医師を求めて
見たところ2メートルはあるであろう巨体が今は、ヴァルフの一撃によって今は地面に倒れこみ意識を失っていた。相手が完全に動かなくなったことを確認したヴァルフは、すぐさま僕のもとに駆け寄ると、拘束を解いてくれた。
「す、すごいよヴァルフ!!」
「ええ、あ、ありがとうございます」
見たところ本人も驚いているようで、先ほどから自身のこぶしを握ったり開いたりしている。
「ですが、その・・・どうやら長くは・・・もたないようです」
先ほどまで、あんな立派に戦っていたヴァルフだったが、まるで電池が切れたかのように、全身の力が抜け、そのまま僕に向かって倒れ掛かってきた。僕はかろうじて受け止めることができたが、全身の出血のせいでひどく滑りやすくなっている。
「大丈夫!!?」
「申し訳ございません、もう意識が」
その一言を最後にヴァルフは瞳を閉じた。もしやと思い、脈をとってみると幸い彼女はまだ生きてはいた。しかしこれほどの重傷を負っているため、このまま放置すればそう遠くないうちに本当に死んでしまうかもしれない。一応馬車には包帯や薬などは積んではいるが、どれだけ無事に残っているかわからない。それにおそらくここにとらわれているであろう、子供たちも探さないといけない。
やることは山積みであることはわかっているので、行動をためらうことはできなかった。なので僕は何とかヴァルフを背負って洞窟の中を歩き始めた。
幸い子供たちも、馬車もすぐさま見つけることができなんとか旅は再開できそうだった。しかしヴァルフの傷はとても素人の僕がどうにかできるレベルではなかった。それでもできる売る限りのことをしたのち、不安そうな子供たちと共に、きちんとした医者がいる街か村が近くにあることを願って僕らは先に進むことにした。
「お姉ちゃん大丈夫かな」
「大丈夫~?」
「・・・」
返す言葉を持ち合わせていないため、ただ人すらに首を縦に振るしかなかった。襲撃を受けた際に天井部分が全壊してしまったため、ヴァルフの傷に野風が直接当たるようになっているのもまたよくない。幸い今は意識を失っているので、痛みは感じないだろうが、これでもし意識があったら、耐えがたい激痛に再名前れていただろう。せめて彼女の安らかな夢を見ていてほしいと今は願うことにした
「ご主人様、おうち~」
「人がいるのです」
二人が指さす先には確かに数件の民家が建っているのが見えた。最初に立ち寄った町と違い高い壁に囲まれていないため、見る限りは小規模な村か集落だろう。それでも僕らにとっては人がいるというだけでありがたいのだ。
「二人はここでヴァルフの面倒を見てて、僕は医者がいないか訪ねてくる」
「わかった」
二人を甘に長い時間待たせると不安でパニックになってしまいそうなので、僕は急ぎ足で村に入ると目についた最初に人に声をかけた。
「あ、あの」
「おや、旅の人かい、珍しいね」
「あ、はは、そうなんですね」
こんな時にも前世からのコミュニケーション能力のなさがいかんなく発揮されていることに僕は焦りと自身への怒りを感じていた。しかしそれをぐっとこらえへ話を続けた。
「この村にお医者様はいませんか」
「医者ねぇ・・・いることはいるんだけど」
村人は悩ましそうな表情でなぜだか斜め上を見つめだした。僕もそこに視線をやると、目のまえには険しい山が見えた。
「まさか、お医者様はあそこに」
「ああ、あそこの上だ。もともとこの山はいい薬草が自生してるんだが、だからと言ってそこに住もうとは誰も思わなかったのさ。少なくともあの人以外は」
「なるほど」
山の中には当然馬車は入れない。そうなると彼女を背負ってあの山を登らなければならない。
「悪いことは言わねぇ、よっぽど急患じゃないなら、隣町にまで行きな、そこにも優秀な医者はいる」
「ここのお医者様は優秀な方なのですか」
「ああ、俺は医術のことはよくわからねぇがあの人が下ろす薬はいろんな病気に聞くし、時折金持ちが軍勢連れて山を登りに来るんだ。だから腕は確か見隊だぜ」
「そうですか、ありがとうございます。あとここで馬車の修理はできますか」
「ああ、できるぜ、この先を右に曲がったところに大きな納屋がある、詳しい話はそこの主人に聞きな」
「わかりましたありがとうございます」
僕は出会った男性にお礼と少量の金銭をあげたのち二人の元に戻った。




