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奴隷商人として異世界転生したので、今度こそ自分のために生きていきます  作者: 創作若造
山頂の医師編

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重圧な扉の先の病床

 昨日も同じ景色を見ながら歩いたものだが、今日は会長が隣に居るということもあり、すれ違う人は皆僕らを驚嘆のまなざしで見つめた。


「いや~しかし久しぶりに降りてきましたな~ここ最近は忙しくてまともに遊ぶ暇もなくて、そう考えると悠々自適に旅ができるツレヒト様がうらやましいですな」


「いえ、不慣れな旅は危険も多いですから一概に楽とは言えませんよ」


「それもそうですな」


 先ほどまでとは違い会長はえらくご機嫌な様子で、町を闊歩していた。それもそうだろう、すれ違う人が皆彼に向かって頭を下げるか好意的なあいさつをするのだから、彼の自尊心は常に満たされ続けているのだ。


「しかし、ツレヒト様もその年でもう女遊びとは、いやいやなかなかの豪傑ぶりですな。もしかしてお連れの奴隷では満たされぬとか~」


「いえ、そんなことはありませんが、やはりどうしてもそれ専用の奴隷と言われると、心惹かれてしまうというか」


「ははは、それはなかなか。それならばぜひとも一度体験していってください。調教された獣人奴隷はそれはそれはうまいものですからな、奴ら獣は知性は人間ほどはありませんが、舐めることに関しては大変上手ですからな~」


「あはは」


 流石にこんな話をされて器用に愛想笑いができるほど僕は大人ではなかったようで、歯切れの悪い苦笑いを浮かべるほかなかった。だが幸いにも目の前に昨日訪れた店が見えたことで、僕はなんとかこの会話を終わらせるきっかけを見つけた。


「会長、あちらの店です」


「うむ、わかっている。ではツレヒト様なにとぞお願いしますね」


「はい」


 そう言うと会長はあっという間に話をつけ、僕らをバックルームに案内させた。そこにはきっちりとしたスーツを着た人間の黒服さんやシェフたちと、かなりきわどい衣装を身に着けた獣人の女性たちが皆絶望した面持ちで床を見つめながら一列に並んでいた。きっと彼女たちもやりたくてこんなことをしているのではないのだろう。だが健康状態がよさそうな点を見ていると、販売されている奴隷たちよりかはよい待遇を受けているのだとわかる。とはいえ、生きるために仕方なく体を差し出しているという点に目をつぶればという話だ。


 やがて僕らは店の最奥に案内された。そこには金庫かと思うほどの分厚い扉があり、僕らを案内したスタッフと会長の護衛が力を合わせてハンドルを回すことでようやく扉が開いた。


「さあ、ご主人様ここからが肝心です。気を引き締めてまいりましょう」


「うん」


 僕とチセは持ってきたマスクをつけると、部屋に足を踏み入れた。


「素人がいては治療の邪魔でしょうから私は外で待っております。何かあった際にはこちらのキースにお申し付けください」


会長から指名されてキースという男性が前へ躍り出た。彼もまたここのスタッフと同じくらい綺麗な黒スーツを身にまとい、その腰にはレイピアと思われる細い剣が下げられていた。そしてキースはその刺すような視線を僕らに向けると、静かに口を開いた。


「キースと申します。どうぞよろしくお願いします」


「はい、よろしくお願いします。それとキースさん、万が一にも感染してしまってはいけないので、あなたもこれをつけてください」


「かしこまりました」


 思いのほか反抗することなくキースはチセの用意したマスクを着用し、僕らと共に部屋の中へと入っていった。


「それでは扉を閉めます」


 またしても数人がかりでハンドルを回し、そして重厚な扉を力いっぱい押すことで、ようやく最後まで閉め切ることができた。僕らもまた扉が閉まったことを確認すると、目線の先で浅い呼吸と共に布団に横たわる一人の女性がいた。


「あれが、白ろ」


 そして言葉をしゃべり切る前にキースはリースによって殺された。

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