求めるものは山頂に
「ご主人様」
「二人とも落ち着いて聞いて、一応医者は見つかった」
「そうなのです!?」
「お姉ちゃん助かる?」
「・・・まだわからない。でも可能性は高いと思う。でもそのためにはあの山を登らないといけないんだ」
ヴァルフは僕が担ぐとして、この人間の村に二人を置いてはいけない。其れなので、二人にもこの険しい山を登ってもらわないといけない。だが正直この二人がどこまでできるのかわからないため、こうして言葉で聞いて確認するほかなかった。
「私たちも行くのです」
「行く~」
「えっ!?」
思いのほかあっさりと決断を下しことに僕は面食らってしまい、一瞬固まった。
「でもあの山だよ」
「「登る」」
「ああ、わかった。じゃあえっと、準備しようか」
登ると言ったとき、二人がヴァルフの手を握っていたことを僕は運よく見逃さなかった。きっと二人採ってはヴァルフそばを離れることが最も辛いことなのだろう。ならばその覚悟を無下にする理由はない。面のため二人には万全の準備をさせ、三人でそれぞれ最終確認を済ませたのち、馬車を預け、僕らは山の入り口に向かった。
「それじゃあ、準備はいい?」
「はいなのです」
「あい」
「それじゃあ行こうか」
三人仲良くピクニックとはいかないが、それでも二人からは逐一目を離さないよう気を付けながら、でも背中のヴァルフをできるだけ揺らさないように慎重に進まないといけない。僕は細心の注意を払いながら、山道を一歩一歩進んでいった。これもまた神様のギフトのおかげなのか険しい山道でもなんなく進むことができていた。一方の子供たちは僕よりもはるかに速いペースで進んでいた。話によると二人もまたよく山遊びをしていたので、その時の経験が生きているのだろいう、実際二人は僕の少し先を行きながら、危険なポイントをいち早く教えてくれる。そのおかげ何とか道を踏みはずしたり、転んだりすることなく歩き続けることができた。
「ご主人様大丈夫?」
「少し休むのです?」
「僕は平気だよ。でも二人は大丈夫」
「うん」
「大丈夫」
「なら行こう、あんまり時間がかけられない」
「わかったのです」
「無理しないで」
「うん大丈夫、大丈夫だから」
正直今にも精魂尽き果てそうだ。だけどもどうして僕はそんなになってまでこの人を助けようとしているのか、理由は命を助けてもらったからそう単純なことではない気がする。それも十分大切な理由だが、もっとそれ以上になにかあるような気がする。だけど今はその答えを探して自問自答している時ではない。まずは一刻も早く、ヴァルフを医者に見せなくてはならない。それ以外のことは考えるな、そのためだけに生かしてもらった命を使え・・・
そこまで考えて僕はあることに気が付いた。
今の思考は昔からずっと刷り込まれてきたものと元は同じものだった。誰かのために生きる、そして命を使う。それはこれまでと何も変わらないはず、なのになぜまったくもって嫌な気分にならない。むしろ責任感すら感じている。
「ご主人様見てなのです」
「前~家~」
「家、まさか」
僕がふと顔を上げるとそこには確かに、古風な小屋が一件ぽつんと立っていた。僕は何とかその前まで体を運ぶとそこでとうとう力尽きてしまい、地面に四肢を着いた。
「おやおや、こんなところに珍しい」
小屋の方から、年季の入った落ち着きのある男性の声が聞こえた。僕はその声に向かって最後の力で返事を返した。
「僕の背中の人を、どうか診ていただけませんか、お代は後で」
「わかりました。ではその前に中へお運びしないとチセ手伝ってください」
「はい、師匠」
声の主は僕の方にそっと手を触れると、ヴァルフを小屋の中へと運んだ。




