道中の刺客
二人との奴隷契約も終了し、しっかりと刻まれた奴隷紋を確認し、よくわからない一安心を迎えた僕らは、ゆっくりと馬車を走らせていた。一応機能も街の中を爆走したのだが、あの時のやり方では馬がすぐに疲弊してしまい、移動効率が悪くなってしまうらしい。なので今はヴァルフから教わりながら、のどかな道をゆっくりと進んでいた。
話によるとヴァルフは元軍人で、相馬の技術の訓練の一環で教わったらしい。
「ご主人様は飲み込みが早いですね」
「そんなことはないよ、ヴァルフの教え方が上手いおかげだよ」
馬の扱いに苦戦する僕だがそれ以外を除けばいたって平和なものだった。僕ら以外誰もおらず、大都市の近くだというのに誰ともすれ違うこともない。それゆえに子供たちは荷台で昼寝しているし、僕とヴァルフは立場を無視しておしゃべりをしている。正直これくらい平和な道のりのままこの旅を続けられればと思うが、僕らが街で勝ったランチョンマットくらいのサイズの地図ですら、全体の旅の道のりの全体で見れば1%もカバーしていないというのだがら、そうやすやすと行かないのかもしれない。
「しかし、本当に平和だね」
「ええ、でもここまで人通りのないのは少々おかしい気もします」
「確かにそうだよね」
そうはいっても地図に記されている通りに進んでいるため、道を踏み外したというわけでもない。実際この世界の地図は驚くほど正確で、書いてあるのは道だけでなく、山が崖などの自然の地形なども含まれている。改めて地図と目の前の景色を見返してみるが。地図の通り僕らの左手側には大きな山がある。
「考えても分からないから、とりあえず進みましょう」
「かしこまりました」
馬に鞭を打ち、移動を続けようとしたその時だった。
「うわあぶなっ」
目の前に人が飛び出してきた。しかしあまりにも距離が近すぎるため、ブレーキが間に合わず。馬車はそのまま目の前の人影に向かって直進し続けたが、目のまえに人影は巨大な斧を背中から取り出すとそのひと振りで僕らが乗った馬車をそのまま吹き飛ばした。
僕らはそのまま宙を舞い、そして地面にたたきつけられた。体中に走る痛みをこらえながら、何とか体を起こし、あたりを見渡す。あれだけ派手に吹き飛んだ馬車だが、きれいさかさまになったことで損傷自体は荷台の屋根以外ほとんどない。しかし放り出された子供たちとヴァルフは落下の衝撃で意識を失ってしまい。1ミリの動かない。
「お前まだ、動けるのか」
僕らを吹き飛ばした人物がゆっくりと近づき、僕の村蔵をつかんで持ち上げた。しかしもはや抵抗する力が残っておらず。されるがままに持ち上げられた。
「お前は、誰だ」
今によってようやく僕らを襲った犯人が、牛の女性獣人であることを理解した。しかし僕よりもはるかに背も高く、筋骨隆々であった。
「人間に名乗る必要なんてないだろ」
そう言いながらより強く僕のことをつかんだ。そのせいで自身の肉がえぐられるような痛みを感じ、思わず苦痛の声を漏らす。
「というかてめぇ、奴隷商人か。私が一番嫌いな種類の人間だ」
目の前の獣人は強い恨みを込めて僕をにらむと、つかんでいない方のこぶしを強く握ると、そのまま僕を殴り飛ばした。
「てめぇは楽に死なせねぇよ、あとでじっくり嬲り殺してやる」
地面に殴り飛ばされた僕は再び全身の痛みにさいなまれながら、今度こそ意識を失ってしまった。




