて待っていようか」
言葉ではそういったものの、流石にた黙っているだけでは手持無沙汰だし、逆に何かすることがあれば少しでも二人の気がまぎれるだろうと部屋の中を探してみると、机の上におそらく筆談用の者だと思われる紙があった。僕はそれを手に取って観察してみると、それは綺麗な正四角形の形をしており、さらには手触りもそこまで悪くなかった。
「そうだ、もしよかったら僕の故郷に伝わるおまじないを試してみようか」
「おまじない?」
「そうこの紙を使って鶴っていう鳥を折るんだ」
見たところ流石に千枚はないし、あるだけ全部使い切るのはもったいない気がするので、一人一羽ずつに留めての千羽鶴もどきを作ることにした。




