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奴隷商人として異世界転生したので、今度こそ自分のために生きていきます  作者: 創作若造
山頂の医師編

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受け入れがたい運命

「まったく何事だね」


 重い扉が再び開き、その先に会長たちの姿が見えた。


「えらく長くかかるから様子を見に来ましたって、ええ」


 会長は目の前の光景に唖然としていたが、護衛の者はすぐさま自らの眼前にいるのが、町を騒がせている強盗であると理解し、武器を構えた。


「キース、キースはどうした、まさか」


 騒然としていたが、首から血を流し倒れているキースを見て皆が瞬時の状況を察した。


「貴様、やっぱりあの娘だったか、母親の方は・・・まさか死んでいるのか、なんてことだ。やはり貴様はヤブ医者だったか、ものどもあの白狼族の娘を捕らえろ、それ以外は皆殺しだ」


 会長の号令を受け一斉に兵士たちが襲い掛かってきた。そのまっすぐで混じり気のない殺意に平和な時代で生きてきた僕は体が完全に動かなくなっていた。


「ご主人様、逃げてください。ご主人様」


 チセの声が遠くから響き渡るが、それでも僕は座り込んだまま動けなくなっていた。


「ツレヒト様!!」


 敵の刃が眼前に迫り、僕は自らの運命を覚悟した。


 

 だがしかし、僕の身体に刃が振り下ろされることはなく、オレンジの火花と鋭い金属音だけが僕の五感に届いた。


「リース!!」


 僕を助けてくれたのは、母親のナイフと自らのナイフ、その二本を両手に携えた、リースだった


「ありがとう助かったよ」


「・・・」


 リースは何も言わなかった。ただ僕の前に物言わぬ大木の様に立っているだけだった。だがやがてその重い口を開いた。


「お前たち、許さない」


「なんだって、獣人風情が」


「お前たち全員、殺してやる」


 リースの咆哮と共に僕の中に彼女が抱える激しい感情が流れ込んでくる。怒り、喪失感、絶望、殺意、悲しみ、それらすべてが混ざり合い、重くのしかかってきた。


「奴隷商人」


「なに」


「力を貸せ」


 それは懇願ではなく、命令だった。そしてそれを伝えるためにリースが僕を見たとき、同時に僕は全く違う物を見ていた。彼女の身体に身に覚えのない奴隷紋が刻まれていた。


「これは一体」


「まさか強制契約術式、しかしありえない。あれは本来人間が奴隷に施す者であって、奴隷側から人間になど聞いたことがない」


 会長が驚嘆と状況説明を同時にしている間にもリースは地を抉るほどの脚力で飛び出し、辺り一帯の敵を蹂躙していた。


「そんな、どうして」


 今まで見た限り彼女にあそこまで身体能力はなかった。なんなら強化されたヴァルフを優に超えている。


「強化された・・・まさか」


 僕の中に流れ込んできたリースの感情、それが目の前でリースの母親の死を見て悲しんだことで、自然な形で同調し、今の彼女に力を与えている。これは仮説だがそれ以外考えられない。僕の力は本来、相手と同じ感情、願いを抱くことで生み出されるもの、相手を思い、相手に思われることで働くものだとトクシンさんは言っていた。それが今思わぬ形で成されてしまっていた。だが契約の方はどうやって


 などと考えている間に残すは会長一人になっていた。


「待ってくれ、望みを言えなんでも叶えるだから命だけは!」


「黙れ、私の望みはもう叶わない。お前たちにすべてを奪われてしまった。だから今度は私が奪う」


 リースは母親のナイフを天高く掲げた。


「ま、待て」


「地獄に落ちろ」


 掲げたそれをためらうことなくのど元に突き刺し、命を奪った。会長を合わせて15人、リースが今日一日で奪った命だ。それが彼女が奪われた一つの命とつり合いが取れているなど、誰にもわかるものではなかった。

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